第2階 私の魔法
赤子になった私は
人質にされそうになっていた
でも私のお姉ちゃんである
アカナは身を挺して
守ろうとしてくれた
痛々しさと不自由さの残る
右目に眼帯をつけて
更に杖を左手に持っていた
それでも私に笑いかけていた
きっと辛さを胸に閉じ込めて
ラブラビアは確実に真祖と
推測した
人間じみた容姿に
あの攻撃の速度と力
それに真相クラスと決定付ける
吸血鬼のエリートとも
言うべき存在が行使する
凶悪な呪術という
置き土産を置いていかれました
私は笑顔の不得意な
赤子になってしまうかもしれない
むううううう
アカナの右目と左足は
ハツミリフィの祭壇に祀られていた
ハツミリフィは不死鳥の神
いわゆる四神の朱雀だ
朱雀の力を持ってしても
強力な呪いは解けなかった
それもそのはず
ラブラビア本人の魔力を激減させるか
この世界"ミリカンテア"を超えた力の
介入がないと再生出来ない
解呪の行使自体は簡単だけど
呪いの媒体となった幾つかの
世界が壊れる事になる
ラブラビアは面倒な事に
666の世界を媒体に
呪いをかけている事が
私が秘密裏に解呪しようとした時に
世界が666個震えた事で分かった
もちろん解呪と共に
ラブラビアに強烈な
副作用が跳ね返って
来るのは明白なのだけど
生命と再生の強力な一柱
朱雀で手が出せない次元とすれば
666個の世界は反動で
半壊程度は免れない
弱い世界なら木っ端微塵
私はハナっからラブラビアの
利き腕に相当する左半身を
永久追放する算段だ
むしろアカナを傷付けられて
怒髪天極まりない気持ちで
溢れているからこの方法を
私自身に推奨したい
半身が失われば
魔法や呪術を行使する
能力が著しく低下する
真祖故にどれだけ痛めつけても
ほぼ死ぬ事は無い
まず私と同一次元と言う事は
ありえないから
初期魔法が使える程度に
落ち込むと思う
これで私が自由に動いていい
年齢になった時の方針が決まった
まずラブラビアを弱体化させる事
次にメイユールをラブラビアの
目の前で抹殺する事
今後の方針が決まった所で
私はスヤスヤと寝てしまった
あの日から
幾度と無く季節が通り過ぎ
もう私は3歳へと成長していた
割と自由に動ける事に
感慨の涙を浮かべていた
この所、アカナが私と共に
いない日が増えていった
アカナは女王として
対応に追われていたんだと思う
あの4人の
私は兼ねてより創っていた
4人の人間達
即ち使い魔と言うべきか悩む
私のクローンとも呼べる
4人をこの世界に生み出す
決意を決めた
私が生まれて初めて創った世界
マスカリアに加え
去年創造したマテハとマユナ
そして今年の春に創造したイムを
四姉妹として
この世界に転生させようと
人間は世界を創造し
宇宙のゆりかごの中で
海70%と大地30%の星を
燃える星で温めている
その星の中で人が生まれる
そこに時の流れを与え
私の血を世界に垂らすと
私のクローンが出来る
火の当て方と宇宙の星の
配置によって人の数と
性別を選定出来る
特に星の数が重要で
多ければ人数が多くなる
よって今回は
宇宙には温める為の星と
1つの星しかない
ある程度人としての主体が
完成している為
次元移動の魔法を
指をずらして発動させ
私は私の世界から4つの世界が
移動する感覚を味わったはず
特に何もこそばゆいとか
なかったけど
実にあっさりしていた
母に借りた人間世界のお話では
この手の力は選ばれし美少女が
世界中の祈りを集めて命を
賭して発動させる
いわゆる高度な封印魔法であるか
世界を混沌で満たした魔導の王
即ち魔王が人類の3分の1程度の
犠牲を払ってようやく完成させる
禁忌とされ勇者が見つける頃には
禁呪法として固く固く封印されている
はず...とかの筈なんだけど
私が使用する場合は
マッチの火がつく感覚に似ている
"集然"と名付け
父も知らないと言っていた
手で世界をなぞると発動出来る
ぷるっと震えるだけでもいい
物語の様な詠唱を一切必要しないし
指で無くてもいい
要するに私が思考できて
頰でも残っていれば
世界に触れる事が出来て発動可能で
更に私の思考に大きく影響しているみたいで
私は自ら使用する集然の
解明もしてみたいと思っている
私はアオナになる前から
非力極まりない
父の持つ剣が重過ぎて
両手でさえも持てずに
父の片手の上に落としてしまう程に
でも私は父とまともに剣を
打ち合えるのは集然のおかげ
私は父に勝つ為に私だけの秘呪文かつ
秘剣である白い"ゲイスダリゲード"を
この語呂も私だけしか知らない為に
意味は世界辞典にさえも載っていない
でも強さは一級品で...
父はオリハルコンという
硬くて有名な魔法の金属の剣を
数本所持するが
父自身の本気の剣技に耐え切れず
1つの武器で2撃しか放てない
他の武具に至っては1撃で砕ける
そのオリハルコン製の武具を
ケーキを切る様に斬り裂き
父に一撃を与えて勝利した
父はショックで若干
うな垂れていたが
よく頑張ったなと
にこやかに頭を撫でてくれたのを
今でも鮮明に覚えている
私の白い秘剣ゲイスダリゲードは
おそらく最硬かつ軽い金属で
出来ていると推測はしているものの
全く確証は得られていない
もしくは私自身が潜在意識で
ゲイスダリゲードを保つ為に
集然が自動的に私自身を
強化しているとも考えられる
そもそもゲイスダリゲードを
持つという願い自体が
その状態を引き起こしている
可能性は十分にあり得るはずで
現に母は重い物を運ぶのが得意だけど
それは重力軽減の魔法を唱えて
運んでいるからである
母はちゃんと一字一句詠唱をしている
そして私は僅かながら神性を持つけど
どの神様からも外れた
全く異質なものだった
でも神様学校に通えた事で
女の子の友達であるハツミリフィ
男の子の友達であるハツミリム
が二人仲良く朱雀と玄武として
新しい世界の神として元気に
やっているというのは私としては
嬉しかった
でも実際は自分達の世界が他の
強い力を持った存在に
蹂躙されようとしている現実
アカナが帰って来るまで
まだまだ時間がある
私は父と念話する事にする
母を通して
「いきなりびっくりしたよ!?」
母はまごう事なき白金の美少女で
一際輝くプラチナブロンドに
純白の澄み切った柔肌
私は母の肌を触った事があるけど
ツルツルで瑞々しくすべすべだった
CMで宣伝している内容の
全てを兼ね備えていると私は思った
そんな母は
プラチナムフェアリーや
ダイヤモンドハイエルフ等
様々な別名を頂き
人かどうかも疑われている程の
美しさだった
でも綺麗に半分神様で
魔王の一柱だった
「ねぇお母さん、お父さんは?」
私は早くメイユールの名前を
父に報告したかった
「はい!今代わりますね」
念話越しでも分かる母の
微笑みは私の3年を
ぬくもりで包み込んでくれた
様な気がした