第282階 一度目の命の雫の目覚めの日 食事
命の雫は今日も遥か彼方から熱を温かな熱を届けてくれる。
私達、太陽人も第七世界の青き星の民も根底は一緒なのかもと
人類の進化に思いを繋いだ思いの意味を考えて遠くの事を考えてみる。
私はとある人物と待ち合わせをしていた。
今日も最上階に用がある、要するに食事をするってこと?
何やら騒がしい、それも女性達の声で。
「待った?」
私はそのとある人物だと思い振り向くと?
確かにそこには洗礼された美が集約されている?
美しさと純粋さを兼ね備えた女の子は?
「え、待って。
誰でしょう?」
そこには街行く人々の視線と羨望を集める
クラと同じ柔らかな火を彷彿とさせる瞳と髪色の男性が微笑んでいる
背丈も、声色も同じ。
「何やってんのさ」
恐ろしいほどに端正な美形の男性?は傅いて
その動作一つ一つに黄色い声が飛び交う。
私に向けてくる眼差しは悲しみそのものだった、ちょっと待って。
「お迎えに上がりました、ラナン姫」
混乱のしそうな頭を更に殴り付ける様に”姫”呼び。
「クラね?」
私は目玉が飛び出そうなぐらいに驚いていた。
でも、名前を知っているって事はクラなのね!!
「姫の仰る通りです、では参りましょうか」
沢山の悲しみを置き去りにしつつ、
私達は【シャンテ】に向かった。
とりあえず、食べながら詳しい事を聞きたいわね。
*
地上から最上階までは一瞬、それでも2回目ともなれば目も心も慣れてくる。
私の隣で微笑むクラの瞳は、今日も出会ったあの日のままに美しい。
私に先に降りるように手を前方に差し出す所作は美しく、
私は物語の御姫様気分に酔わされそうになっていたわ。
装飾も変わらず、天井の金龍は見守る、厳しく守護する面持ちでフロア全体を見渡していた。
壁に装飾された赤い布時に描かれた、金色の海の中を歩く様にクラに手を取って引かれていた。
私は大切なクラに大切に扱ってもらえている、この気持ちが何よりもうれしく感じていたわ。
「クラよね?」
クラの口から聞きたかった。
単純な事で、何をしているのかなって。
私も混ぜてよって、ちゃんと演じてみせるから。
だって面白そうじゃない。
「……ラナンは可愛いからそのままでいて」
今日の装いはマス、マテ、マユ、イム、キキョウに選んでもらったから自信あるわね。
特にマス、マテ、マユ、イムは素材を自分たちで狩って、
戦闘兼用の衣服関連を自分達で作って販売しているって聞いているわ。
オーニソ先輩とのお話のあとクラに連絡したら秒で快い返事が来て、今はこの状況。
ちなみに二度目の命の雫の目覚めの日にはカランとのお出かけが決まっている。
カランとは魔法の訓練の続きをしたいわね。
「うん」
なんでかしら。オーニソ先輩もクラも
とてもとてもとっても美人なのに可愛いって言われる!
マス、マテ、マユ、イム、キキョウ達もそんな感じだったわね。
以前食事を行った席と同じ場所に案内されて、
クラに丁寧にエスコートされたわ。
めっちゃお姫様扱いしてくるわね。
「実際のところ、ラナンは私をどう思った?」
クラがシャンテの料理人との会話を終えて店の奥に戻り、
私とクラの二人になった直後の質問だった。
クラは超容姿端麗だから超眉目秀麗だわ。
「クラはとっても容姿端麗じゃない?
だからとっても眉目秀麗だわ」
自身の前髪を恥ずかしそうに指でかき分ける仕草が
私の言葉への答えって事かしら。
クラから漂う上品で高ぶりを鎮める水色系統の匂いが私の鼻先を優しく撫でていく。
「自信はありました。でも褒められると恥ずかしい。
実は理想の男性を自分で演じて投影してはしゃいでいました……よく」
何よ、その趣味? はい? 一人遊びをこう私に暴露してくれているってこと?
四大貴族一角の御当主様のちょっと恥ずかしい御趣味を?
さぁて言いたいことは一つだけですし、息を思いっきり吸い込みます!!
「可愛い!!」
クラは不意を突かれたように時を止めていた。
私はクラの次の言葉を待った。
とても響いているのか、緊張しているのが分かる。
「ラナン……反則でしょそういうの、痛いかもって思って。
そう……でも、立場上は変装しないといけないし……」
恥ずかしい気持ちで開いてくれたんだわ。
大人と現在で揺れ動くクラの心を私は知ってしまった。
それはとても嬉しい大切な人からの突然な贈り物で。
「打ち明けてくれたのが嬉しい! もっと知りたい!
変装上手すぎるぅうううう!!!」
絶賛した。
とりあえず、全力で。
だってその通りだし。
「ラナン、いっぱい食べよ!! 元々そのつもりだったけど……
持ってきておいて良かったと思う」
命の書いた手紙を5枚ほど扇子のように開いて
ひらひらとさせて、仕舞うクラ。
と同時に料理が運ばれてくる。
「美味しそうね、お腹がしぼみ過ぎて
そろそろ動けないよって思っていたから」
私の目は運ばれてきた料理に自然と落ちていった。
鼻には 今すぐ食べてと、私視点で叫ぶ声のような匂いが漂ってくる。
「魔法が料理文化に浸透してから更に美味しいは加速した、と
歴史書に記述されていたから。なーんて難しい話は後にして食べよっか!?」
私は無言で手をあげる。
「クラの話、なんでも好きだけど食べたいです」
クラは命の雫のような輝きで微笑んで手を合わせる。
私も釣られて手を合わせる。
「「いただきます!!」」
クラもお腹はぺこぺこだったみたいで
素早く自身の取り皿に積まれていく。
味付けに応じて、お皿の中で分けられている、私にちょっとできないわ。
「ひゃあーーー!! だめかも! 美味しすぎるぅうううう」
ちゃんと噛みしめた。
喉奥を通り過ぎていった、たまらないと思いながら。
声が出てしまった。
「分かるよ!ラナン!!とっても美味しい!」
お母さんの料理、マテハのケーキ。
また違った美味しさが踊る。
こっちも美味しくて! という気持ちが強いわね。
「クラが同意してくれたのって理由あり? それとも理由なし?」
何を聞きたいかって言うと、やっぱあれだよ、あれ。
打算的なものなのか、純粋なものなのかを私としては知りたいわけ。
私はクラと仲良くなりたくて。
「なにもないよ? 強いて言うなら特別護衛のラナンと
親交を深めて連携を深めようっていう思いはあるけれど。
友情が何かはちょっと分からないけれど、こういうものなのかなって手探りはある」
ふーん、それってまるっとぜんぶってことね。いいわ、素敵だわ。
友情を意識させられてるってのも私的に強いわ。
公私共に関係が進んでいるってことだから。
「友達としてよろしくする?」
クラは驚いていた。
クラは普段は想像以上に冷静。
それは非常に高い知性からくるものだと考察できる。
「初めてのお友達って言ったら、笑う?」
少しだけ上目遣いで恥ずかしさが見え隠れする。
何かこう、いい意味で抉られてしまった。
フユさんとの関係が気になってしまうわね。
「可愛いいいいい過ぎるわね!!! フユさんは?」
表現に悩んでいるのか、
えーっと、えーっとと小声が漏れている。
かなり悩んでるみたいで。
「フユは猫みたいな感じ、可愛いいし大切」
不思議としっくりくるのはなんででしょう。
性格はかなりお利口な犬みたいだけど。とは思ったわ。
結構自由気ままに生きてるのね、フユさん。
「へぇー、猫なのね! 細くて小柄で見た感じ似てるわ!」
よく考えてみれば容姿的なものは猫に近いわね。
身軽な感じはするわ。
特にクラの前だと軽快なステップでも刻んでそうだわ。
「結構恥ずかしがりやで、おいでってしても中々来てくれない時があって。
お嬢様が可愛いすぎるから『つ・み』ですなんて言うの」
扱われ方も扱いも猫だわ。
そうだったわ。フユさんはクラを神聖視されているから
直視できないタイプなんだわ、根本的には。
「クラ! よろしくね」
私は手を差し出した。
もちろん友情を形で示してあげたいから。
恥ずしながら勇気を持ってくれたことに私は報いたいから。
私とクラは同じぐらいに友情と立場でお互いの関係を推し量っている。そう思ったわ。
深く考えて、私的には【央界】と【西の大帝国】の
将来を見据えての大きな第一歩となるわけで。
その為に転生した。
彼等彼女達と戦って、剣を交えてそう思った。
この世には潰していいものと潰してはいけない営みがある。
それを私は自由に選択できる立場にある、いえ与えられたわ。
私の魔法はそういうもの、だから。
なんでもほつれさせてほどいてといていく、最終解へと進んでいく。
私が大好きで相手も大好きでいてくれる子を次の皇帝に押し上げたい。
ってちょっと思考していたら、差し出していた手にほのかな体温が灯り細い指が重なってくる。
クラの頬はほんのり赤かった。
「緊張してる?」
手は震えていない。
目が少し上目遣い、恥ずかしいのかしら。
呼吸で吐き出された息の終着点が指に触れる。
「うん...」
「仲良しの握手もしたし、続き食べよっか!」
緊張しているクラは無機物が作り出せない美しい輝きと共にそこに在った。
どう足掻いても輝いて上に昇る、そう思わせる気品と佇まいと。
底知れぬ深い強さを感じたわ。
「うん.......ねぇ、ラナンはもしかしたらどこかの女神様が転生してきて、
父と母を失った私に手を差し伸べて救いに来た、とかかな」
私はとりあえず、口の中に放り込んだ甘くてとろける柔らかい何かの生肉を噛んで味わう。
女神ね、これは遠い記憶ね。
ーーあんたが目指した女神に私は近付いているのかしら。
集然は舞い降りる様にアオナに言の葉の音を響かせる。
足りない何かを釣り上げるように。
ーー『誰もが女神を信じ続けられる訳じゃない』
魔皇は旅の中で確かにそう言った。
「クラを見ていたら誰だって手を差し伸べたくなるわ、
それは当然私も同じ。それに望むなら女神にだって成るわ」
クラは喜びの色と驚きの色を混ぜ合わせた様な顔をしていた。
私の言葉に強い興味関心を抱いたというところかしら。
「私の女神に......成ってよ。そう、命令する」
クラの動きは私の首に届く気がした。
誰も人が届かせられなかった、皇帝と七賢人達でさえ。
私は震えた、この西の大勇者の卵を割ってはいけないと。
私の両の手はクラの両手に握られていた。
斬り込まれた、イメージが圧が私に叩きつけられていた。
風も時も空間も彼女に味方し称える姿が目に焼き付く、
それは持って生まれた運命やら宿命やら人の知性で表現できない命の在り方。
成長を止めるべきか否か。
私は【央界】の主として。
そんな自問自答は転生前に終わらせたじゃない。
アオナ、いえハツミリア。
魔皇の夢は神々の夢を超越しつつある。
人々の願いと共に歩む、人々の夢へと。
クラの手は細くて長い。
そして綺麗で白くてほんのり温かい。
太陽人のクラレットとして生きている脈動が伝わってきた。
それは未来の大勇者の命の煌めき。
「もちろんです。皇帝陛下」
「......皇帝陛下って呼ばれるの恐れ多いって感じるけれど、なんでだろう。
ラナンが呼ぶと成れるかもってそう思えてくる、なんていえば良いのか......元気が出てくるみたいな」
元気が出る。
へ!? 私の言葉で? 私は信じきってる。
クラが皇帝に成れると、その心が伝わっているってことかしらね。
「私は呼ぶよ。そして信じる」
んんっーーー!!
私は自分の口の中に一口分運んだ。
美味しいわね、並べられた料理達
口の中で演奏会が始まりそうだわ。
「ラナンからの信じる」
クラは表情で奏でるように
命の雫が少しずつ昇るように
笑顔で表情が変化していった。
「ねぇラナン、ラナンの言葉は本当に美味ね、とてもとても美味しいわ」
クラは料理を口に運ぶのをやめていた。
まるで私の言葉を味合うように。
耳から色して全身を小さく震わせて呑み込んでいく、そんな風に私には感じられた。
「そ? なら心への専属料理人も熟せそうかしら」
脳が悦ぶ。
それは心に響いて掴めたということなのかもしれない。
私の腕は良いのかしら。
「熟してもらおうかしら、ラナンに振る舞う言の葉の一皿がこれからも。楽しみだわ」
これからも?
へぇ、楽しんでいただけておられましたか。
麗しの皇帝陛下。
私の目の前からは食事が消えて、更に運ばれてきていた。
魔法が運ぶ。
時の魔法が人から人へ、思いを運ぶ。
「仰せのままに、麗しの皇帝陛下」
様になっていたかまでは分からない。
それでもクラは。
瞳を輝かせて表情を更に綻ばせていたわ。
「なんだか、わたし。本当にこの西の大帝国と謳われる、
この地を統べる皇帝に成れているみたいに思えてきちゃった。
ラナンって不思議ね。どんな皇帝様に成るのか、考えておかないとね」
佇まい、気品、所作。
私は私が口に言葉に音にしておきながら、驚くほどに様に成っていると思えてしまっていたわ。
生まれながらの皇帝、人の上に立つ者。
それはクラの様な人物なのね、と。




