表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
王路院編
249/262

第248階 先輩からの誘い

「最初だけだったわ。かなり警戒しちゃってた」


 移動速度に関して雷では遅いし、光だともう少し足らない場合があるわね。

まぁ、優位を確実に取るって事に関してだけど。

星魔法で時の行使だけは、考えた方が良いかも。


 刃が煌めき、5歩後の空間に死が真っ直ぐ迸る。

次は4歩後、そして3歩後。

ここで私は組み合わせを変え、6歩後に置いていく。


 相手の、移動における途切れる物理法則から、

時を使っているというよりも、時で補助している月人がいるわ。

月人の特殊能力は、一人につき四つ。


 雷で速度を高めて、

異空間から剣を取り出し、その剣に炎を纏わせ、

超低空で滑ってくる。


四つを私を斬ることに費やした月人が、

本来の移動ルートに分断が加えられて、

私の目の前で斬り上げてくる。


そのまま右腕を光に変化させて、【十白亜 すべて】の切っ先で、

目の前に現れた月人の首を一文字に切断する。


 「はい!終了ーーー」


 オーニソ先輩の声と共に、

月人達が光の粒子になって、即座に消滅していく。

本当に電子遊戯ゲームの様だわ。これは魔皇の記憶だけど。


「どうでした?」


 私は、少し自信ありという表情をしていた。

初めてにしては上出来かな。

そんな手応えを、熱く心で感じていた。


「ほんとにお疲れ様!まずは『黎宙』メンバが育てた果物で作った、栄養飲料をあげるわ」


 私はオーニソ先輩に飲料を渡され、飲みながら。

カードで空間を縦に切って、飲料を取り出していた事を考えていた。

私のイスベルグカードにはそんな機能は付与されていないわね。便利すぎるわ。


「あ、美味しい」


 なんだろう、すごくのどごしが良くて、味が重くもなく軽くもない。

それでいて甘さを感じられるわ。

お腹には溜まるかも、栄養豊富ってことかしら。


「ご満悦で何より、でも汗もかいていないし逸材よね。ラナンちゃん」


 オーニソ先輩は何やら機械と、自身を接続して操作を行っている?

物理的に痛々しくではなく、羽毛の様に柔らかそうな何かと触れ合うように。

どうやら神経と直接繋げて操作しているようね。


「そうね。私は汗をかかないわ」


 いつも通りだわ。

これまでの、すべての戦いでそうだった。

そしてこれからも。


「それと戦闘データは、私とラナンちゃんの秘密にしておくわ」


 先輩は機械から少し距離を置く。

終わったのかな。

データとして残せるのね。


「あ!先輩!私を研究するつもり!?」


 研究され尽くしたら、どうしようかしら。

世治を組み合わせたらいいかしら。

流石に世束は使用しないと。


「まぁ、そういうのもあるだろうけど、

ラナンちゃんの戦い方について憶測が立ってるのよ。

主に貴族間で」


「貴族間?」


 よく分からなすぎる。

クラが、そんな憶測を立てるとは思えないし。

坊ちゃまとぶつかった影響かしらね。


「えぇ。だからプラと話し合って、この国にない独自の戦い方は、

とりあえず私とプラ以外には、見えないように組み替えてるの。

どうせ、この場所を使うだろうし。」


 ここで、ね。

新入生伝統行事、オーニソ先輩との試合ね。

どんな戦い方するのかな、楽しみ。


「それに憶測ってなによ?」


 私が貴族達に話題なんて、

喜んでいいのかしら。

どういう状況なのか、気になるわ。


「滅んだ月人の末裔なんじゃないのって」


滅んだ種族よね。

お父様もお母様も種族違う。

まるで成立しないわ。


「知らないわよ」


 それに月人という種族名?

訓練前にオーニソ先輩から聞きました。

まだまだ入荷したての、とっても新鮮な知識ですわ。


「なんていうか、その、直轄部隊『藍』は口外しないだろうけど、

クラレット様に関わる全ては秘匿しますって集団だし。

ただアルタイルお兄様とぶつかってしまわれて、ベガに見られたのがですね…」


 坊ちゃま関連ね。

まぁ、なんともいえないわ。

あれはあれで、最善だったし。


「そもそも国家下にない強大な力は、央界か月人かってことなのよ。

それで火の四大貴族の管轄下にあるのが、転生協会だから…

滅んだ月人って推測されたのですわ。ベガによって」


 要は現在この国における

巨大な後ろ盾がないってことなのね。

権力って小難しい。


「それで調べろって事ね?」


「逆よ、証明しろって事よ。だから『黎宙』に所属しない?

クラレット様でも、流石にベガ達を黙らせられない。

でも私は黙らすどころか従わせられるわ」


 突き抜ける。

まるで天にも届く竜が、羽ばたき巻き起こした一陣の風の様に。

これがオーニソ先輩。


「『黎宙』に所属する部下の為に…上司である、わたくしオーニソガラムが」


 言葉が暴風を纏う様に。

音が嵐を伴う様に。

静かに、私を突き抜ける。


 嘘は吐いてなさそう。

良くはしてくれる。

でも、ちょっと待って大事なところは。


「大丈夫よ、私は風の四大貴族の当主候補の筆頭だから。

『黎宙』と、火の四大貴族の特別護衛との兼任よ」


 迷っている表情を捉えられてしまったようで。

私が気にしていた部分を的確に告げられる。

これで、あとは。


「ちなみに御給金は、成り上がれるどの所属よりも破格的に多いわ」


 それは、とっても魅力的だわ。

【黎宙】への扉が開かれる。

大きく開いて手をこまねている、そう感じる。


「もう一つ、聞いていいかしら」


 憂いを消し去り、迷いを断ち切りたい。

後悔は、過去の私を否定する。

だから私は私で在る為に。


「えぇ、いいわよ」


 オーニソ先輩は微笑む。

私を導く様に。楽しむ様に。

大きく瞳を見開いて私を視界で包み込む


「戦闘技能を、活かして稼ぐとしても『黎宙』所属が最も稼げるのかしら」


 資金は特別護衛として、必須要項かな。

だから、多くを得られる様に。私はこの先に動いていく。

クラも皆と過ごしていくために。


「そうですわ。才能が戦闘技能に突出している方々の最高峰ですわ。

何せ戦時には、私達『黎宙』が前線に立つのですから。

だから喉から手が出るほど、ラナンちゃんを入団させたいですわね」


 戦時。央界との決戦は避けないと、まぁ戦わせてもいいけど。

もう一人の(アオナ)を、同時に世界線に生存させる事は容易いのだから。

(アオナ)に与える、世界への死の錯覚法で、(ラナン)へ転生してるしね。


「ちなみに王院一年生で、この時期に所属するのは、歴代最速ですわね。

私は新入生伝統行事のあとに、プラにスカウトされましたから。

それに…私の持つ最速記録を、塗り替える事になりますわ」


「オーニソ先輩はどう思うの?」


 誉を手放すことに対して。

才能を磨く努力をして、手に入れた勲章の様な誉。

どんな風に強者への道を歩んだのだろう。


「わたくしですか?わたくしは素晴らしい才能に出会えて

心から嬉しく思いますわ」


 なぜそこまで言ってくれるのか、分からないけれど。

とても私を買ってくれていて、心から嬉しく思う。

さて、すべての疑問は解けたわね。


「入団するにどうすればいいかしら?」


 オーニソ先輩は、私を丁寧に迎えるように。

高貴な王子様がお姫様を迎えるように、手を握られる。

強くも弱くもなく、オーニソ先輩の細く鍛えられた指に包まれる。


「ラナンちゃん…感謝を贈るわ。そして末永くよろしくですわ」


 後に王路院に【黎宙】への歴代最速の入団記録保持者として、

私、ラナンキュラスの名が刻まれることになるわ。

 

 ちなみに先代エースはオーニソガラム先輩の一日後だったそうで。

オーニソガラム先輩は歴代二位の歴代最速の入団記録保持者としている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ