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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
王路院編
239/262

第238階 風は時よりも強し

「オーニソ先輩?

命の書いた手紙カードはお返しします」


 彼女はいたずらな笑みを浮かべる。


「それは差し上げるわ、とても買い物後の嬉しそうな顔をしていないもの」


「えぇ、それではありがたくいただきます」


 とても高価な物だけど素直にもらうことにする。

それから周囲を見回すとみんな袋を抱えていた。


「…ラナンさん。時に【ソレイール・アンジュ】は別の顔を持っていると…

そう感じる…あの時の様に」


「えぇ、また来るわ」


プラ先輩も知っているようだし、クラレットも何か言いたげな表情を向けてくる。


「かなり買えたわ!ラナンはどう?」


「この通りだわ」


 カードだけ持っている両手の平を、カランコエに見せた。


「ただの高級衣服店じゃないみたいよね…」


 それとなく自然にそのまま彼女に囁かれる。


.「またこよ!」


 次の瞬間、私は少し驚いていたわ。


「うん!逃さないから」


 カランに抱きしめられていたから。

少し、猫の気分。


「めっちゃ一緒に周りたかったのにー!!

いなくなっちゃうんだもん」


 少し抱擁が強くなった…そんな気がする。


「…私も」


 そう言われてなでられていた。

クラに。


「はいはーい!仲良しこよしですねー

とりあえず食事も済ませたいし…」


 オーニソ先輩は私に手をかざす。

そのあとすぐに驚いた表情に変わる。


「今年は王院の授業…早すぎない?

もう特殊防壁の応用を習ったってこと?」


それを聞いて驚くプラ先輩。


「…オーニソの念話を阻害するなんてありない…」


 脳を流れる魔力回路と併合して流れるように結び付けようとしたから、自動集然がはじいたってことね。

まぁとりあえず念話って、逆回路を与える催眠とか洗脳の応用で順回路を通して、

魔力のやり取りをするものだから幻惑魔法か何かと判断されたようね。


「上でもらった特殊な道具によってはじかれたみたい。

待っていて」


 見せていいかどうかっていわれたらどうでしょう。

あまり見られない方がいいような気がする。


ーー青布包

集然。

 空の様な薄い水色。イメージ通り。


 集然の発動と同時に小さな集然も集まってくる、除菌とか錆防止とかその辺だと感じる。

形を防止させる極薄の魔力水のようなもので包み込まれていた。

少し柔らかい。


 連鎖反応。

これはすべての集然で起こる現象。

必要なすべてが集まってくる。


「カラン?」


 カランは笑顔で手を差し伸べてくれる。


「ものすごく軽いじゃん!なにこれ!」


 重力軽減に空気抵抗軽減の集然も集まってきてるからね。


「でしょ。驚くよね」


「驚いた!そして任されました」


 軽くお辞儀するカラン。


「これで」


ーー先輩話

集然。

 オーニソ先輩と会話できるようにしたわ。


(「大丈夫ってわけね」)


 うわぁあ!とても心地よい。オーニソ先輩の声が鮮明に透き通る。

もちろん彼女の口は動いていない。


(すごく良いですね!先輩!)


 風を主成分として構成された糸が耳と口付近に繋がれていて、話すときと聞くときに、

その糸の中を会話成分で構成された魔力、会話魔力に回転と削り、変換が加えられるから

より小さい魔力で送れて、より小さい脳対処で受け取れる仕組みだと感じる。


(「わお!評判良いのよね、私との念話。

効率的にも負担軽減的にも透明度的にも」)


 情報操作の集然は自動で発動しているのもあるけど、

アオナで思考すればオーニソ先輩へは届かない。

ラナンキュラスの思考は届いている様子で。


「(…オーニソ式は我が国家としても革命的だった)」


 プラ先輩!


 念話は会話魔力を直接魔力の回路につなげて流しこむといった感じだけど、

オーニソ先輩式は、会話魔力をより相手の受けとりやすい形へと構成を組みなおす過程が非常に洗礼されていると感じる。


「(ちなみに心と感情に結びついているから、拒否している相手は参加できないし、

来て!って思っている人は来ることができる仕組みよ)」


「(…オーニソ…私のこと大好きらしい。…告白ってやつ)」


 揶揄っている様な、本気の様な、そんな言葉の速度。

 

「(プラ!普通に好きだけど!ちょっと意味が歪曲してますわよ」


 まんざらでもなさそう。


「(それはさておき…)」


「念話、お疲れさま。ラナンさん」


 なにか鬼の弱点を見つけた。みたいな表情を向けてくるオーニソ先輩。


「お疲れ様です」


「またしようね。可愛い後輩ちゃん」


 まぁいっか。好意的な関係を築けそうだし。


「…おい、これからどーする…オーニソ」


「ランチでもいこっか?

後輩ちゃん達は、私達は2人で行ってもいいわよ」


 なんだろう。好意的に見てくれてるのか気に入られた感覚があったのか。

良く周囲を見渡して適したものを入れるのが得意な性質を持っていると感じる。


「連絡手段もありますし、予定通りにしようかなって」


「うん、いいわよ。お開きってことで。

本日はゲリラ的だったけど、本来はきちんと連絡とって聞くのが筋だったからね。

まぁおごりはその謝礼の意味も込めてた」


 一歩私に近づいてくる。


「後輩ちゃん今度はデートしようね」


 けだるそうに答えようとした瞬間のことだった」


「おい貴様ら!!この俺を誰だと心得る!!!」


 大きな声が鳴り響く。


「獣神祭の優勝者たる、うー様だ!」


 少し遠いけど、ライオンの獣人ね。


「面倒だけどちょっといくか…」


「そうね、忘れてたわ。武闘大会」


 直轄部隊の【黄】が視認されないように視覚を操作しながら集まっていた。

その近くで他の獣人が掲げる旗には挑戦者求ム。と

その周囲に結界が張られていく。


「…今回もイキがいいな…」


「後輩ちゃん達、私の戦い見てからランチいくといいわよ」


 そいうと瞬時に移動してライオンの獣人に参戦表明するオーニソ先輩。

先輩、風に成れるのね。


「…警備は『黎宙』担当だし、オーニソいれば大丈夫。

…さて、今日は2人で世話になった…」


 プラ先輩はそう言い残して消えていく。


ーー時喰

星魔法。

 私は早く移動するために私とカラン、クラ、フユさんと観覧できる場所までの時間を取り除いた。


「まったく命知らずな女だ」


「「「先輩!先輩!!先輩!!!」」」


 どこから聞きつけてきたのか、手書きの風の四大貴族の紋章を旗として掲げる

王院の女子生徒達の集団。


「外界の武闘大会を優勝された勇者様。遠路はるばるようこそ。

ここ、私の目の前が死に場所でございます。」


「意味が分からん。『黎宙』でも『悪魔五傑(マレフィックス)』でも『命の雫の見続けている夢』でもない。

実に興ざめだ。この地の戦力はあれだけの誉れを謳っておきながら、

戦いのたの字も知らないような女に、この俺の体力を消耗させよいうというのだからな」


 理由は不明だけど先輩が【黎宙】だと気付いていないわね、あのライオンの獣人。


「違いますわ。ご注文は瞬殺でよろしくて?」


 オーニソ先輩は微笑む。


「まぁいい。死地に微笑んで向かう、その覚悟は認めてやろう」


 うーと呼ばれたライオンの獣人は構えた。


「毎度毎度、外界のありとあらゆる武闘大会のレベルの低さを痛感しますわ」


「!!」


 怒りを乗せ早送りで加速させた拳。

おそらく獣人に伝わる武術に時魔法を組み合わせる技。

けれど勢いが死んでいく。


「……ふぅぅう」


 オーニソ先輩は同じ速度の時を彼の拳に行使して

脱力して勢いを上げる武術を完全に殺してしまっている。

それを何度も、何度も、何度もすべて。


 オーニソ先輩を応援する黄色い声の声量が跳ね上げっていく。


「なぜだ…この女が魔女五傑マレヴォレントとでもいうのか…」


 先輩の呼吸は規則正しく理にかなっている肺活量ね。

対照的にライオンの獣人の息は荒い。

大きな口から大量の空気が漏れ出てくる。


「疲れてきた?負けを認める?」


「ならん!誇りにかけて…」


 ライオンの獣人は詠唱をはじめる。


「いいわ。私にも矜持はある。お見せしましょう。獣人の勇者よ」


「………………」


 オーニソ先輩は鼻を鳴らしながら距離を取る。

言うまでもなく実力差はあきらか。


「奥義!!!時間による空間支配『停止』!!!」



 「老竜咆哮・緑」


 先輩は呟いたのか、口を動かしたのか。は分からない。

それでも停止していく刹那に世界は認識されていった。

オーニソ先輩の風は。


 空間にひびが入る。

結界内の空間はライオンの獣人の奥義によって止まりかけた。

けれど、薄い風が時間停止の隙間に入り込み塩のように細かく砕いてしまった。


「あなたの力量では私の周囲の時は止められないわ」


「…うそだろ…一族屈指の時の才能と称えられた俺の時が…」


 膝をがくっとして筋骨隆々の身体が弱弱しく倒れていく。

魔力切れ。


「獣人くん。私の名前はオーニソガラム。

『黎宙』所属の『才能の魔王』と言えば伝わるかな」


「まさか…女…だとは」


 オーニソ先輩はライオンの獣人に微笑む。

ライオンの獣人はその呼ばれ方を知っていたのだろう。

青ざめ愕然とし、気絶した。

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