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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
王路院編
235/262

第234階 かみこえし

「冷気」


「cold」


「chilly」


 冷たい空気が直線状の対象物を凍らせていく。


「皆様!指先に浸した液体に外世界の言葉を投げかけることで【冷気】を起こすことができたでしょうか」


 外世界の言葉を発動条件として選択するのは、誤射を防ぐため。

慣れた言葉だと、練習中に付着していた残った液体が反応するからだそう。


 意外と面白いわ。

まぁ、ほんの少ししか凍り付いてないけれど。


 授業を行っている先生は四大貴族に所属する人物とのこと。

クラレット曰くアマランサスお姉さまの住まわれている屋敷で面識があるそう。


ちなみに男性と女性の授業は別室であり、生まれた瞬間の性別が分けるそうで。


「…先生!先ほどから申しておりますが私は女です。魔法の力で決定づけられて大変不愉快です」


彼女は礼節に品をわきまえていた人物だったから教室内に通されていた。


「魔法の成績上位者には純女性が連なるのは定めなのです。

性別転換術は成功済みで女性としての心を有していると国家として

認めてはおりますが、魔力適性だけはどうやっても覆らないのです」


「努力も鍛錬も徹底的に行う所存です」


「すまいない、教師としては納得も出来ないし納得もさせられない。

身体転換を行っても同じで、もっと深い場所、魂に精神。

それよりも深い何かが決定づけていることなのです」


「お言葉ですが、その理論ですと彼女も男性として認識されるのではないのでしょうか」


(なんかめっちゃ見てくる、視線が痛いわ)


「彼女は性別転換術を受けたという報告を受けていない。

それに当院では最後の最後まで可能性を追い求める姿勢よ」


「ふーん、私のラナンに喧嘩売ってんのかな」


 背中から柔らかくて大きな何かが包み込む

抱きしめるように。


「カラン?」


「……可愛いから抱きしめるの」


 可愛く言われても。

とってもおおきく柔らかいのが救いではあるわ。


「ねぇ、先生。護衛証明書は届いているかしら」


「カランコエさんに、クラレットさんまで落ち着いてくださいませ」


先生はさすがにクラレットが出て来ると冷や汗をかいていた。


「クラレット様に男が出来ているとはご存じありませんでした」


「護衛証明書は婚姻の契りを証明するものではございませんよ、実例としてフユは女性です」


ーー氷世界


さすがにおこ。


 教室はおろか、自分の右手の指先から手の甲の半分まで凍り付いていた。


「わーお」


 カランコエはとっても喜んでいる。


「…あなたは一体」


 先生に他の生徒は驚いていた。


「クラレットへの侮辱だけはいただけないわ、そして私の実力は分かったかしら」


「証明できていない、誰が行使したのか証拠がない」


「心と感情に結びついて魔法は大きく変化する。魔法に対して男性はとてもかたくにぶいのよ。

そう結論付けといて」


「クラレット様、いくら貴女様の言葉でも納得いかないし響かない。

ラナンさんを男性のクラスに移動して、私をこのクラスの1人にすればいいでしょう」


「言葉を控えようと思ったのだけれど、あなた見えてないし感じ取れていないの。魔法に対してセンスがないの。

だからラナンが感情と結び付けて目に見えて広範囲な魔法が使用できた事実が分からないのよ」


 初めて。

クラレットがとても冷たいの。


「それに状況証拠ならあるわ。教室を覆った氷が発言した瞬間、講義ではまっすぐ使うことが求められている、

その影響下でラナンの目の前のあなたが魔法を使用していないのなら、なぜラナンの手に氷がまとわりついているのかしら

ラナンが感情的に爆発させたと捉えることができるのよ、それに手にまとわりついた氷の形も正しく認識できているかしら」


「氷の形…?」


「えぇ、ラナンの手からまっすぐ進む中で強力過ぎるがゆえに横から、他の生徒からの影響を一切受けていない形を成しているのよ。

ラナンを起点にまっすぐ進みつつ広範囲に押し広げていくような。それに魔法の名前を呼ぶのは感情を結びつけるだけのものよ」


 そう言いながらクラレットは私の右手を包み込むように溶かしていった。

そして彼女を中心に凍り付いていた教室が元に戻っていく。


 闇夜を照らす虹の雫のように。


「よく抱きしめられたのよ、泣きながら燃やし尽くす私に、父は」


 私はクラレットに包まれていた。


「あとで聞かせてね、力のこと」


 そうクラレットにささやかれて、私は何も答えなかった。


「…なるほど、今の私にはクラレット様ほどの魔法は使用できません」


 俯く、女性だと訴える生徒。


「先生。男性と机を並べるってのはちょっと配慮が足りないよね、第3の教室を手配して集ってくれるかしら」


「すぐ手配いたします。皆様、残りの時間は自習にいたします。クラレット様!クラスを任せてもよろしいでしょうか?」


「えぇ、まかせて」


 女性だと訴える生徒を連れて、二人は速足で駆けていった。

対照的にクラレットの周りに生徒達が集まってくる。

クラレットの勇気を称える者、クラレットを絶賛する者、過ぎ去った不安を吐露する者。


「先生が不在の間は私が先生代理を務めさせていただきます」


 拍手が沸き起こる。


「火」


 小さめの火がクラレットの白く細く美しいひとさし指の先にともる。

それを見た皆が皆、笑顔できらきらしていた。


 クラレットの火はきらめいていた。

魅力的で蠱惑的で幻想的で、そんな火。

心も気持ちも魂さえも、温まり透き通り救われる、そんな火。

赤色、橙色、黄色、白色、光と中心に向かっていく、

花びらのような赤色が一瞬一瞬、虹の閃光のようにはじけていく、そんな火。

命の雫のような。


「命の雫以上の火はないと。あの頃、父に教えていただきました」


 火の音がする。

静かに息を吐くような、無を掴みながら力強く天に昇るような、命が根を張るような、そんなイメージを抱かせる音。

どこにでもあるような小さな火、けれど彼女のクラレットの火は周囲を拒絶するともいえる特別を放っていた。


 生徒の誰かが言った。


 「火の極み」と。



 ーー焦調査

火。火が火であるために必要な構成要素の純度100%を凌駕するほど高濃度。

それゆえ、魔法の類といった外部から操作あるいは干渉される要素が発火時に用いられた可能性が非常に高い。

また、地球人に代表される人類の扱う一般的~最大の火とは性質、純度、構成要素のすべてが異なり優れている。

人類にとって到達点の一つに数えて差し支えない。

ただし、攻撃な要素は基本的な人類の起こせる一般的な火と変らないため、使用用途や範囲は生活が主になる。


 いつも便利ね集然は。

欲しい情報が脳を通して染みわたっていく。

集然も調べてみようかしら。


 ーー焦調査

ありとあらゆる悪意から助ける。


 うそ、はじかれた。なら。


ーー本質視 焦調査

集然を構成する基礎物質、ル・クラミを用いて剣や魔法を表現しありとあらゆる悪意から助ける。

シンチョウ、もしくはコウエツに耐えられる回路が身体と魂に構成されていないと自分自身も巻き込まれて主に魔法の構成物質に変換されてしまう。


ーー本質視

シンチョウ、もしくはコウエツ。


 こちらも、はじかれた感覚がある。


ーー本質視 まほう

シンチョウ = 神超 = 魔界の天皇の【神超え死】

コウエツ = 神越 = 生世死世完全成個の【神越え死】

円環の創造 集然 ⇒ 円環の始点 世束 ⇒ 円環の終点 世治 ⇒ 


 かみこえし?

ふーん。そんな力をもっていたんだね。彼。

【神超え死】。


ーー本質視 ちから

表裏一体シリーズの一つに称される。

【神超え死】は反人。

基本性質は凌駕。ゆえに人と神の恩恵をそれぞれ受けられないが悪意も踏み躙る様に受け付けない。

本質にきっかけは夢。

すべてがある一つの夢【神々の夢】に魅了され羨望される中で少年は人類で唯一人、【深淵の孤】【人類の創】【人類の葬】と同質の力【神超え死】をつかみ取り宿した。

【神越え死】を宿すのは現存【神超え死】きっての最高の魔法。


 【神越え死】って、まさか。


ーー本質視 ちから

所持者は貴女様でございます。ハツミリア・ルイデさま。

初閲覧とのことで、御説明いたしますね。

表裏一体シリーズの一つに称される【神超え死】【深淵の孤】【人類の創】【人類の葬】と同質の力。

【神超え死】は反人。が魂の死により変質したものが、【神越え死】は反神。

【神越え死】を宿すのは現存【神超え死】きっての最高の魔法たる貴女様でございます。


 私、なんだ。

驚いたけど、そうかもって納得してしまう自分がいる。


「ラナン?」


 私をのぞき込むクラレット。


「魅入っていたのよ、貴女の火に」


「そう、なんだかこそばゆい。それにとっても嬉しい」


 クラレットは嬉しそうに微笑む。

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