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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
王路院編
230/263

第229階 彼女

入学式典後の教室では、名前と一言だけの簡易的な自己紹介、明日からの大まかな予定に支給品の説明、教材の自宅への送付手続きが行われた。


 かくいう私は、入学式からの教室なんてものには、懐かしさと今後の不安がほのかによぎっていく。


 あの時は大変だったなぁ、と。


「緊張してる?」


クラレットが覗き込んでくる。


「ん、ちょっと距離」


 彼女は神々しくて眩し過ぎる。


「へぇ、冷静ね。フユなんて炎の様に顔を真っ赤にさせるのに」


「お……お嬢様…」


 顔を伏せながら恥ずかしさを必死に隠している様子が見て取れる。


「それにお嬢様!特定の相手を御贔屓にするのはいささか礼節に欠く行動かと…」


「それはそうね。フユはともかく」


 彼女は髪をかきあげ、自席に戻って行く。

その行動一つで教室中の生徒達が息を呑む。


 ほんの僅かな休憩時間の出来事。


 着席している時も、発言している時も圧倒的な存在感を放つクラレット。


「(あの...お嬢様、どうなっているのよ)」


「(貴女こそ、どういう図太さしてるのよ)」


 カランコエは私への魔力吸収を自らの力で打ち消し、注入の要領で音を直接念話の様にして話し掛けてきていた。


「(てへ)」


「(まったく。人の世の王の大器ってことでしょ。似てるもの、彼等彼女に等しく)」


「(彼等彼女...?ラナンには何が見えてるの...)」


 悟ったのか、理解したのかは分からないけど、カランコエは目を背けようとしているみたい。


「(何がって問われたら、同列への可能性。彼女の将来性がね)」


「(ごくり...)」


 これは、勘付いていたのね、と。


「(それって...そんなはずはない...よ......)」


「(全否定できていない。それだけで十二分だわ)」


 私は言葉の意地悪をした。


「(.........勝てない。ラナンには)」


「(私が可能性に関与する。という事をお忘れなく)」


「(はあああああ!?)」


「(その為に来たのよ。この地に)」


 カランコエは大きく深呼吸をしていた。


「(その話...乗った!!なんだかとても面白そう!!)」


 私は、意外というか期待していた様な、どっちつかずの気持ちのまま嬉しくなっていた。


「(どこまで協力してくれるのかしら)」


「(面白いって感じるまま、なところまで)」


 彼女らしい、そう私から評するには短い付き合いだけれど、確信めいたものを確かに感じ取っていた。


「(理由として、十分ね)」


 カランコエは顔を逸らしていた。

小さく覗かせる頬から、彼女はほのかに紅葉しているのが見て取れる。

 2人で悪巧みをする様な、そんな秘密の共有に実は私も心躍っていたから。

 きっと気持ちが通じ合っている、そんな確信を得ていた。


「(ラナン、貴女その...すっごく面白い)」


「(ふふふ、そう?それでも。それはそれでいいかな)」


 彼女なりの称賛と受け取っておこうかしら。

だって、とっても嬉しそうなんだもの。

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