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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
王路院編
229/262

第228階 特別

 式が始まり私はうつらうつらとしていた。

食い入る様に清聴するカランコエを横目に。


その時だった。

 私の眠気を吹き飛ばす様な歩みが、壇上へと登っていく。


(「貴女でしたか、最初にこの目で確かめるのは」)


 静寂の中心に咲く桜の木の様な、有無を言わさぬ圧倒的な存在感。


 そして誰もが心地良いと感じ、魅了される笑顔。


 その一挙手一投足に微笑むだけで人々を傅かせたと名高い、上に立つ強者としての振る舞い。


(「ねぇ、第三次世宙の皇帝様」)


 彼女は特別な来賓客として、この入学式を締め括った。

その美しい言の葉で謳う様に。


 それぞれの教室に向かうまでの道程は彼女の話題で持ちきりだった。

少し耳を傾ければ、彼女を称賛し称える言葉が紡がれている。


「あら、ラナン。同じ教室ですのね」


「クラレット。そうですわね」


 私は即座に振り向いていた。

その動作に彼女は少し驚いていた。

流石に命の雫と見紛う様な、周囲と明確に一線を画す存在感を発していれば、気付けてしまう。


「...私もおります」


「カランコエ。私以外の魔力は美味しかったのね」


 彼女は舌を少し出しながら満足そうな笑みを怪しく浮かべていた。


「貴方はラナンの友達かしら」


「お嬢様...!」


「... 四大貴族の、クラレット様?」


 そっと覗き込むとカランコエは拍子抜けした表情をしていた。


「そうね。クラレットよ。貴方の名前をお聞きしてもいいかしら」


 微笑むトーレスと同等以上の魅力をクラレットへと素直に横目で私は感じていた。


「…カランコエ」


 機械の様な表情と声色でそう彼女は呟いていた。


「礼儀が欠いている、お嬢様への」


 カランコエを押し出す様にクラレットとの間に割って入ってくる。

 そう、その彼女は怒っている。


「フユ。カランコエは緊張しているのよ。少し自重しなさい。それともフユも友達100人目指してるのかな」


 おちょくるような揶揄う微笑み。

楽しみながら場を制圧していく。これが彼女達の力。

 人の種の頂点に立ちうる一握りの成せる技。


「いえ、しかし!100人作るつもりはないです……」


 あたふたと顔を真っ赤にし、手をひよこの様にパタつかせてささやかに抗議している。

クラレットはそんな彼女がすべてを言い終わる前に2人の手を優しく包み込んでいた。


「私とフユは昔馴染みだし、これで仲良しだね」


「!!」


 不意の貴族様の握手にカランコエは緊張のあまり凍り付く様に停止していた。

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