第224階 天の深淵
「久しいわね」
魔皇とキキョウと別れた私は、その先を真っ直ぐ上に向かっていったその先だった。
「開端、太極、天眼、馬鳴、三清、夢幻、七曜、八岐、幻夢」
私は右から名を呼びながらそうそうたる顔触れを拝顔した。
「そして慈悲」
「この私が代表して言葉を交わそう、ハツミリア・ルイデよ」
出立ちはフトゥールムに全員似ていた。
けれども、今から言葉を交わす慈悲だけは何処となく面影がセプテムと名乗っていた七曜に似ているだけだった。
「呼び方はアオナでお願いしても」
「...ではアオナよ。よくぞ参られた。そして私達から作られしフトゥールムを良くぞ打ち倒した」
「当然でしょ。この場所に貴方達を追いやったのはだーれだったかなぁ」
「......」
「...」
「.........」
「待たれよ同士よ...。
私達をこの地に追いやった者は貴方の父君、大勇者キレ・ルイデだ。
だが、一つ失念している。魔界の天皇ミラース・ラーバ・ラーサに滅ぼされた七つの大運刃達はこの場所で力を付けた。
分身体で当時の私達と互角に戦える程に」
「見ていなかったつもりなのかしら。
どうせ貴方達を全員同時に相手取るつもりだったから、キキョウを連れてきたし、途中で出会った彼等も良い働きをしてくれた」
私と慈悲の間には微かな無言が流れていた。
「異世界転生と呼称される程度で作られた分身体を相手取れ勝利した事実は確かに認めよう。
それでも現世に転生しようが異世界に転生しようが本体よりは遥かに劣っている事実には変わりようがない。
人の常では多少なりとも見解は違うとしてもだ」
「そうね。知っているわ。太陽人の王達に、優れた能力も第七地球人達の言葉でいえばチートスキルも、児戯でしかないことを」
「そういうことだ。大勇者キレ・ルイデに死の淵を彷徨わされ苦心しながら反面私達は心躍った。
その後絶望したが...転生後の脆弱差に。地球人という惰弱な生き物が転生した場合には多かれ少なかれ強大な力を得るが...私達は天還路に訪れただけだった」
「何をいっているの。
この天還路よりも強大な力の流動はありとあらゆる世界の何処にもないわ」
「死して分解した肉体が再構築する過程でより大きな流れにその身を浸す事によって研ぎ澄まされた力を得る、それが死後に力を得る正体だろう、アオナよ」
ーー剣裂全 漆黒剣
ーー槍貫全 白亜剣
「天還路の原初にして頂点は2対の龍王よ。
そして2対の神を黒と白の龍王に染め上げたのも。
貴方達が緊張感を得るほどの影響を与えているこの私も。
人の子の願いであり魂そのものだからよ」
「なぜそれほどまでに強大な力を得るに至った。そしてなぜこの天還路に存在できるのだ...!」
「やっと友を救えると少年は思うだろう言うだろう、現世に転生した貴方達よりも遥かに劣っていると貴方達が決めつける8人の人の子に」
「彼等は遥かに本体より劣っていたのは事実だ、変えるつもりはない」
「それに教えてやるから。劣っているということがどういうことか、嫌というほどに!」
「悲しいな。友として迎えようと心待ちにしていたのに、誰にも何者にも振るうつもりがない私達の力を」
ーー人期最 わたし
『わたしは終焉の未来より出でしハツミリア、すべての滅びと綻びを束ねるモノ』
ーー世死生 すべて
漆黒剣と白亜剣を同じ力で統合し創造された。
ーー神異特異
ーー至常超 ちょく
ーー十知未 すべて
世死生 すべてによる強化エクスカリバーン。
ーー至常超 はやさ
「馬鳴ーーーー!!」
「最終未来クアットゥオルを構える暇も与えられずに...」
ーー十知未 すべて
ーー至常超 はやさ
「総員敵を滅...す......」
「七曜...?」
「最終未来セプテム毎叩き割っただと!」
「どうかしら、劣っているって事を堪能できたかしら」
「ありえない...!」
ーー至常超 ちょく
ーー十知未 すべて
ーー至常超 はやさ
睨み付けてくる鋭い眼光が変わる、滅びの闇に囚われた人形の瞳に。
「大勇者キレ・ルイデの再臨とでもいうのか...!この天の深淵には遥かに届かなかったというのに!!...」
ーー至常超 はやさ
ーー十知未 すべて
ーー至常超 ちょく
口が空いたまま人形は止まる。
「私は最終未来ハツミリア。文字通り魔皇の魂と心を心血込めて注がれている」
ーー至常超 ちょく
「ねぇ、今の聞いちゃった?」
「!!!」
ーー十知未 すべて
ーー至常超 はやさ
「体感だが...刹那の間に5人が滅ぼされた...だと...?」
ーー十知未 すべて
ーー至常超 はやさ
「10人のうち、6人目♪」
ーー至常超 ちょく
「私達は...頂点に至った...のよ......」
「私を唯一除いてね」
ーー十知未 すべて
ーー至常超 ちょく
「残りは太極、天眼、慈悲。寂しいねぇ」
ーー至常超 ちょく
「あの時にはいなかったわよね」
ーー流爆星 すべて
「これ...ほど......と...は...」
ーー至常超 はやさ
「後は太極。ドゥオ・フトゥールム。
天眼。トレース・フトゥールムだっけねぇ」
「威勢の良い子猫ちゃんだこと...」
ーー十知未 すべて
ーー至常超 ちょく
「太極...!」
「あと1人だねぇ」
「アオナ!!!なんて...なんて速さなの...」
私の世死生 すべてを首筋に突きつけていた。
彼女らにとって通常ならこの動作も無意味。
なんら拘束性を持たない。
私以外は。
「トレース。いや、天眼。これこそが世治。集然の現最奥よ」
ひりつく空気。私の隙を伺っているのが痛いほどに分かる。
でも私は隙だらけ。
武術の心得も暗殺の作法もない。
「...なんて子なの。まるで子供同士の喧嘩でも折れてしまいそうな首に、私達10人誰1人として届かないなんて...」
「覚悟はいいかしら。せっかくだから最期の言葉を聞いてあげる」
「私は尊き王達の元へ向かいます。
恥じぬ生き方ができて光栄でした」
「その気高き御心、お見事。称賛に値するわ。
全身全霊を持って斬り伏せん!!!」
ーー神々夢 すべて
超強化アース・コラジェン。
そして私は虚空の地となったこの天の深淵にて世死生 すべてを解き、2対の剣を構えた。
ーー十白亜 すべて
白亜は墓標となった。かの偉大な十の生き様を讃えて。
ーー七漆黒 すべて
漆黒は喰らい尽くした。かの凶悪な七つの大運刃を。
ーー十七世 すべて
七漆黒と十白亜を同じ力で統合し創造された。