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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
天還路編
222/262

第221階 海の様な色の宝石

「あれを倒してしまうなんて...」


「粉々に砕いちゃうなんて、どんな魔法よ!」


「まぁ、脅威は一つ去ったという事で」


「「「!!!」」」


「手合わせ願えるかしら」


「...」


「ラングくん」


 ラング君は躊躇なく腰の剣に手をかけた。


「おいおいちょっと待てよ!それは...むずかしいだろ。見たろ今の!」


 「カムラ...これは約束でもある、引いてくれないか」


 「ラングが...いうなら」


 「カムラ、ありがとう。よろしくパエオニア!牡丹は抜かない。側で守って欲しいから。それにこれも牡丹のもう一つの姿だと思ってる。ラズさんとキキョウさんと出会い少しの間培った絆の力だ」


 それは海の様な色をしていた。まるで彼のラング君の透き通る広くておおきな心を表現しているかのように。


ーー世死生 完全成


 「私は通称“透明”を使います」


 「挑戦者として挑ませてもらう」


 ひりつく風のなか、私が挑み挑戦を受け入れた。


 パエオニアの切先が私の心臓を真っ直ぐに狙い定める。荒々しくも的確に。


ーー弾剣突


 私はその攻撃を透明で下から上にしなやかに振り上げ弾き返す。


「うそ...あんなに軽々と...」


ーー吹斬撃


 すぐさま、小さく細身の身体を生かしてラング君の懐に飛び込み斬撃を叩き込んだ。上部から下部への斜め切りで。


「ぐ...」


 私の斬撃をかろうじてパエオニアで受け止めたラング君が後方に吹き飛ぶ。


 そして距離が生まれた。


「どうかしら。女の子の斬撃は」


「重い、異様に。アリルがとんでもないパワーで押してきた様に思える」


「へぇ、それはちょっとびっくりするでしょうね」


ーー雷変化

 私の身体が雷撃に組み換えられていく。


「ふふふふふ」


「?!」


 驚くラング君。


ーー袈裟斬

 斜め上段からの一閃。


(「パエオニアが間に合わない...」)


「牡丹...ルピナス・宙星!!!」


ーー闇変化

ーー十知未 すべて

 私はラング君の必殺技の効力だけに技を当てる。

私が放ち必殺技を削り切り、残り火となった効力が遥か後方で、天還路への衝撃が波動となって響き渡る。


「なんちゅう、威力だ!!!」


「まるで空間がざわつき怯えてる...」


「カムラ、ナカリタ。改めて思います。これほどの強者は2度と出逢う事はない。そんな気がします。一期一会です」


「アリル...」



「はぁ...はぁ...はぁ.......技で全力をかき消す。なんて」


「私としても最高クラスの技よ」


「普段剣聖から剣の教えをこうている身だけど。明らかに強い」


「私がイメージするのは。剣聖に才を与えし、全知全能を創造せしめた次元に鎮座する、王達を斬り伏せた神々の夢」


「そしてその大勇者の剣技を打ち破った私」


 ラング君は横に伏せてしまう。


「悔しいなぁ...」


「何が通用して何が通用しなかったかは身体に染みてるはず。それでも私と打ち合得たものもあったはず。だから手合わせは終わり、あなた達を元の蒼の世界に戻します」


「えと、あの、その...」


 アリルちゃんがとっても驚いていた。


「いつでも出来た。そんな気もするけど。信用はしてもらえなかったはずよ、私は女神様でもないし。それにパエオニアが未知を切り拓くわ、後は任せて」


ーー蒼世界 すすむ

 蒼白い光が天還路に出現した。


「何があっても真っ直ぐ進む事。私とキキョウは最期の大運刃にして「進歩腐滅」トライアンフ・テメノス・スローンを屑鉄にし潰します」


「待った、手伝...う...」


「私の攻撃を受けた、でしょ。ツバルちゃん、ナカリタさん、お願いね」


「ツバル、ナカリタ。私からもお願い、ラングを連れて帰ります」


「アリルちゃん、ありがとう」


「いえ、こちらこそです。ラズさんとキキョウさんがいなければ、この地に呑み込まれていました」


「気にしなくて良いわよ」


「元気でね、アリルちゃん、みなさん」


「はい!」


「うーん、なんだ。ありがとな!」


「えぇ、カムラ君も元気で」


「ねぇ、私、絶対に魔法の腕上げて見せるんだから!」


「えぇ、ツバルちゃん。期待しておくわ」


「...ラングは大丈夫だから」


「えぇ、ナカリタさん。任せたわね」


「それでは行きましょう、みなさん」


 金髪の美しい髪をたなびかせながら、最後尾のアリルちゃんが蒼白い光に包まれていった。


「みなさん、無事に辿り着くでしょうか」


「パエオニアだけが、消えると思うわ」


 驚くキキョウ。


「そういうモノだから」


「そう...」


「もしかしたらちょっと不可思議な夢を見たって程度には残るかもね」


「そうだったらいいな」


 こんな他愛のない会話の中でも、この天還路は先へと続いて行く。


「そういえば次はトライアンフ...とかいうのだっけ」


「えぇ、最後に残ってる鉄屑よ」


「うへぇ、でも。最後」


「ふふふ、最後の鉄屑よ」


「ほんとの最後は?」


「誰にも分からない」


「へ?そうなんだ」


「そうなのよ」


 私達は笑っていた。

こんな死の臭いと絶望の風が吹く場所の中心で。

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