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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
天還路編

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217/263

第216階 失敗を凌駕する願い

 「国が...大国がまた一つ燃えた」


 人が動物が建物が赤く天を衝く炎に焼かれる


 「カムラァ!!! 早く移動しなくちゃ! 」


 カムラと呼ばれた青年の強張った表情が徐々に解かれていく。


 「ツバル...あぁそうだな、情けねぇな俺は」


 恐怖で竦み上がり、鉛のように重い足にカムラは愕然とする。


 「反省とかいいから早く足を動かして!! 」


 カムラは痛い程に理解していた。

自身がツバルと呼んだ弓矢を携えた黒髪の少女の気持ちを。

 しかしそれ以上に国が滅ぼされている本当の意味が槍の様に突き刺さって動けなかった。

 物語で呼んだ人類達の栄光が無惨にも削り取られていく語られなかった真実に。


 その国家の総称は「ラプター」。

異空間の垣根を超えて存在し、人類史に置いて最高水準の国家群を築いていた。

各々が広大な海を敷地に持ち、日常的に海賊に悩まされていた。

海賊から民を守ろうとする純粋な強い心が人類史に名を残す大国家の一つに押し上げた。


 その日ラプターは戦火に包まれていた。

賊達は大いに嗤い、ラプターの主要人物達の死を喜び宴を開いた。

 しかし、寸刻後。

その宴は海賊達を生け贄とする血の舞踊に変わっていった。


 伝承が不可能なほどに人々の命を喰らい尽くした大運刃の一角、アペックス・エーオニアン・アタラキシアによって。


 善も悪も男も女も大人も子供も等しく死と絶望に包まれながら永遠の中に身を鎮めていった。



 「ここ...は...? 天国、いや地獄かな...」


 「...そういうの笑えないから」


 水色の髪が悲しみを拭うように微かに震えていた。


 「ナカリタなのか? 」


 ナカリタは唇をキュッと閉じて一呼吸置いた。


 「そうよ...」


 「カムラァ!!! 起きたの!? 」


 勢いよく覇気がある声が青白い風景を切り裂く。


 「ツバル...? 」


 「良かったぁ!!! 」


 「ここは? 」


 「異空間かな」


 素振りの音が響く。


 「ラング...ラングじゃねぇか!! 」


 「無事でよかった」


 心からの笑みでラングは仲間を迎えていた。


 「!!!? ツバル!! あいつは...!!! 」


 カムラは不安気に周囲を見渡していた。


 「わからない...気付いたらここにいたのよ」



 「足下よ、私達の」


  誰も分からないと、そう思ったから。



 「ラズさん、それって」


 「やばいですよね...」


 ラング君とアリルちゃんが流れるように言葉を紡ぐ。


 「上がってきたら斬る」


 カムラと呼ばれた青年の顔色が変わる


 「ちょっと待ってくれ!!!! 」


 「なにを待てばいいのかしら」


 「あ、いや...その...取り乱してすまなかった。だけど、アレと戦うって本気で言ってんのか? 」


 そういうこと。


 「勝てば次へ進める、そういう意味」


 「は? それって勝つ以外にないのか? 」


 「手懐けるつもりなのかしら」


 「勝てる保証は...いや、違うが勝てる見込みだ」


 「私にはあるわ」


 「「!!!!」」


 「ちょっと待ってよ! ラングも戦うつもり!? 」


 「そのつもりだよ、ツバル」


 「無理...でも、やっぱ...勝てっこない」


 「キキョウ、私の近くに! 近いわ」


 「お側に! 」


 ラング君が剣を引き抜く音が合図だった。


 「みんな離れないでくれ!!! 」



 放たれた時空を引き裂く数発の弾丸がカムラ君を一直線に狙う。


ーー時断

ーー白亜剣

 左手に。


 煌めく弾丸とカムラ君の間に割って入った私。


 「へ...? 」


 カムラ君の驚く声。


ーー両断

 私が断ち切ったのは軌道。


 アペックス・エーオニアン・アタラキシアの移動先へ弾丸が向かっていく。


 「やるじゃない、鉄屑」


 空撃ちを行い本体をずらすなんてね。


ーー時翼

ーー漆黒剣

 右手に。


 アペックスの表面に切先が触れる。


 「斬れたと思ったのに、大した機動力ね。鉄屑」


 漆黒の刃で触れた一直線が綺麗な傷として削れ、残っていた。


 「ナンタル存在ヨ。深く触レレバ一撃デ持ッテ逝カレル」


 「ダガ守リナガラコノ私ノ相手ガ務マルノカナ」


 お喋りなのはそういう事ね。


ーー魔力解放

 私は魔力を創造し練り上げ、私を中心として周囲に溢れさせた。


 「わかるかしら、私の強さ」


 死を受け入れる目をしていた、カムラ君とツバルちゃんの恐怖が私への驚きで染まっていくのが分かった。


 「オノレ!!!!」


 つぎはぎだらけの人の声で叫ぶ、アペックス。

 その直後にアペックスは一歩後退していた。


 「ナンダソノ漆黒ノ剣ハ」


 私から漆黒剣の切先を真っ直ぐに向けられた事による反応だった。


 「鉄屑を屑鉄にする」


ーー延引広 実在点

 現実のある一点を広く引き延ばした。


 「我ガ隙間ニ、何故存在出来ル? 」


 笑みが溢れながら、続けた。


ーー至常超 はやさ

 超常に至る速度。


ーー十知未 くだく

 漆黒による更なる高次元に到達した荒々しいエクス・カリバーン。



 「......」



 「亀裂を入れやがった...」


 冷やかな殺気が失われ、静けさが充満する中でカムラ君の声が微かに響き渡る。



 「.........」



 「なんて...!なんて力なのよ!!! 」


 様々な思いを吹き飛ばすかの様にツバルちゃんの叫ぶ声が空間を切り裂く。


 「あんな超高密度の魔力的な物質に刃が届くなんて...! 」


 引き裂かれたアペックスという現実を目の当たりにしたツバルちゃんの声。


 「数多ノ人ノ営ミヲ喰ライ尽クシタコノ我ガ再ビ人ニ近シイ者ニヨッテ修復ヲ阻マレテイルトハ...!!!! 」


 私は白亜の切先を心穏やかにアペックスに向けた。


 「隙。見ーつけた」


ーー至常超 ちょく

 超常に至る速度で直線的な移動に特化させた


ーー十知未 ひかり

 白亜による更なる高次元に到達した神々しい輝きを放つエクス・カリバーン。


 重々しく凶々しい2連装重機関銃ともいえるアペックスの片方の銃身を白亜で斬り飛ばした。


 「こんなの誰が予測できたんだよ...」


 カムラ君はばつが良くなさそうに頭をかいていた。


 「...言いたいことは痛いほどわかる。けれどもこれがあの娘の力よ。圧倒的過ぎて悔しくもないわ」


 「あの誇り高きナカリタがなぁ...」


 「何よ...!! 他者を認めるぐらい容易いことよ! 」


 「そういう意味じゃねぇよ。まぁ、いくら敵が強大つっても守られてばっかりじゃあ、しゃくだしな...!! 」


 カムラ君は装填した銃を構えていた。



 「我ト戦争スルノカ!? 汝哀レ也」


ーー次元上昇

 すべてを底上げする強化。


 「へっ....!! 人の強さってもんを食いやがれ!!! 」


 「グロリオサ!!! 」


 紅く燃え上がる様な弾丸が数発、アペックスを貫く。


 「!!!!? ドウイウ事ダ。理解不能、測定不能、真理不明」


 「おい、おい、いけるんじゃねぇか? 」


 「...カムラさん、人の域を超えました...」


 アリルちゃんは本当に察しがいいわ。


ーー超常風体

 風の精霊の加護を授ける強化。



 「プスキニア!! 」


 放たれた氷の剣閃がアペックスを削る。


 「待って! なんだかとても、身体が軽いわ」


 そこには風の様に舞うナカリタさんがいた。


 「ナカリタが技を放つ姿もとても神々しく、それに...ナカリタがまるで風の様です! 」


ーー宇宙装填

 魔力系に特化した強化。


 「みんな...! 私、魔力が溢れてくる!!

いける! はぁーーーーー!!! 」


 「トレニア!!!! 」


 光の矢が脅威的な速度でアペックスを捉え、輝く柱で包み込んでいた。


 「うそ...こんなの私じゃないわ!!! 」




 「どうかしら?鉄屑」


 私は白亜の切先をアペックスに向けて狙いを定めていた。


 「人間ガ得ル事ヲ許サレル“力”デハ決シテ無イ!!! 」


 「それは誰の意思かしら」


 「世界ノ総意」


 「そう世界に毒されたのね。それはとても残念、でも大丈夫。世界を覆す為に私は歩み続ける」


ーー神友八人

 ずっと変わらない。最強のイメージ。

 その原点。彼等の声。今この瞬間も聞こえる。


 「ソレラハ失敗作」


 『私の辞書には成功しかないわ、それも大きなね』


ーー流爆星 ひかり

 白亜による更なる高次元に到達した神々しい輝きが放たれる。

 一斬り毎に五芒星。六芒星。七芒星。の三連撃。


 この日も、アペックス・エーオニアン・アタラキシアは沈んだ。


 「ナゼ失敗作ダト...認メラレナイ? 」


 「創れるからよ、そして貫き超えられるからよ」


 「...超エラレル...トハナ..........」


 「真なる貴方方を凌駕する事、それが彼の願いだから」

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