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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
天還路編
210/262

第209階 応える

 ラングの力強い足音が響く。

強く大地を蹴り上げ自分よりも強い何かに立ち向かう時の勇ましさで。


 私はそれをとても好ましいと思う。

父の元に辿り着きたいと思っていたあの頃、私の気持ちもきっと同じだった。


 父と母を超えて私は生を望まれていた。

それが圧倒的な強さに変換されていった、何モノも辿り着けない彼方へ。



「はああああああああ!!!」


 ラングの瞳は自己修復を行うオーナーを捉えていた。


 ー閃。

オーナーがこしらえた外殻は異常に硬い。

 同列に並ぶ大運刃達は人の世に存在する全ての人の兵器と科学を否定した、この外殻もその一環であったようで。

 革兵器も超常の魔法も知恵も通さない。

人類の培った技術の推、全てが通用しない凶悪な兵器達もまた人の願いによって創られていた。


「あなたは超えられる?」


「仲間達のもとへ急がなきゃ、今も待っている!」


 彼は解放していた、人知を超えた力を。

髪の色が変わる。青かと思ったけれど赤にも見える、まるで万華鏡の様に色が流れていった。

 仲間の想いに応えたいと願った彼に解放による副作用はなかった。


「それ、面白いわね」


「きみも...その力を...」


 私の内なる魔力をより精密に通しやすくするために。

ラピスラズリをエカルラートへと染めた。


「意味があればできるわ、それが私の魔法よ」


 そして白亜と漆黒を引き抜いた。


「私は貴方みたいにそんな重たい剣なんて持てないから」


 彼は苦笑していた。


 身体を回転させながら勢いをつけてラングはオーナーに一撃を叩き込んだ。

手応えありといわんばかりの良き表情をしている。


 消えていく飛び交う人々。


「ラズ!?みんな消えちゃうよ!」


「キキョウ、彼らは生きていない。だから泣いちゃダメよ」


「だってぇ...」


「そんなキキョウが私は大好きよ」


なんて優しいの貴女は。



 私は一瞬だけ握った漆黒を離した。

神異特異で斬りつけるために。

そして握り締める。


「はああああああああ!!!ルピナス・超!!!!」


 ラングの放った眩い閃光が強く解き放たれ迸る。

心から強く握った仲間達への想いを爆発させるかの様に。


 それでもオーナーは自己修復を完了させ押し潰された自身を再生させる。


「くっ、再生するのか...」


 連続して放てはしないか。

大技の反動か彼の動きが一瞬、鈍る。


「光が...集まる!ラズさん!!!逃げ...?」


 私は彼に微笑んで、オーナーの砲口の先をまっすぐに見据えた。


「私の首って、とても細いでしょう?でも鉄屑達にへし折れるのかしらね。かの人類の頂点達すら届かなかった私の首に」


 言葉が届いたのか、オーナーの砲撃の収束密度がさらに高まっていく。


「あなたを塵芥に変えた魔皇がそんなに憎いのかしらね。だけどあなたが喰らった獣人達の一種族に古代(ミアの)耳人(なかま)がいたわよね!」


 私は足を踏みしめた。


「そしてあなたの向けた砲口の先、私の後ろにはキキョウがいるのよ!」


「悔しいけれど、頼む...」


 ラングの細々とした声が耳を心地良く撫でる。


「えぇ、先へ進みましょう!」


ーー星

五芒星の一筆書き。


 発動直後、オーナーからより強大な力の光が放たれる。

技の流れで時間を塗り潰した私の目と鼻の先で強き光が渦巻いていた。


 五閃

白亜の剣閃を花のように咲かせた。


 砲口の零距離で力の光がチーズのように裂かれていく。


ーー爆

六芒星の一筆書き。


 六閃

オーナーのその長い砲口と共に分断された力の光をさらに細かく裂いていく。


ーー流

七芒星の一筆書き


 七閃

オーナー本体と分断された力の光をさらに細かく裂いた。


ーー星・爆・流

漆黒にて追撃を行う。


「さよなら、獣人達を蹂躙し尽くした鉄屑」


 天還路と一体になるようにオーナーも笑っていた獣人達も溶けていった。


「すべてが散り散りになっていく...」


 ラングのとても驚いている声が耳に小さく残響のように揺らいでいた。

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