第202階 堕ちて昇って
「あれだけの砲撃でも王都が傷付かない...」
キキョウは呆けて驚いている。
「ネイクリアスにとっても印象深い地なのでしょうね」
だから私は白亜で逸らす事を選択した。
天還路の内部は実在しない。
大きな空洞が突き抜ける、これこそが本質。
力があるモノ達の力と感化、統合して変容していく地。
「だからあなたは天還路に囚われた、鉄屑なのよ」
ーースクラップ
熱を纏いし漆黒の抜身を無数に煌めかせる。
「ギギギギギギギギ!!!!!!!!」
削れゆく、一つの巨大な国家を滅ぼしたモノ。
神々さえ止められなかった狂気が捻れの悲鳴を上げる。
「ギャギャギャギャギャ!!!!!」
鉄の悲鳴は夢幻の王都を揺らしていた。
「王都の、周囲の光景に亀裂が...?」
「ネイクリアスとこの周囲一体は共生関係にあるからよ、だからネイクリアスが大きな傷を受けていることが良くみえる」
私は手を休めなかった。
効果は想像以上だった、更なるスクラップは先程の傷に深く食い込み刻んでいたのだけども。
捻れ刻まれたネイクリアスからは魔力が霧散していった。
まるで豪雨が大地を濡らす様に。
ネイクリアスの砲口に垂れ流された魔力が一瞬で収束した。
次の瞬間、キキョウの目の前で光が弾けた。
「ラズ!?...」
私の白亜に直撃し、空を割いた。
「震えない、怯えない、屈しない....」
私は肩を震わせるキキョウに微笑んだ。
私を「信じて」と。
「ごめん...ラズ...足が震える」
「!!!」
ネイクリアスの2撃目はまたもキキョウを狙った。
キキョウの涙は枯れて尻餅をついた。
ーーエクス・カリバーン
父が得意とする、武力と魔力の合わせ技。
白亜の剣閃と虹色に響く輝きが交叉し、ネイクリアスの鈍色の胴体に突き刺した。
慈悲も感情もない。
あるはずもない。
私もあなたも。
「ラズ......」
ネイクリアスは浮力をなくし、横たわっていた。
次元の狭間の奥底へ繋がる道「天還路」は最も天上に向かう。
ネイクリアスは散り散りに崩れ堕ちて昇っていった。
「う...うわーーーん!!!」
私は白亜と神異特異を光に溶かして仕舞い、泣きじゃくるキキョウをそっと抱きしめていた。