第201階 あの日
「え...」
進んだ先でキキョウが思わず声を上げていた。
私達の目の前に広がったのは
大魔法神聖王国エテメンアンキの
最も華やかで
最も気高い時期の
最も美しい光景を咲かせていた
聖王の時代だった。
人々は笑い、王都を行き交う。
子供は遊びを楽しみ、母親は今日の食事を考え、父親は家族のために仕事をする。
だけど目の前の王都プエルタ・デル・ソルに聖王はいなかった。
私とキキョウは鎮まり返った宮殿ソルの玉座の間に赴いていた。
「ここまでの道筋、全てがおかしいなって私は思うんです」
キキョウは苦笑いを私に向ける、何かもどかしさを伝えようと。
「そう思うかもだけど正常ね、ラズベリーは聖王の実の娘よ。玉座まで通れてもおかしくはないわ」
誰もいない無人の宮殿の不気味な静けさ。
「誰もいないけど、あの日もこうだったわ」
ラズベリーは私に語る、それを私は言葉としてのせた。
「変わったのは、私がお前を壊す手段を得ているってことかしら?」
キキョウが私の殺気にあてられて尻餅をついた。
「ネイクリアス・ネブラ・ネクサス!!」
玉座に形状が異常な対戦車ライフルが一つ置かれていた。
小さく箱が置かれる様な音が玉座の前から微かに響いた。
「え...」
キキョウは思わず目をふせた。
生々しい聖王の首がガラス瓶に入れられていたからだ。
「魔皇ノ繋ガリカ、生キテイル様二見エル活キノイイ人間トイウノハ実二様々ナモノ共ヲ引キ寄セル」
私は白亜を構えた。
キキョウに大丈夫だよってささやくように。
■白亜
分類: 超絶刃
・収束
・人類史の大勝 & 栄光の具現化
・物魔有無混合
判明能力値 極地の凌駕
判明能力値 極地の先
「素晴ラシイ!!!我等ノ叡智ト生キル全テヲ奪イ食ライ尽クシタ魔皇ミラースノ繋ガリヨ!今コソ怨ミヲ晴ラス復讐ノ時!」
不協和音のような不気味な羅列で聖王の首が語る。
ラズベリーは悲しみ、怒りを憎悪に変えていた。
私、アオナはそっとその清き魂を包むように抱き抱えた。
「キキョウ、城に誰もいないのはネイクリアスが全て綺麗に食べてしまったからなのよ」
私の言葉にキキョウが一雫、涙した。
「ラズ...私にできること、教えて!!!!」
そしてキキョウも立ち上がる、怒りを胸に。
もしもの時の私の身代わりとして生まれてきたと貴女は思っていた。
でも父様も私も本当の姉妹だと思っていた。
だから私はあの日、貴女を失いたくなくて先に立ち向かった。
「...アオナちゃん、お願い力を貸してキキョウと2人で笑うんだから」
私は黙って手を重ねた。
「キキョウ!笑って!そして信じて切り抜けられるって!」
「...ラズ、分かったよ。だけど上手く笑えなかったらごめんね!」
刹那、私の振り下ろした白亜がネイクリアスの腹部に深く食い込んでいった。
聖王の首から反応が消える、私を殺す事に全神経を向けたみたいだった。
感情なき殺戮武具、強大な七つの超刃である大運刃の一本は集めて肥大した魔力を自身の運動力に変えていった。
ーー逸曲
砲口から幾度も放たれる様々な種類の収束した魔力の軌道を白亜でねじ曲げていた。
神異特異で威力を低下させながら。