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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
天還路編
201/262

第200階 天還路

 やることを終えてキキョウと合流した私。

ラズベリーとしての過去を一つ乗り越えて気持ちが高まっていた。


「私とラズは世界から離れて行っているみたいだけどよろしいのでしょうか」


 私はキキョウの手を引いてラーとの決戦の地から遠くへ渡っていた。


「えぇ大丈夫よ、ラズはあの世界では生死不明ってことになっている、そう変わったの」


 変えたのよ。


「ちゃんと生きているって証明しても...」


 私はキキョウの優しさに黙って首を振った。


 「ラズベリー王女として、お城のお飾りでは私の目的を達成できない」


「目的、夢があるのですね!?」


 夢。


「そうね!夢があるわ!!超えたい場所、辿り着きたい場所があるの!」


 ハツミとしての父さえ、個として到達できなかったある世界の果てに私は辿り着く。


 個として。


 次元の狭間の最奥に位置し、忘却の終着点へ至る『天還路』の目と鼻の先へとたどり着いた。


 監獄よりも凶悪で魔王よりも暴虐で神々よりも理不尽な力を持つに至り、生まれた世界より死を望まれ滅びを喜ばれた者共の集う場所。


 次元の狭間の最奥端の村。


「名を...奪われし村...」


 キキョウが看板を読んでいた、誰にも伝わらないはずの文字を。

 集然を使いこなせているじゃん!って私は驚いて嬉しくなっていた。


 まぁ、巨神竜の胃袋に入っていた異界の神々もこの先にいるんだろうねぇ。


「あんたら軟弱だな、この先はやめておけ。

そんななりじゃ一捻りだ」


「どこ...から...?」


「あら、デカい以外に取り柄がなかったからなのかしら。入り口で震えて怯えて尻込んでいるのは」


 キキョウが辺りを見渡すが声の主は見当たらない模様。


「上よ。ねぇそうでしょう、雲の巨神さん」


「ったく。忠告してやってんのによ。聞く気を一切持ちやがらねぇ」


 見上げたキキョウが口を押さえて驚いている。


「それになぁ、ここは俺の居場所だよ。死よりも残酷な生き様を見届ける。そんなクソったれみてぇな趣味にはうってつけなんだよ」


 雲でできた白く大きな歯を得意気に見せる。


 「性格最悪だわね。それで挑んだのかしら」


「...テメェの言う通りさ。ぎっくり腰ならずへっぴり腰だよ。だからさ、せめて追い返してんだよ、これ見ろよ」


 雲でできた巨大な手で私とキキョウに木の様な何かを薄く削った板に何か描かれていた。


「エクリプス4...」


「...」


「分かっただろう?おめぇら2人には能力がねぇ、ここにきた連中でもダントツに最下位だ」


「生命力以外0...」


「...」


 私の横でキキョウは悲壮感たっぷりに絶句していた。


「...ふふふふふふふ、だからどうしたって言ってんのよ」


「!!?」


「!?...おいおめぇ!どんな現実が突き付けられているか分かっているのか?」


「えぇ、私はエクリプス5。いわゆるこの地のロスト、能力を全て持たざる者かしら?」


「あぁそうだ、雑魚スキルの一つもねぇ......」


「当然よ、ある訳ないでしょ?分かりきってこの地を踏んだのよ。

 それに到達できるか、できないかにおいてはあてにならないわ。

 それで判断できる最高能力を持てたとして到達できない」


「なぜ、そう断言できる!?」


「神々の夢以上に個として優れる者は未来永劫、決して現れないからよ」


「!!!言い返せねぇ、大勇者キレは全てが違った。次元が違う、格が違う。そんな言葉さえ安かった。極めて高く測定不能だった」


「それと、これはつき返すわ」


「だがなぁ、それとこれとは話が別だぞ!お嬢ちゃん達」


「ラズ...」


 いつになく不安そうなキキョウ。


「もし、天還路が死よりも残酷な世界からの忘却で人の生を阻むとしても私の生を心から望んでくれている仲間がいる」


「世界から恨まれ憎まれた奴等とは一線を画すか...よかろう、目を瞑ろう」


「あら、斬り刻んででも進むつもりだったわ」


「ほぉ?それは命拾いしたなぁ」

 

 雲の巨神は板を砕いて粉にしていた。


「旅路の幸福を祈る」


「えぇ」


 私は微笑みで返した。



「初まっているわ」


「ラズ...何が...?」


「雲の巨神はいくつかの地上を嵐で滅ぼした邪神よ」


「えっ!?それはこちらが命拾いしました...ということでしょうか!」


「まさか、あまりにも弱過ぎて話にならないわ。だって神脳の奥まで寄生され尽くしていたんだもの」


「どういう意味で......」


「来て欲しくないのよ、私にね」


 私はたっぷりの笑みをキキョウと天還路の果てに向けた。

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