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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
大魔法神聖王国エテメンアンキ編
200/262

第199階 特異の超越

 私は堕ちた【宝剣シンギュラリティ】を手に取った。

 人類の技術の果てを象徴する大剣を。


「...その剣を私の手によこすがいい...がふっ...」


「皮肉ね、これは幻の象徴となったわ。技術は人の手によって生み出される崇高な道具の結晶に過ぎなかった。人の夢や願いで形作られたこの地にあるのが一番の理由ね」


 執念で起き上がり立ち上がるラーを私は憐んだ。


「この私が最先端を担い、そして才を司る女神が私に微笑んだことを証明するためにもな!...ぐふっ...」


 足がもつれ、ラーは吸い込まれるように地に叩きつけられていた。


「私は創造主を超えたわ、けれどもそれは創造主は嫌という程に思い知らされていた。自身の能力や才能の限界に」


「!!!?」


「だから世界に耳を傾けた。何があろうともどんな時でも」


「......」


「友の声に」


 私は白亜で【宝剣シンギュラリティ】を撫でていた。

結果、いともたやすく2つに裂かれてしまった。


「何をするかーーー!!小娘えぇぇぇ!!!」


「世界最高峰の才の前には無力のようね」


「なんだその異様に白く眩しく神々しい剣は!!!?」


 ラーにとっては眩し過ぎて直視できていなかった。


「魔皇ミラース・ラーバ・ラーサが目指した唯一の友人達と対等であるための彼の術手(すべて)の結集、いわゆる彼式の全知全能、それは術であり手段のことよ」


「ミラース...懐かしくも、妬ましい名だ」


「神々が定めるすべての才を剥奪された遊戯のための実験被体、けれど全部跳ね返した。だから神々は眠る、私の手の中で」


 私は全神斬離を黙って掲げた。


「...宝剣シンギュラリティを薄い刀が喰らってやがる」


 さらに細く鋭利に全神斬離は機能そのままに神異特異へと成った。


■全神斬離

分類: 凌駕刃

・全知全能消去 & 同値低下

・時空間との同化

判明能力値 特大


■神異特異

分類: 凌駕刃

・全知全能消去 & 同値低下

・時空の狭間との同化

判明能力値 極高


「一体それはなんだ?武具を喰らう武具とは...」


「誰が語るかしら、クスクス」


「!!」


 全神斬離、神異特異のベースは七つの卓越した超刃すなわち大運刃を魔皇ミラースが集めきった事によって生成・進化方法が判明している。

 だからこそ、状況が整えば生み出す事は簡単だったのよ。私はそれをユグドラシル騎士団の亡骸で実行した。

 私は神異特異まで進化したこの刀に種別を与え、名付けるなら凌駕刃とするけどね。

 どこからどうみても異質な進化を遂げている。

 超刃系列が正統な進化を行っていれば超越刃かなぁ。


「...まぁいい、興醒めだ。今日のところは見逃してやろう、小娘よ」


「...さっさと失せろ」


ふふふ


「なんだそれは!?」


 あまりにも状況を把握できていないラーに私は現実を直視させていた。

 私はある者を取り出した。


 ラーは深淵からでも天に届くほどの憤怒を憎悪の形相で表現し、わなわなと震えていた。


「......問おう、糞餓鬼よ。元人間であった彼の名はなんだ」


 ラーの血涙と呼ぶにふさわしい、怒りの涙は赤く滾っているように感じられた。


「わからないのかしら。サー・サマエルだったなにかよ」


 私がかの地より取り出したのは不老不死を施されたサーの首より上。

 生きていた頃から腐っていて触れたくないから薄い魔力の瓶に詰めてある。


「壊れて、イカれて、狂ってしまった。それだけよ。ねぇ、サーの実のお父様」


「この!!!!!人でなし!ろくでなし!鬼!悪魔があぁぁぁ!!!」


「そう、実の父にそんな風に投げかけられるなんてとっても虚構な人生ね、サー。なんて愚かで可哀想なの」


「貴様ぁぁぁぁ!!!!言葉を理解出来んのか!!!?」


「サーを産み生かした大罪を償ってもらうわ!!!」


「私が子を産み育み生かす事が罪だと!!!?」


「えぇそうよ。神も七賢人も人の世も生かした。けれども魔皇と私は正しく世界が在るために清く高潔な場所に彼を置いた、その結果が今この瞬間!」


「話にならん......」


「さらに私はあなたの人生を全力で全否定する!!!」


「...失礼極まりないぞ!!小娘えぇぇぇぇぇ!お前は私を本気で怒らした!!!見逃してやると情けを掛けたのにだ!!!私の温情を無碍にしたその罪その首で償って貰おう!!!!」


『深淵のクロキモノよ』


「小娘を喰い殺せ!!!!」


 周囲は静まり返った。

魔力の流れも空気の微かな音さえも止んで。

 だけどラーの呼びかけを世界が無視して何も起こらなかっただけのこと、それも当然。

それに私は彼の切り札が何かを理解してしまっていた。


「......!!!?」


「黒き天星竜は魔皇の友となっているのよ、漆黒!!」


■漆黒

分類: 凌駕刃

・統合

・人類史の敗北 & 没落の反転

・森羅万象の物質化

判明能力値 極地の超越


「私の声は届いておられますか?今こそ西の大帝国の罪なき命を奪ったサーの実父に罪とは何かを実験できるこの時が来たのです」


 時空も狭間も真理も不気味に割れていく。


「黒き天星龍と、かの七賢人に呼称されしカゲードよ」


 全てが交わり全てを包む深淵の異質。


「恐悦至極!!!!」


 カゲードは私を見ていた。


「笑止千万...我が崇高な名を呼ぶではない、実に穢らわしい」


 カゲードはラーを見ていた。



「流石は我が唯一の人の友、斗羅の残した大火。実に天晴れだ!!だがしかし!何故、我を呼び覚まし呼び起こしたのだ。深淵さえ照らし、天さえ穿つ力を秘める敬愛たる少女よ」


「私は女の子だしね。それに大自然の超越さえ凌駕する罪なき力で灰にして欲しいの」


「任されよう」


「殺しちゃダメよ。時空間の影響とか、運命盤の計算とか、真理改変による烏合の衆の相手とかも面倒だから。人の死ってそういうもん」


「素晴らしき!!!そして余りにも片腹痛いわ!」


 まるで巨大な黒い竜の様なカゲードは、巨大口を天に向けて大きく開いて腹を抱えて笑っていた。

 そしてラーはカゲードと刹那に包まれた一億年を過ごして廃人となった。

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