第194階 魂の願い
「実に懐かしいわ」
何度か触れた記憶。
それでも込み上げてくる思いに魂が揺さぶられている。
「ラズ...沢山の方達がすでに亡くなられていますね」
「確かにあの時の世界は滅びに向かって突き進んでいたわ、それでも生きようと英雄を生み出していた」
キキョウの心へ私は届けたかった。
希望があること、暗闇は晴れること、世界は在り続けること。
「だから、彼等は出会ったのですか?」
「えぇ、そう私達のように!」
伝え方なんてはっきりとは分からない。
けれど言葉のもどかしさや煩わしさはきっと超えていく。
「そしたら私達も何かを成すのでしょうか」
「できると信じようと思う」
「信じる、でしょうか」
ーー時計針止
「!!!!?」
「使えた本人が一番、驚くなんてね」
焼売の皮で包み込むように次元の海の時の流れが失われていた。
「これが魔力密度が濃い次元に身を寄せていることなのでしょうか」
「そうよ、出来ると信じる。それだけで集められる人体構造を生成されているからよ」
「人体構造...!?」
キキョウから表情が消えていく
「何を驚くのかしらね、魔皇が唯一無二の親友だと信じていた8人は医学にも精通していたわ。だから転生する運命が覆って最終的には元の世界に帰っていったのよ」
「転生が覆る、それは死んだ人間が生き返るってこと...!!!?」
「実際には死を彷徨っていて例えば第七世界いう脳死程度では蘇えらせるのは容易だったのよ」
「そんな事が...なんて凄いご友人達なのでしょうか」
「彼等は転生者の失敗作と名付けられていた、真の彼等自身に」
「それはどういう意味で...」
あまりにも呆けた顔するもので素敵な美人が台無しだわ。
「転生って大抵は弱い魂に肉付けして、平たくいえば冥府のボランティア集団にちゃんと弱い魂が成仏してもらうように仕事してもらうのよ」
「...なんだかとっても死にたくない...」
ちょっとやそっとじゃ死なないけどキキョウに激しく同意するわ。
「転生元が人類の頂点に振り切れた彼等だったから冥府とか黄泉、天国のような世界の基準値におさまった結果弱体化したのよ」
「強かったのに弱体化...なんだか可哀想です」
「その辺は気にしなくていいわ。彼等は弱体化を当然のごとく予測していたし、クローン技術の応用と発展を繰り返した結果、特製クローンが身代わりに転生して逃れているから」
「それもなんて高等テクニックなのかしら!」
ーー精線分魂
全ての命が持つ魂の流れをもう一つ創ること。
もっとも本来の魂の流れから少し離れた場所にあることの影響や前述を加味して同質な影響を受ける人体の生成など容易くできることではないわ、通常はね。
「白いアオナ!」
「これが元になるわ、やってみて」
「え... 精線分魂!」
キキョウはとっても驚いていた。
「白く美しいキキョウがいるわ」
「本当に白い私...!」
「もはや私達の扱う魔法に禁忌なんてないのよ、全知全能さえ容易く塗り潰せる心からの願いなのだから」