第１８階 王との対決
私達５人は永遠に続くかと思う様な
永い永い背中に身を委ねていた
空を切り裂き地を見下ろし
まるで時の海に浮いているかの様に
心地が良かった
龍王"アルテン"さんの背中は
とてもとても広く大きく頼もしく
とてつもなく優雅だった
「見えたぞ、アオナよ...
あの遥かなる断崖絶壁の向こうが
星一族の王の居城だ
心して行くが良い
朗報を心待ちにしておる」
そこにあったのは
遥か天を貫く天然の岩肌
最強種族たる"星一族"は
生まれた時から時空を操る為
天然の絶壁など
まるで意味をなさないと
マテハがそう耳打ちしてきた
「ねぇ貴女達？」
４人の少女達は俯いていた顔を
少しだけ上げた
「「「「.....」」」」
「私に全て任せなさい！！」
５人はコクっと頷いた
「ありがとう、アルテンさん
星と龍は目が合えば拳で
語り合うそうね！」
アルテンさんは苦笑していた
「ここまででいいわ」
と言って
私は時空に穴を開けた
「さぁ進入するわよ！」
私達はアルテンさんの背を降り
時空の穴を使って星一族領土に潜入した
その直後
「へぇ...こんな所に
良い女がいるぜ！！！」
私は別世界に引き込まれていた
この地に特に強い力は３つ
１つが星の王
そして今の声の主
そして星の地の最も
深淵に位置する場所にいる...
「王の間に向かう...
こいつを殺してね」
私は笑顔で５人に微笑み
彼の世界に吸い込まれた
「てめぇは勇ましいな！！」
私を背後から抱き締めようと
両腕が忍び寄ってきた
「不粋ね、不服だわ！！」
私は身体を回転させて
右の拳を彼の顔面に叩き込んだ
「グブッ！！」
ごはああぁぁぁ
身震いしている様な
悶えをあげながら
彼は時空に消えていった
私は５人の元へと時空を突き破った
ガガガガガ....
「全くとんでもない
お嬢様達だ」
私が強い力の元に辿り着いた時
５人も一緒にいた
緊張感と覚悟を決める様な顔をして
「なんて顔をしているの
か..し...ら？」
目を細くしてこちらを伺う様な
目をしている４人の姉妹達
「全...天ね、お久しぶりですね
父が大変御世話になりました」
そして私は深々とお辞儀をした
私は父の名を語って脅しを計った
全天はまるで姿が変わっていない
あの頃より明らかに
強くなったと思うけど
マスカリア達の背後に強者の群れ
５人を見る目は殺意で満ち満ちていた
「最早臆さずとは
どれだけの手練れかと思えば
三頂マテハとその一行と
大分失礼な娘だな」
男は笑った
威風堂々と余裕を崩さない
その立ち振る舞いは
指揮を上げるには
最高の状況だと感じていた
「三頂にも臆さずね
雑兵が私達に勝てると..でも？」
マスカリアがフルフルと
首を振っていた
多分...５人でかかっても
退けられないか...な？
「クラーガ？何処へ
ふらついていた？」
私はクラーガと呼ばれた
彼と目が合っていた
「その女..デタラメ強ぇから
親父気をつけろ」
「！！」
全天は驚いていた
「もしや..キレ・ルイデの？」
私を捉えて離さない
その強力な眼力
「私はアカナ・エカルラートの妹の
アオナ・エカルラート...
だけども"５人"に手を出すなら
神々の夢である我が父
キレ・ルイデの娘
ハツミリア・ルイデとして
手を下す！！！」
私は素手で構えた
「舐めるなあぁぁぁぁ！！！！」
全天の咆哮が響く
「...どうしたって言うんだよ
おまえらなぁ..?
最強の種族たる星一族の戦士かよ」
クラーガの顔が真っ青だった
「動けません」
「王子...申し訳ない..です」
「陛下！！処罰は後で受けます」
「...懐かしい名だ
ハツミリア？
ハツミリは知っておろう..
この場に何しに来た？」
全天は全てを悟っていた
「神々を滅ぼす、協力して欲しい」
私の言葉に全天は
「フハハハハハハッ
片腹痛いわ！
エンシェントルーラエルフよ！
盾となり矛となる
我が軍に協力せよと？
出直して来い！！！」
全天の目は侮蔑を含んでいた
「あははは！
私の他の協力者と共に
この"ミリカンテア"を守護して欲しいの！
誰も彼等を私の手足にしたいなんて
言っていない！！
0.00000000001％も
奴等から奪われたくないのよ
分かる？
これは神々への大義名分のある
戦いではなくて
復讐による神々の虐殺よ
私が神々の世界で
神々を甚振っている時に
自国を気にしたくないの
それだけよ
神々に怨念でもあるなら
一緒について来れるように手配するわ」
私は不敵に笑った
「生意気な！...」
だが全天は笑っていた
「どうだ？デタラメだろ？
この女...でも嘘吐いてる様に
思えねぇ」
クラーガは全天に微笑みかけた
「アオナ・エカルラートの
方が良いか？」
全天は優しく微笑んでいた
「えぇそうね、全天さん」
全天さんは私に一度目をやり....
「お前らやはり動けぬか？」
「陛下なにとぞ御許しを」
「申し訳ございません..」
「必ずや他の事で報います」
そうかと一言呟いて全天さんは
「魔皇よ、貴方様の忘れ物が
来たぞ...それに彼奴の娘ときた
面白いなぁ...アルテン
魔皇が到達出来なかった場所に
我等は行くのだな？」
全天さんは私達の遥か後方にいた
「はぁ〜いつもいつも
ばればれですねぇ
流石です、我が友にして
最強の好敵手よ」
ぽりぽりと頭をバツが悪そうに
かいているアルテンさんがそこにいた
「何か収拾がつかなければ
助けてくださるご予定でしたのね」
アルテンさんは苦笑していた
「それにしてもミリカンテアの
三頂が一堂に会すなんて凄いですね！」
私は皆に笑いかけた
「ハツミをほおっておけない」
マテハが苦笑していた
「それは同感だな」
アルテンさんも
「まぁ、なんだって良いだろう
しかし...そろそろ解いて
やってくれぬか？
会話の席を設けよう
そこで全ての決着を
付けようではないか？
なぁ？貴公もどうだアルテン？」
全天さんがなんだか楽しそうだった
「じゃあ遠慮無く...」
全天の目が邪悪にキラリと光った
「よし決まった！！！
おい！！！お前ら！！！
アルテンと共に席を用意しろ！！」
「「「イエッサー！陛下！！！」」」
なんで俺まで〜という
アルテンさんの涙声は
全天軍の歩む音と共に消えていった
「今宵は良き席としようぞ
アオナ・エカルラートよ」
全天さんは燃えていた
「えぇ、望む所よ？」
私も燃えていた
