第183界(階) 超刃の噂
「アルテン、それは何処までが本当なのかい?」
アルテンが巷で噂の嗤う武具の話題を持ってきていた。
「それって命を弄んで嘲笑う呪われた武具の事かしらね...」
ルテミスさんの溜息は深い。
「武具...」
全く興味を示さないサクラハとは対象的にモモハが反応している。
「子供を助けた?」
アルテンが言うには呪いの武具の猛攻から気絶していた子供だけを助けたというのだ。
「それで子供は?」
「加護の様法をかけておいたから助けが来るはずだ」
「その武具を集めるか」
「それは...ヤバい代物では...?」
分厚い本に目を通しているルテミスさんの斜め前に座って食事をしているリヴァンの声が何故か震えていた。
だが状況はすぐに理解できた、空気が震えるほどの怒気が放たれていれば。
「...この一件に関わらない方が良いわ」
ルテミスさんの口から発せられる鈍い音が少しずつ響く様に耳を撫でる。
「聞いていられないな、神が絡んでいるなら尚更だ」
「危険よ...」
拳を強く握り締めるルテミスさん。
「モモハの魔力にざわつきがある、この噂を聞き始めてからだ」
「魔力...?モモハちゃんからは感じられないわ、いたって普通の人の娘よ」
ルテミスさんが真顔になっていた。
「それが様法の限界だよ」
「!!!?...ちょっと待ってミラ君は使えないでしょ!」
「アルテンは使える、僕が持つ力に何処まで通用するか見せても良い...」
アルテンと戦う気は全くなかったけれど。
「もはや様法だけでは届きませんな、残念ながら新たな力の前には」
「ク...アルテン様...分かりました。目を瞑ります...。お願いだから無事でいて」
「神々を標的にしている以上どうやっても危険を背負う、だけど善処するよ」
僕は僕を大切に想ってくれるルテミスさんに笑顔で応えた。