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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
大魔法神聖王国エテメンアンキ編
182/263

第181界(階) 導き

スキルを作る実験の為に次元迷宮の“小鬼(ゴブリン)”を狩って狩って狩りまくっていた。

けれど魔物の死に敏感な者達は気付いた。

世界の常識が大きく歪み一つの種族が次の歴史を担えない可能性が大きくなっていく現実を。


けれど“小鬼(ゴブリン)”を殺し尽くそうとも本当の幸せな未来へのほんの些細な犠牲に過ぎない。

たとえ何億人の悪が散ろうとも。


そしてたった今。

呼ばれた様な気がした。

それは宿命と運命が引き起こした何かの奇跡の様でもあった。


「一人で相対するのも良いもんだな」


この感覚は懐かしい。

8人の親友達を感じさせる者であり先刻出会ったルヴァイとソフィと同格の存在に。


別の存在として、こぽ。

こぽ。

と水のステルラことメルクリウスはその場所に佇んでいた。

ステルラの形状と名はアルテンから学習済みだ。


「キノコ?、クラゲだったか」


マグマから泡が吹き出すように不規則に傘の部分を自由に動かす様子はまるで奇怪な旋律の様でもあった。


そしてこの場に導いた者はステルラを凌駕しているいう事も実感していた。


魔力の操りづらさは感じてはいた。

だけどその時すでに戦いは始まっていたのだ。

同時に自身の身体の違和感を魔力に変換し違和感を感じない身体に創り変えて修復していった。

いわゆる再生だ。


いつの日か相対すると想定はしていた。

強者が持つ能力の中で人体の水を操る能力と。

まさか本当に可能な者がいるとは思わなかったが。

人体は至極複雑で何百億通りとそれこそ生まれた人類はすべて構造が少しずつ違うのだ。


自身は愚か他者を思うままに、それもほぼ勘付かせずに意のままに操作するのはたとえ神の領域に到達した者でも不可能だ。

いや、正しくは神の領域に到達した程度で可能足らしめる事ではない。

それに僕は現状、魔に長けている。

他の魔の介入があれば弾き出せるのだ。

自然に異なる魔力を浸透させてここまで内部に自身の術を導いた。

相手に賞賛を送りたい。


「ほぉ、気付くのか。私の魔力に。

ただの大量殺人鬼では無さそうだ、いやむしろ敬意に似た恐れすら抱く」


無機質、だけど動きに温かみが感じられるより人に近付けられた超高度な機械人形がそこにはいた。

まるで亀裂の入った水晶の様な銀髪が煌めき絶対的な存在感に拍車をかけていた。


ーー体液水操

「その力、お前だけが出来る訳じゃあ無いぜ。逆探知しお前を構成する物質を測らせて貰った!気分はどうだ?」


同じ事を相手にしたのだ。


彼は押し黙る。

そして小さく微笑みと白く輝く無機質な歯を見せた。


「実に愉快だな、同格以上で戦える相手など7人しかおらぬと思っていたぞ...。

いや、1人だけ可能性としては小さくも残っていたか」


互いに笑みを交わしていた。

だけど互いに進むべき道は真反対だ。

僕は悪を殺し尽くさねばならない。

それは僕による僕の為の幸福の礎であり土台だ。

どんな些細な可能性さえも壊す。

この世に完全など無いからだ。

けれども完全に近付ける事は出来る。

僕は僕を生かす為に悪の命を喰らうと決めた。


「大願成就の為の小さな犠牲となって貰う...

もし悪の同胞ならば」


ーー純白魔創

ーー昇華剣化


「なんの為に数多の霊を散らした!!!」


物質と物質が互いを主張するかの様に空気を引き裂く音を鳴らし、“純白の魔法(ゲイスダリゲード)”が彼の硬化させた白く細い腕と鍔迫り合いになる。


「へぇ、口を動かしている間に腕1本落とそうと思ったのになぁ」


少し残念だった。


けれど鍔迫り合いの中でも何も出来ない訳ではまるで無い。

彼は手刀に高等な何かを纏わせて、剣と化した“純白の魔法(ゲイスダリゲード)”と同等の力に辿り着いていた様だった。

だけど“純白の魔法(ゲイスダリゲード)”は創造途中の未完成品だ。

更に創造の力を与えてより強力に成長させ続けるなど容易い。

ほら、みろ、彼の手刀がさび付く様に変色している。


「!!!?」


無機質だが驚いた様な顔が分かるほど変化し後ずさった。


すぐさまに同じだけの距離を取った。

“純白の魔法(ゲイスダリゲード)”の成長は緩めずにだ。


「剣を戦いの最中に強化していくとは恐れいる」


「...斬るだけの何が楽しいのか、時間は創れるしね」


ーー時流昇華

時の技法を用いて強化を加速していた。

加速と停止を交互に使い、“純白の魔法(ゲイスダリゲード)”のありあらゆる効力を膨れ上がらせていた。


満ちていく強度と鋭さに密度を感じながら確信を得ていた。次は腕を落とせると。

勢いよく彼に斬りかかったと同時に小さな違和感に気付く。


“純白の魔法(ゲイスダリゲード)”の切っ先が彼の皮膚に薄く触れる。


そこでようやく理解出来た。

彼が本当は常に何をしていたのか。


「普通じゃないね」


彼は押し黙った。


「お互い様だろ...」


現実には彼を斬る現実に近付く為に必要な物理法則がある。

その抵抗値を格段に上げて彼は防御していたのだ。

分かりやすいものでいえば風の抵抗の力を上げていた。

だから僕自身の身体に通常の人体では破損し崩壊する程の暴風と同等の力が向けられていた。

他には重力も強化されており足取りがなんだか重い様にも感じとられていた。

けれど普段から呼吸をする様に僕に行使している魔法が総てをほぼ無い様に扱っていたのだ、単純にいうと無力化していた事になる。


だからこそ彼の能力の根底が何かに気付けたのだ。

水を操る能力でも風を操る能力でも重力を操る能力でも無い。

これらでは単純に手刀を説明出来ない。


だけど...。


「!!!!!」


“純白の魔法(ゲイスダリゲード)”の刃は彼にしっかりと届き片腕を肩から斬り裂いていた。


彼に誤算があるとしたら僕の創造する魔法達の自由性に対抗出来なかった。

その一点だろう。


「ありとあらゆる普通を異常に変換出来る...そんな感じか?」


彼は称えるように微笑む。


「transzendieren」


そう呟いた。

その懐かしくもあたたかい透き通る様な綺麗な声で。


「人間達が見出した全ての技術に技の数々。

それらはこの大き過ぎて広過ぎるこの世界全体に比べれば蟻が立った。

そのぐらいの事なんだよ、分かるだろ!」


ーー剣閃一刀


「人類が扱う言葉で説明出来る様な魔術や技程度で勝てる訳がない。

勝利の可能性を見出したのは完成された人間達の由緒正しき歴史の産物じゃあない」


僕の最強魔法“純白の魔法(ゲイスダリゲード)”は彼を貫いていた。


「傲慢だな...人を侮るとは」


「...勘違いするなよ?

ただ地球よりも宇宙の方が広いとそう言っただけだ。

本当に侮り自身の力に驕っているならこの剣は生まれやしないさ。

何故なら僕より絶対強者たる8人は揃いも揃って化け物や神々が裸足で逃げ出すが正真正銘の人間だぜ?

彼等と過ごした時と負け続けた僕の人生の歴史がこの剣を未だに半端物の未完成品足らしめている。

そう地獄の底よりも深い果ての果てから警告音を世界崩壊の衝撃音よりも豪快に鳴らし続けている。

どれだけの力を手に入れ注ごうとも全力を止める気など毛頭ない。

更なる高みを目指して渇望するだけだ。

何せ僕は彼等に勝てないと最も欲しい夢を諦め無ければならないのでね。

それだけは死ぬよりごめんだから」


彼は笑う。

彼の力を刺した剣に写していた。

少しでも糧にし、更なる強さの為に。


「まるで、誰かに似ている。

もしかするともしかしたら。

もし可能性があるとするならば。

共に時を過ごした彼だけか......

水のステルラ、すまない。

一時この場を引く...」


そして彼はこの場から消えた。


音が響く気泡が弾ける音が。

...水のステルラことメルクリウスは震えている様だった。


「もう必要じゃないんだ。

君ぐらいなら創れるしね。

例え君が人の世界で尊くて奇跡の様な力を秘めていても........証明してやるよ。

そして教えてやる...!綺麗過ぎる君達の光が

どれだけ僕に影を落としのたか。

人世界の敗北を持ってして君達に無償で溢れんばかりの愛を注ぎ続ける人の世界に。

そして人の世界の小ささを刻み込むがいいさ。

偉大な力の創造を持ってしてね。

その時にやっと同じ場所に立てる。

友人達と。


水のステルラことメルクリウスはただただ静かに佇んでいた。

その淡く強い光を放ちながら彼を自身の力では最早止める事は出来ないと知って。

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