第171界(階) 冥のステルラ
ーー思年遡巡
ーー時空点繋
アルテンから送られてきた思念の場所を逆算して、僕は全天に乗りその場所に瞬間的に移動した。
「おぉ、大変な相手だったが何とも無いのか?」
「一応、撒いてきたけど急ぎたい」
僕の気持ちを悟ってか早急にアルテンはある一点に目を向けた。
そこにいたのは、まるで硝子に封印された様に固まって静止している氷の世界の住人だった。
「ペンギン?」
「...うむ、冥のステルラ”プルートー“だ」
瞼を閉じて眠っている様にも見えるが。
アルテンは手の平をかざして何やら唱え始めた。するとどうだろう、目をパチクリさせながら目の前の周囲の硝子が溶けてプルートーは驚いた様に僕等を見回していた。
周囲のガラスの様なものが割れ、声が頭の中に染み渡る。
「..................」
筈だったが喋らない、プルートー。
「僕はお前を攫いに来た!覚悟しろ!!」
そう言って飛び出そうとすると僕の持っていた。土のステルラと交互に光り始めた、まるで会話をする様に。そして2つの光は共鳴して響き渡っていた。
「竜族の死、誠に遺憾。人の業とも言える神々の所業に為すすべなきこの愚かさに罪を与えん」
「罪とかいいから、来ないか?許されたいなら尚の事来て欲しい」
プルートーは僕に激しい敵意の瞳を躊躇なく向けてくる。
「二度言わぬ、人の子よ」
「僕は神々よりすげぇ奴等を知っている!だから来い」
「人の子でありながら神々を愚弄するのか!なんたる災い!」
大地を震わせる勢いで周囲に力が集まるプルートーさん、激おこみたいだ。
「qwertyuiopasdfghjklzxcvbnm1234567890-/:;()¥&@“.,?!’」
「試すか...?」
僕も真似して無詠唱で周囲の力を魔力に変換して練ってみた。それに対してプルートーさんは早口で詠唱していた。
「!!?」
そう僕の無詠唱を見て転げたのだ。コロコロと転がるその様はなんだか可愛い。
僕は行き場を失い破裂しそうなプルートーさんの魔力を自身の魔力で包みながら、同じ力の大きさの反魔力をぶつけ相殺させてかき消した。
「何という...事だ!神々に近しき私がこうも容易く!!!!!!」
驚いた様に大きな瞳を見開くプルートーさん。
「かの神々の境地、“賢者の石”の如き心か。泥を金に変えられるのか、ならばこの憂いなる世も変えられるのか」
「何を言っているのかはさっぱりだがな!我が創造主は無から我を生み出した。それがとんでもなく凄いって事なのは我でも理解出来るぞ」
大きく鼻を鳴らす全天。
「共に世を駆け抜けないか?もしかしたら至れるかもしれぬぞ。未踏の地へ」
アルテンの言葉にプルートーさんは不敵な笑みを浮かべて。
「サートゥルヌスよ。大穴狙いのギャンブルでも無さそうだな」
「その通りよプルートー。時として生まれる“勇敢なる者”それとは更に似て非なる者。悠久の時の流れの一瞬の灯火に
目を覚まさした..................
新しい行く末を..................
見てみないか?..................
違った場所から..................」
2つのステルラは光り輝き共鳴し合っていた
まるで呼吸を合わせるかの様に。