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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
大魔法神聖王国エテメンアンキ編
170/263

第169界(階) 土のステルラ

僕等は結局仲間にして欲しいと頼んで来たアルテンを快く迎え入れ、とある場所を目指していた。

僕達、魔王軍(仮)にとって初めての大冒険だ。

ーー時空適応

そんな僕はアルテンの背に乗って優雅な時空の旅を楽しんでいた。

復活させる際に時空系魔法が行使出来る様な身体要素を加えたのだ。

こんなにも簡単に時空系魔法の行使力を与えられるなんて今だに驚く日々だった。元生きていた世界的に表現すると神体に時空系魔法特有の回路を埋め込んだという事になるのだろうか。

全天はそもそも埋め込んでいるので同じ要領で並行して飛翔している。

単純にアルテンの背中の方がシルクの高級ベッドの様な乗り心地で快適なのだ。

戦闘特化させた全天の背中は荒々しく人を乗せて運ぶという事に関しては盲点だった、今後改良が必要だろう。


「それで、ステルラだっけ?」


並行して飛んでいる全天が僕の言葉に反応する様にこちらを覗き見してくる。


「おい、本当にあるのだろうな?」


疑わしいのか、目を細くしてアルテンに視線を向け直す全天。


「舐めて貰っては困るぞ...?」


負けじとアルテンも睨み返している。


「まぁいいや。僕等の強さを試す意味でも、

この旅を成功させよう!」


「「おう!!!」」


時流と現の境界でもある時空の皮膜から現存する大地を眼下に収めながら僕は、驚きの声を思わず飛び出させそうになった。その荒れ果て具合に。


「とても住めないね」


「いや、住んでいる。生命力の高い種族がな」


「マジか...」


僕はアルテンの言葉に只々驚かされていた。

いつ終わるとも知れない黒く塗り潰された大地に異様な形の岩石。まるで地獄に墓場が立ち並ぶ様に感じられたからだ。


「神の臭いがせんな」


全天が不意に呟く。


「だからか!」


そうか、そう見せているのか。荒廃している様に見せる広範囲魔法を行使出来るような賢い種族がいるんだろうなと、何かを隠す為に。

違和感を微細に僕自身が感じ取っていたからこの結論に至っていた。

そしてアルテンが指定する場所に僕等は降りた。


「死の臭いが濃い」


大地を直で踏みしめて改めて感じた事だ。まるで地の底から空まで突き抜ける程の死の静寂そして無音の歎“(なげ)”き。


「ステルラには死が関連する。そういった研究が成されていた、神界ではな。だが何者でも解き明かせない。遥か未来を生きる知恵ある人々でも」


そう言う事を言われて“はい、そうです”とは素直に納得しない、この世界の僕は。


僕等は内部に入っていった。単に洞窟や入口がある訳では無い。その地に根ざす概念が細分化されたそういう道を通る。

ーー時空穴路

同一次元に存在する平行世界の道無き道を魔法で創って通り抜けている。

感覚でいえば複数の立体的な絵を並べてその間に道を作って進むイメージだ。ここでいう絵というのは統一された事象が整然と並べられているそのものを表している。いわゆる時空の影響を全く受けない時空の狭間、もしくは無の世界と剣と魔法の世界で呼ばれ、人体はおろか魔術的な平衡感覚さえ失われている“最期”と位置付けられる場所を通り抜ける為の近道として利用している。

そしてある点を目指していた。その点を人の用いる言葉で表現するなら“輝いている”と訳すのが相応しいと感じられた。

“点(輝いている)”に近付けば近付く程に強く感じる魔力量からしても、僕等の今回の目的であるのは明白だった。


ーー生物視覚

ーー人類視覚

生物に与えられた視覚の最大領域から人類に与えられた視覚の最大機能で認識出来る次元にまで僕等は近付いていた、そして遂に僕自身の目で岐神の頂点の一角の姿形を捉える事が出来たのだ。

“サートゥルヌス”と神界で名付けられた、土のステルラを。


「汝ら、なにゆえにこの地を訪れた?」


石という概念で出来た台座に鎮座する丸みを帯びた愛くるしい白き蛇。岐神の最高神の一柱に位置し、土のステルラである事を物語る様に甚大な魔力を内包していた。神体内での強大な魔力の奔流は僕の皮膚の表面を風が叩く様に伝わって来ていた。いわゆるPressureである。

サートゥルヌスは音も無く理解を僕等の内部に直に言葉を与えてくる。まるで超科学の念話の様だ。その魔法の効力か脳の細部まで染み渡る様にサートゥルヌスの“神々の囁き”が理解出来ていた。


「力を貸して欲しい。私は神々に危機感をおぼえた我が眷属の死によって」


サートゥルヌスは驚いた表情でアルテンを興味深そうに凝視した。


「七大神王の一柱か、竜達の怨嗟が嘆き泣いておるぞ」


アルテンはそのまま押し黙っていた。

責任を感じているのだろうか。


「僕が泣かせた奴をどうにかしてやる」


サートゥルヌスは苦笑する。


「人の子が全ての神々に逆らうというのか?哀れな」


「どっちが哀れだ?泣いてる声が聞こえているのに力あるお前は偉そうに座っているだけか?“神々の黄昏(ラグナロク)”ぐらい創ってやるさ」


魔力を根底とした張り詰めた空気が纏わりつく。明らかに敵意の魔力が注がれてくる。

ーー魔流無効

けれど今の僕に効力は及ばない。同じ程度の力の逆意の魔力で中和して無力化しているからだ。


「それにお前ら神々からは、絶望は一切感じない」


この程度の力の差では絶望とはいわない。それだけ今の僕には力が溢れ満ちている。

0に等しきかつての僕と人類の最大値である100%を遥かに超えていても1000%程度では飽き足る筈がない彼等8人と相対すると考えれば希望に満ち溢れているに等しい状況だった。

そして僕は自身の魔法で応戦するつもりで手の平を前に出した、それに合わせて全天が前に出る。


「やはり我が創造主は最高だ!!!!“神”ぐらい喰い殺してやらぁ!」


全天から迸る時空の揺れ。力を解き放つ、僕の最高の仲間にして最高の友達の1人。

そんな全天の圧はサートゥルヌスが放っていた憤怒の波動を押し返していた。


「神を踏み越えるのか...?人の子の創りしモノが...」


「どうする?」


岐神の最高神の威圧を跳ね返す程の覇気を放ちながら全天はサートゥルヌスに問いていた。


「拳を交えるもまた一興ぞ」


全天は更に続け、自身の拳を強く握り締める。それをサートゥルヌスに向かって強く突き出した。

サートゥルヌスが気圧されほんの少し後退するのが僕には分かった。


「...問おう人の子よ。お前は竜族の悲しみを拭えるか!?そして人々の主たる神々に刃を突き立てられるのか?」


「仲間になれば力を貸そう。仲間を悲しませるなら刃を突き付けよう。それが僕の“今”の幸せだ」


僕とサートゥルヌスは睨み合う様に見つめ合った。強い意志と強い意志、譲れない守るべき者と譲れない守るべき者、互いに一本筋の通った互いの存在価値が刀となり水面下で打ち合う様に魔力が絡み合う。



「...どちらに転んでも......選べる選択肢は...そう多くはないか」


サートゥルヌスは満足した様に笑みを浮かべて小さな輝く石になった。

そして僕の目の前に瞬間的に移動したかの様に現れる。これは時空系魔法の一種だろう。迷わず僕はそれを握った。


「土のステルラ...か」


アルテンは向こうを向いて小さく呟いていた。そしてこう続ける。


「ミラース、共に行こう。もう一度言わせてくれ」


覚悟を決めた龍の眼差しが僕を突き抜ける。それは激しく、そして穏やかなものだった。


「勿論」と僕は心の底からそう思えた言葉を当然の様に仲間に告げた。

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