第168界(階) 白銀の友達
「なんとも、動かしやすい」
白銀の身体となった元ククハは自身の身体を確かめる様に自由に動かしていた。
そして僕自身、ルテミス先生がククハと呼んでいたのを思い出した。その元ククハは自身の姿に驚いていた。
「ククハは僕の仲間だ、その為に命を繋いだ。仲間である事を無理強いするつもりは無いが困っていたら助ける」
「良いぞ、一度死んだ身だ。それにもう神々の世界はうんざりだ」
「そうか、なら楽しもうぜ!少しは気持ちが分かるから」
「今は染みる」
そうやって白銀に染まった元灰色の東洋龍はどこか喜んでいた。
「新参者は我の部下で良いな?」
全天がやってきて開口この一言だ。どこで憶えた。その古代文明の年功序列。
「全天つまらなくするものは創って欲しくない」
全天は僕の言葉に驚いていた。
「上下を誰かに決められるのは楽しくないし。
自分で上と下を決めて楽しめるなら良いけれど」
「御意」
僕の少ない人生経験で得た確かな知識だった。僕は彼等8人と同列の友達でいたかったが周囲はそれを決して許しはしなかった。同じでは無かった、何もかもが。
人の世界で全ての価値観は僕と彼等に深い溝を作った。けれど僕と彼等の友情に溝は一切無かった。
そう少なくとも僕は、僕だけでもそう思っている。
「さて生まれ変わったし名前を決めよう!
まぁ本当の名があるし。あだ名みたいなものだ」
目をパチクリさせる白銀の東洋龍。
「ほぉ、一応聞いてみようか」
元ククハは何処か嬉しげだった。
「あぁ、そうだな“アルテン”なんてどうだ?
直感だから特に意味はないけどね」
「意味無き名前か、面白い。“この名”の本当の意味をこれから探求するのも良いかもしれないな」
「よし決めた我のライバルだ!アルテン!!!お前が共にいかぬとも我々は、なんだ?強い絆か?うむ分からん!けれどそういったもので結ばれているという意味だ」
全天の真っ直ぐな熱意にアルテンは苦笑していた。
「あぁ、どうやら我々は強い縁で結ばれている様だな。全天よ。その申し出受けよう。勝ちは譲らぬぞ!!!」
元龍神。その強さに相応しい魔力と威圧感は魔界全土を震わせた。
「面白い!そうでなくてはな!!!」
全天とアルテンは互いを至極思いやる様に最上の笑みで承認し合っていた。