第165界(階) 魔王道
「うぼぁーーーー!!!」
とある日、僕の魔法の直撃を受けて絶叫するリヴァン。
瀕死の状態で彼は何かを差し出してきた。“免許皆伝”とそこには書いてあった。
「今日より魔王を名乗るが良い。魔王ミラースよ!一つ弱点があるとするなら武器術だ。健闘を祈る。そして魔を極めよ !」
死に掛けのリヴァンが死んだふりをする。僕は詠唱を開始した。
「神の如き者。抜かれた剣の。東の火を」
詠唱している、僕の天高く掲げた右手の平に。まるで火の精霊達がキスをする様に大量の魔力が高速で火属性に変換されていく。
「ミカエ......」
悪寒を感じたリヴァンが僕の目下で震えていた。
「ストップ!ストップ!」
リヴァンは目を丸くして一目散に逃げ出していた。
流石にルテミスさんが知る最大詠唱、第3詠唱は強力無比。今僕が詠唱していた魔法だ。
僕がリヴァンに放って沈めた無詠唱魔法は第2詠唱だったのだから。
次の日リヴァンは
「ワイトの家庭教師に専念する」
と僕の魔王の先生を退いていた。
完全に実力で下した様だった。
第3詠唱はルテミスさんはおろか神々でも使用出来る者は稀有らしい。
そして僕は魔王に相応しい仲間を得る為に魔法の可能性を探求し始めた。そう魔物の生成だ。
最高傑作を創る!そう心に決めて僕は誰にも負けない最強の魔物をイメージし始めた。
魔王配下の最高の勇者の障害を。
種族はドラゴン。色はゴールドかな。
早速僕は命の生成に取り掛かった。
流動する魔法をこの世に留めるのは想像以上に細かな作業が必要でとても大変だった。
それでも大体のパーツは創る事が出来たのだ。頭、翼、尾、手足を理想通りに。
8人の友達=神友達から動物や人体の構造を教えて貰っていたのが功を奏した。その時はさっぱり理解出来なかったけれど当時の記憶を頼りに脳に臓器、骨を加えていった。創り始めてから8日目にしてようやく金の竜がほぼ完成した。後は命を灯すだけだった。
「あとは名前か。全ての天を駆ける”全天“」
名付けは精神的作用が大きいものの、個を認める事が生命を灯す事に魔術的には解釈もされている。ある意味呪術の様なものだ。
「?」
まるで生まれたばかりの子猫の様に純粋無垢な瞳を向けてくる全天。僕は自身の名を名乗った、ミラースと。
「ミラース!」
今僕が創れる最高傑作はぺこりとお辞儀をした。
連れて帰ると普通にルテミスさんは意外とすんなり受け入れてくれた。
僕は迷子の竜の子を拾った事にしておいた。




