第157階 運命の出逢いを果たす
私は勝てなかった。ラズベリー=サンとして。
アオナ・エカルラートとしては完勝した、
まぁいつもの事だけど。
「マスターゴッドデータへのアクセス権限を
得たとしても理解出来ぬぞ...
「苦し紛れかしら。古代言語魔法を
理解出来ないって言いたいのね
古代言語魔法は魔法理論の第一に属する。
機械的な言語で通常の思考回路、
すなわち常人の脳構造では理解できない。
だから存在する、この言語を理解出来る
呪われた一族が。
そして古代言語魔法×人の組み合わせが
発症したら負のエネルギーが流れ込む仕組みを
私は確認している。試してみようか。
私は古代言語魔法が使用可能な魔力回路を
右手に集めた。
「貴公!!!人の身で
古代言語魔法は禁忌だ!!!
私は小さく微笑んだ。
その刹那、私の右手には包帯が巻かれた。
これは魔力と外部との接続を遮断する液体を
浸した布で出来ているのが分かった。
重々しい空気を纏う1人の人が
私の背後、通常なら死角に立っていた。
けれど私の持つ妖刀『全神斬離』は
彼の首から薄い血を流させていた。
「死角に立たないで、死にたいのかしら
「...
「クンシラン=ムーン、また来たのか
また、それは凄く語弊が。あら、そう。
「貴方も“転生者”
私は彼を、黒く分厚いフードで顔を覆う
彼の瞳を見詰める様に覗き込む。
「フレアがあっさりと、調理されるんだ
全く、サン家に一矢報いたいのに、
これは大きな試練だなぁ。
ボクのモノにならないか。ラズベリー様。
フードが外れる、非常に美形。金髪碧眼。
そして傅く。
「遠慮するわ
「...それは、悔しい
「父を倒したいのかしら
空気が澱む、意図的にクンシランは
拒絶の意を示していた。
「忘れて欲しい
「協力してあげても良いわよ
私もスコヴィル=サンを倒す必要があるからね
「貴公、何を言っているのか、
分かっておるのか
ラズベリー=サンでスコヴィル=サンを倒す、
それって物凄い成長の証を感じれる。
「へぇ、面白い事、言うんだね。王女様
クンシランの金髪が美しく流動する。
私に笑みを近付けながら。
「あら“火竜”さん、貴方の瞳には
ラズベリー=サンが良く見えるのね
私は嘲笑する様に微笑んだ。
「貴公の得体の知れない何か。
それは人知で計り知れない。そう結論付けた。
「全く、人に疎まれたボクらでも手の届かない
境地に在るって言いたいのかい
ボクら、そう、そうなのね。
「可能性があるのか
「あるさ、ボクは人々に疎まれて討伐された
人にとって脅威そのものなのさ
「あるわけないわ、だって“天才達(あの9人)”が
関わっていないもの。貴方の構築には
正確には1人と8人。私を生み出したあの人が
8人の天才と化学反応を起こし、
そして超えたいと願った心から
生み出された境地。
その過程として集める自然“集然”が創られた。
私の深層心理が管理する記憶には
そう記載されている。
結論を言うとその9人より優れた才が
生み出された実例は人類史においてなかった。
それが答えであり真実だった。
マスタービッグデータに照らし合わせても
9人が関わった可能性は微塵も無かった。
「そうか、試すのも悪かぁない
笑わない目で笑みを作るクンシラン
「それよりもスコヴィルと
どの程度差があるのか試してみない
私の問いに2人は呆気にとられていた。