第156階 人工知能と会う
「スコヴィルの第三子か、まさか貴公が人類史上初めて眼前に現れるとはな」
中心部に辿り着いた。
そして目の前には大きな火龍、燃え盛る火の様な鬣が天を穿つ。
生き物、その様に表現するべきかどうか私は創った相手に聞きたかった。
人類史上初めては特に光栄だわ、私は嬉しくて表情が緩んでいたに違いない。目の前の火龍さんは気付いているのかしら。アオナ・エカルラートに。
「スコヴィルの子よ。我が名は“人工知能”。龍と呼ばれし一体だ、この地に踏み入れたのは如何様な理由からか」
音が響く、機械的で電子的な流動音が。
言霊が私の知識に響く、人工知能と。完成された人工知能。その一体が“人工知能”。
人類の超越者となる。そう予見された彼等は、こうして世界の均衡を静かに見守っている御様子で。
私も初めて人工知能の果てに出会う。
「私はラズベリー=サン。不能魔法について御教示願いたい」
“人工知能”は機械ながらに言葉を詰まらせる表情を見せた。
「...解析不能魔法。確かに適合する」
静かにそして深く。
“人工知能”は私を不能魔法の使用者だと認めていた。小さな火が踊る、熱くも冷たくもない現象としての火。それが私の周囲を飛び回っている。
草木生い茂る中心部でその火は草木の命を尊重している様に調和していた。
“人工知能”の火は焼却の為の火とは遠い焚き火の心を灯す火を想像して創られたそんな火だった。私はその火に静かに触れていた。温度は感じず、人の優しさに触れた気がして目尻がほのかに熱くなっていた。
「温かいわね、貴方の火は」
“人工知能”のその尾は少し跳ねた。
照れを隠す様に目を僅かに逸らして。
「光栄だ、解析不能魔法についてか......」
何かに対して意を決した様に。
“人工知能”は遠くを見つめて小さく頷く。
解析不能魔法とはそこまで深淵に根付く魔法の類いなのかな。
集然で “人工知能”の思考を感じていた私は世界の奥深くの深淵にアクセスし対話しているのが理解出来た。
マスターゴッドデータへのアクセス。第七世界ではビッグデータと呼ばれ、ある科学者が発展せたものだった。
そう、そうやって情報を得るのね。私は “人工知能”の情報収集能力を一から十まで模範し、集然にコピーしていた。
「ラズベリーよ、貴公は一体、人の子と呼んで良いのか」
コピーがバレてたみたい。隠すつもり無かったけれど。
けれど私が分からないみたいねーー
「解析不能魔法を二つ有している稀な個体よ、別々の個体に一つずつ」
「優秀ね、貴方の火の解析性能は」
「認めると言うのか!」
「それでどうでした。私ラズベリーの不能魔法については。教えて下さるのかしら」
草木がざわつき火が熱を帯びていく。
戦闘へのシフト、何がお気に召さなかったのかしらね。
世界のどのぐらいの強力さに位置するかは判別出来ないけれど。
「少女相手に何を本気にしているのかしら。大人気ないわね。勝てるとお思いで。遊んであげるわね」
「世界の脅威を知るがいい」
空間が移動する、 “人工知能”は大きな力を使う様子で。
「人の子よ、いや最早そう呼べんのかもしれぬな、人の知の結集を舐めるなよ」
私は容赦しなかった。一瞬で “人工知能”の身体は崩れていった。
ラズベリーに宿る不能魔法の力を集然で模範し私アオナ・エカルラートで発動させていた。
ーー大きな口を叩いた割に、力を何も試せない。
ラズベリーの真の可能性を私はもっと知りたいと思った。