第152階 更なる高みへ
「今日も平和!
私は背伸びをしながら呟いた。
西の大帝国との決戦、そして父との死闘...
全てを超えてその先に辿り着いた私は
平和を謳歌した。
食べたい時に食べたいものを食べ
眠たい時に寝て語り合いたい時に
フォアローゼズを始めとし
皆と他愛の無い会話を大いに楽しんでいた。
何から何までゆったりだらだらな毎日、
更に今日は日向ぼっこ日和でいつも以上に
平和が似合う日である。
ーー満たされている。
それも紛れも無い真実で
心の底からそう思っている。
けれど、私は心の中に湧き上がる
熱く沸々と滾る様な気持ちを
忘れた事は一度たりとも無かった。
様々な彩りで煌めく魔の芸術。
刃と刃が撃ち合い、空を切り裂く金属音。
そして信じた意思が世界に影響し
周囲を巻き込み世界をより良くする
正義の体現の実行。
試行錯誤を重ねても
総てを満たす事は出来なかった。
模擬演習に実戦訓練も
本当に色々な人々に
付き合って貰ったけれど。
更に別の異世界に攻め込み
善からかけ離れた人々を
塵芥一つ残さず討伐しても
何かが足らなかった。
近年魔法理論は体系化し
・古代言語魔法
・詠唱魔法
・無詠唱魔法
・不能魔法
の四つに区分されていた。
その内、私の持つ“世束”は集然の果て、
極まった状態まで到達していた。
分類上は不能魔法に分類し
個人の才に強く影響している。
不能魔法群は魔法理論の分類上
存在しない体で扱われている。
魔法理論を体系化する神々に精霊、
人間に使用可能者がいない事は
珍しくも無いから。その一言に尽きていた。
そもそも“集然”の使用者は
現状、私とフォアローゼズの計5人。
それと考案者の前魔界の天皇も。
神の一柱で仲間のアルテンさんは
明記しようかと聞いてくれたけど、
女性の秘密です♪とにこやかに
流した記憶があったりなかったりする。
それはさておき...フォアローゼズが
集然を扱えるのは身体的にも精神的にも
私に類似している点があるからである。
第七世界の用語で例えるならクローン。
原初の宇宙を創造しその中の“擬似地球”から
生まれたから細かく言えば
同一とは呼べないけれども。
...とりあえず集然は一般の魔法理論を
大きく外れた前魔界の天皇の
超特殊な魔法理論の上に成り立ち
特別な存在にしか扱えない奇跡の事。
とも言えるかもしれない。
そんな魔法を超越した魔法を
解析不能の不能魔法と呼んでいるようね。
とフォアローゼズの一人マテハに
教えて貰った私であった。
世束の成長が止まっている気がしている。
それに気付くのに3ヶ月のだらけた期間を要した。
それから私が始めたのは、
一般魔法の成長を観察するだった。
この観察は仲間達を対象としていては
まるで意味を持たなかった。
彼等の魔法体系は前魔界の天皇の
特殊魔法理論の上に成り立っており
私が最も成長している...状態だった。
世束の限界を突破させる事は未知の領域である。
この事実を私自身が理解するのに
秒数は必要なかった。
何故なら常日頃から
考察していた一つだったから。
そうして何かないかと思いつつ、
だらける予定がいつもの様に組まれていた。
もとい、精神を穏やかに保ち
静かなる心での精神集中の時間からの閃きを求めて。
半日程度上質で柔らかな布団に包まっていて
心地良く幸せな気持ちが生まれて来たから良かった。
ーー寝る子は育つ。
私が閃き導き出した答えだった、
間違いない!と確信に満ち溢れていた。
...冗談はさて置き。
確かに育つのだけれども、世束には影響が無い。
だから私は一つの決断を下した。
父から受け継いだ戦士としての誇りを満たす為に。人々の未来の先に最強を超えた最強があるはずだと。未来の果てでもう一度生まれようと。
私は神界の魔法理論の発展の経緯から
神界魔法の発展の推移の流れを
魔法として可視化させ、時空魔法を掛け合わせた。
そして誰も触れられない筈の未来に私の指先が今、
触れている。
人類が自らを最大限に自己を律し発展を
最大限に効率化させたと仮定する未来、
本当に人類が歩めるのかも不思議な程の未来へ。
そんな人類の可能性の最大値の異世界に
飛び込んでいた。私自身を超越する為に。
......ちなみに転生魔法は私の中では最早、
様々な顔を持ち暗躍する諜報員程度の
認識しかなかった。
要するにどんな情報も得られるって訳。