第147階 トーラルカエ
西の大帝国が央のスルグレに臨んだ
“大規模戦略的大掃除”=“戦掃”は幕を降ろした
戦力を考えれば国家は愚か
世界すら容易く陥とせる
人類最高戦力達が協力してさえ
成し遂げられなかったスルグレ攻略は
未来永劫、夢、幻と成った
その後の人類史にもかの王達を超える
逸材×チームは存在出来なかった史実が
紡がれるのはまた別の話
生き残り、命を拾った王達は
安寧を求めて穏やかに
自国で余生を過ごした
央界は自らの目的の為に
他世界に侵攻し侵略した
犠牲となった世界、人は
星の数よりも遥かに多くなった
魔界の天皇の遺産......
それは世界の法則から
劣等種と位置付けられそう証明される
人生を歩む事となった少年が
人類史上最上位な8人の友を超越し
凌駕する為に創り出した、夢、希望
そして..
友を救いたい純真さ
そのものであった
...
....
.....
「「「「ハツミー
大切な娘達が自分の名を
呼ぶ声が聴こえる
そしてその声にアオナは癒されていた
「はーい!
そんな声に応えるアオナ
「...なんか今日も王様やってるし
マユナがニコッと笑う
「アハハハ!、気持ちだけでも!
座る?
「はい!!!座りたい!!!!
イムがキラキラした目で
身体を前のめりにしてくる
「...そしたら、今日は人数分
用意するね
「実は私も座ってみたかった
マテハが苦笑する
「もちろん、私もだぞー
マスカリアが元気良く手を挙げる
「楽しみにしていてよ!
そう言ってアオナは胸を張った
「元気そうで何より!
アオナに招かれていた
アルテン、倶天、ドゲートが
やって来た
「ようこそ、トーラルカエへ
ゴクリと皆が息を呑む
「アオナ...気迫があるな
倶天の言葉に大きく頷くドゲート
「ふふふ、貫禄でもついたのかしら
アオナはチラリと
空間の一部を視界に入れた
「事実、人類の伝説の中の伝説を
追い返した訳だ...
未来永劫、どんな超常の生物にも
成し遂げられない夢の中の夢だ
声と共に時空を割ったのは全天だ
ミリフィムに...クラーガ、闇星が続く
そして.....
「スソリフおばちゃん!!それに...
皆んな!!?
「アオナに縁のあった者達も
誘って来た、良くない
話しじゃないじゃろ?
スソリフはそう言って微笑む
その後ろには...
「ばっちゃ!ネクさん!ゼムさん!
ターキッシュちゃん!シンガちゃん!
それに皆んな...!!!
そして、命君が微笑んでいた様な
気がした
...全人の書の備考欄とも米印とも
いえる場所に小さく記載があった
織出和 命は創られた生命だった
継ぎ接ぎだらけの死を望む人々の
肉体を重ね併せて生まれた
残火の様な命。
魔法学の分類的には“合成獣”、
ゴーレム、アンデッドの様な性質と
特徴を持っていた
彼は死にたがっていた元の持ち主の
肉体に心を浸食さて引き摺り込まれ
マテハの見守る中死んでいったそうだ
助けようとするマテハに彼は
「泣いてくれてありがとう」と
言い残した
倫理を曲げ命を繋げようとする
マテハをマスカリアが抱きしめて止めた
「戻れ無くなる」と
全人の書の定められた運命に逆らうにはマテハはあまりにも
まだ綺麗で純粋で純真だった
「チィーッス!!」
この特徴的なノリは...
「われ、アオナはんに
ごっつ会いたい思うてはったんや!
そしたら魔界の者共が
会いに行く者を募ってる言うてんねん
こりゃ、こそっとついて行くのが
筋やろ?
「相変わらずね、貴方から
お調子者を奪ったら何が残るのだろうね
私は満面の笑みを向けた
「そりゃさかい、泣く子もうっとり
神々しい男前が出てくるに
決まっておるやろ!!
ウシトラさんの暑苦しい程の
キメポーズも相まって
ドッと周囲から笑いが溢れた
「何、その人?面白い!
ターキッシュちゃんが笑う
そして、
「お姉さん!久し振り!
「えぇ、久し振り!
「久ー
小さな手が伸びてくる
「シンガちゃんもお久しぶり
「うん....
シンガちゃんは
恥ずかしそうに照れていた
「相変わらず...ですね...
何故かしどろもどろしているネクさん
「ふふふ、元気されてました?
何かと忙しいのでは、と
私は心配していましたよ!
「フフフハハハ!!良かったなネク!
不敵な笑みを浮かべる狼
「ゼムさんも元気そうで!
「あたぼーよ!
元気を抜いたら干からびてしまう
そして足音が2つ聴こえた
「まさか、こんなたいそれた事に...
いや、必然なのか!
「マサムネ王とアンビシニアンさんも
相変わらずの素敵なご夫婦で!
「貴女と試合をした事も
なんだか遠い昔の話ね、
もっとご教示頂ければ
幸いだったかしらね
「私で良ければいつでも!
....ばっちゃ!!
「アオナ!!元気で何よりだね〜
グリモア様ことばっちゃが
フヨフヨとこちらに飛んで来る
「うん!!!めっちゃめちゃ元気よ!
「...アオナ、人々の頂点を
下した意味が分かるかの?
真剣なばっちゃ
「手は打ってあります
「そうかい、私らは
いつでも助力するよ
ばっちゃの優しい言葉
「あぁ...そうだな、魔界は味方だ
誰も奪わさねぇ
頼もしいゼムさん
「そうじゃぞ?うちのダンナを
もっとこき使ってやってくれ
このままじゃ給料泥棒じゃ
「スソリフおばちゃん!
周囲に目をスーッと通すスソリフ
「なんと高密度で繊細かつ大胆で
精巧な魔法都市じゃ...!!!
わしじゃ手が加えられん!!
「ハハハ...先代の加護が
効いているからね!
「魔皇ちゃんねっ!
「お母さん!に..
ニコッと愛娘に微笑むナティラ
「それにしても大掛かりになったな!
ニカッと笑うキレ
「お父さん!2人ともって
お父さんは来た事あるでしょ!
「あの時とはまた違った感覚だな
ここで死闘が繰り広げられた...んだな
キレは懐かしむ様に
遠くを見つめていた
そして...
「ハツミ、本気の本気で戦わないか?
ザワッ...と空気が一つ震え揺れる
「....勝てる見込みあるって事ね
私が大勇者に!!!!
空気が張り詰め、周囲の息を呑む音が
ポツポツと響いていた
「...まだ、勝たせんよ
「...西を陥し者、いざ参る
アオナは込めた
重く強い想いをその声に
キレはアオナの気迫に一筋の
冷や汗を垂らしていた
そして同時にその頼もしさに
ニイッと笑みを浮かべていた