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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
西の大帝国編
139/263

第138階 戦火の終炎

クアットゥオルはスルグレに対し

並々ならぬ闘志と憎しみを抱いていた

自信の誇りと自らの後世である

サー・サマエルを残酷なまでに

痛めつけ再起不能にしたからである


「作戦名:毒蜘蛛!!!!


戦火の英雄、戦場の担い手、

戦争の大神と名高いクアットゥオルは

スルグレへの総攻撃の合図を“今”送った


その前段階として

クアットゥオル配下の精鋭達が

央界の遥か上空を飛び回り

時空間を移動して革兵器を配備していた


セプテムはスルグレを滅す

決断を密命として七賢人に伝えていた

殺るなら一瞬で塵一つ残さない様に

悲しみも苦しみさえも溶かしてしまえと



けれどその変わっていく空の様子にさえ

スルグレの主たるアオナは

眉一つ動かさなかった


仲間達の顔に動揺の色は隠せない


「物量が多過ぎる

人類を本気にさせるとは

こういう事なのか....


倶天は何に戦いを挑んだのか

心に叩きつけられた思いで

色が変わる空を見つめていた


「ほんの少しばかり

思っていたのとは違うけれど..

すべき事は何も変わらないし

想定の範囲内だわ!




「.......


頭上に革兵器群を抱きながら

今始まった戦争に意識を集中させた

だけど何も臆する事は無い


むしろアオナはこの総てを理解し

把握していた様にも思えると

内心仲間達は自身を納得させていた


「人類との戦争が始まれば

過去にも未来にも人類史に唯一残る

最も戦争の女神に愛された天才が

先陣を切って現れる...


という伝説が残っていると

アルテンは記憶を噛み締めた


七賢人の一人クアットゥオルは

正にその人物だ


「相手に誤算があるならば

この状況下を倶全君の片手の自由を

刹那的に奪う事しか出来なかった...

それだけよ!


アオナの言葉に皆が震撼していた


「それにいくら人類史に残る

殺戮道具の頂点に君臨する

革兵器といえど元を辿れば

中心より超速で周囲に流れていく様に

形成された物質の統合体なだけよ

だから、ねぇ?ご覧


アオナは確かに微笑んでいた



倶全は配備された革兵器の

中心部から順番に吸い出す様に

ある場所で自分の魔法を

形成し始めたのだ

相手の魔力を奪い自身の魔力に

変換していく様に革兵器としての

力は失われていった


「今はこの光景を見守っていて欲しい

いずれこの場にいる

誰もが使える様になる

現段階では倶全君が到達しただけの事


アオナの目は強く輝いていた


そして革兵器群は消失していき

その更なる頭上に

黒い異なる物質で覆われた

禍々しい槍が誕生した


「おい、あれは一体なんだ?


スルグレの上空に刹那という速さで

出現した一つの魔槍


「なんじゃと...?

兵器が総て消失した....?


クアットゥオルは部下の

報告を受けていた

けれどその部下との通信も

途絶えてしまう


「人も物質...なんだよ、ねぇ

西のお偉いさん達?


アオナはクスッと笑みを浮かべた



「.......


倶全はアオナの示した

ある魂の力を持つ人間達も

分解して槍に吸収させていた

それは現段階でスルグレに

悪意の方向性を持った人間の魂である

そしてその槍の矛先は

最も悪意が大きいある人間の命を

常に狙っていた


「........逝け.......!


倶全は呟いた


遥かなる時の隔たりがあったとしても

それを噛み潰すだけの魔力は得ていた

命もエネルギーも十分に蓄えていた

一本の魔槍は.....


.....クアットゥオルを貫いた


「ぐぶっ....


なぜ...


自身の身に何が起きたのか

クアットゥオルは理解はしていた

けれどそれは結果だけだった


そして無情にも

魔槍を抜く事が出来ない


魔槍の矛先が自分に

向かっていたのは理解出来た

クアットゥオルは自身の心臓を

殺傷の瞬間に別の空間に移動させて

最悪の難は逃れたものも

自身を覆っていた

何重もの障壁が無傷な事

その中の殺意の銃弾の

時空移動さえ可能たらしめる障壁

そしていかなる急所を狙った攻撃も

自身に届かせない確かな自信

その砦をいとも容易く突き崩されていた


この黒く鈍く光る魔槍を恨めしく

クアットゥオルは見つめながら

低下する自身の身体の機能の赴くままに

徐々に倒れ込んでいった


事実上、七賢人の一人

クアットゥオルは無力化されたのだ


そしてクアットゥオルの

誇りを著しく傷付けたのは

自身の最高戦力にして

最高の守護神にして

最後の砦たる最強の斧

究極未来(アウグストゥス)

押し負け亀裂が生じていた事だ


これでクアットゥオルは

総ての配下を失い自身の

撤退も余儀無くされた


そしてそのままの足で

トレースの元へ向かった

彼女の技なら魔槍に対処出来る

可能性があったからだ


「げふぁっ...ぐぶっ..


クアットゥオルの足取りは重い


けれど背負っている総てに比べれば

遥かに軽い


「トレース殿いるか...


クアットゥオルは堪らずに

片膝をついた

魔槍は徐々に身体に染み込んでいき

小さくなっていた


「クアットゥオルさん?


クアットゥオルは笑みを

トレースに向けた


そしてそのまま床に倒れ込んだ


「.....


トレースは取り敢えず

これ以上進行しないように

止めた、けれど...

それも時間の問題だった


いずれ死へと針は再び動き出す

再構成の力を持つ魔槍は

時間をかけて人類史に残る

最高峰の停止を突き崩す


「...決着がつくまで、で良い

トレース殿よ、感謝する


深々と地に頭をつけて

深く礼を申すクアットゥオル


その姿にトレースは

居た堪れない気持ちを抱いた


気位は天子の座る玉座よりも遥かに

高い位置にあり

気性は破壊神の雷よりも

深く抉る荒さを持つ

自身の時代の後の時代の問題児が

人類の清き未来の為に

総てをかなぐり捨てて

七賢人の一人としての

使命を全うしようとしていた


その姿にトレースは涙を一雫零した


「頭をお上げ下さい...

まだ終わっておりません..

こうべを垂れる暇など

かのスルグレの主

アオナ・エカルラートは

与えてくれないでしょう...

その事は良く憶えておくのです


クアットゥオルは


「助言感謝する


と一言告げてこの場を後にした


...


....


.....


「.....あの空が全て戻った...


アルテンは安堵と共に湧き上がる

驚きを隠せる筈もなかった


「あれで王を一匹...


トサッ...


床に倒れ込む倶全


「倶全君!?


駆け寄るイム...

そして心配そうに見つめていた


「...こんなに大きな力は初めて使う...


無表情のアオナ


「違うわ、馴染みが無いだけで

もっと大きな力は持っているわ


「まさか、あの黒い雷...!?


マスカリアはハッと気付く


「そうよ、“カゲード”と

先代魔皇が命名した特殊な力

だからこそ急に大きな魔力を扱っても

疲弊だけで済む、お疲れ様!

あとは私がやるわ


「何も出来ないの!!?


「へ...?


アオナは面食らった


「だから、私達は

もう何も出来ないの!!?


イムが怒っていた


「イム...?


「誰かの為に頑張ったのが

良く分かるよ!!

だから私は...そんな所が好きなの!

だから私も何も出来ないかもだけど

何か出来ないかって思う!!


「私もそう思う


ドゲートもそう言って

皆んなが頷く


「.....


アオナは膝をついて泣き崩れた


「「ハツミ!!?


マテハとマユナ


「..私は皆んなには敵わないわ.....


「冗談言ってないでぇ、

遠慮しないでくれよ

親子なんだしな...


マスカリアは頭をポリポリ掻きながら

小さく呟いた


「...改めまして、頼みたい事がある!


一礼をしたアオナからは

笑みが溢れて零れ落ちていていた

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