表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
西の大帝国編
134/263

第133階 力の花と時の花

「はああああああああ!!!!


ドゥオの気合の咆哮が

空間を抉る様に激しく震える


相対するマユナは

震え怯える心を飼い慣らし

神経と魔法を研ぎ澄ます


一手間違えば詰む...とマユナが思う程に

ドゥオは激しく攻め立てていた


「...!!!!?


不意にドゥオが後方に下がる


「...震えてやがる....

私は子猫ちゃん一匹殺せなくなって

しまったのかしらねぇぇぇ!!?


ドゥオの紅く煌めく

究極未来(ダーラヤワウ)

握る右手が微かに震えていた


「....ハツ..ミ...

アオナは絶対負けない!!


マユナは乱れた息を整えていた



ドゥオはキッと明らかな殺意を持って

目の前の..震える少女を睨み付けた



「...だけど、私は闘う

アオナだけにアオナ一人に

背負わせたくない!!!

だって家族だもん!!!


...マユナは"リョウゲンノヒ"で

ドゥオを殺すつもりで揮った


けれど天のステルラを纏ったドゥオは

片腕で握った究極未来(ダーラヤワウ)

一振りで軽く吹き飛ばした


「...舐めるな...お前に良く似た

あの少女は怖いさ

深淵よりも更なる深奥に

広がる強さの底....

生まれて初めての無力感と

弱さを私自身に感じた

けれど、けれど、お前じゃ無いんだよ

私が超えたい相手は!!!


それでもドゥオは歩み出せなかった

強い筈の自分が恐れを感じていた

強者と闘う事に高揚感と快感を

抱いていた、そうだった筈なのに

今は違う

明らかに危険を感じていた


「クゥインの野郎....

殺すな...か..面白い事を

言うじゃあないか!


(私はきっと...本当はもう、死んでいる

でも、ハツミが..ハツミが..

守ってくれている


マユナには微笑む、アオナが

振り返るのが一瞬見えた様な気がした



「マユねえええええええ!!!


ドゥオは目の前に白い衝撃を受けた


「な...ん...だ....と.....?


究極未来(ダーラヤワウ)だけが触れてしまい

消失していく

あとほんの少し反応が遅れていたら

死んでいた....そんな恐怖を

ドゥオは刻み付けられていた


「イム!!逃げて!!私が!

お姉ちゃんが何とかするから


イムは首をふるふると振る


「一緒に一旦逃げよう

そしてみんなで考えよう?


イムはそう言って2撃目を放った


ドゥオは今まで感じた事の無い

恐怖に捉われて一瞬、動作が遅れ

避けるだけで精一杯だ


究極未来(ダーラヤワウ)

修復も急がないと...


苦虫を噛み潰した様な気持ちで

撤退を意識し始めていた

自身の闘う心が気持ちが

負けていたからだ


...ドゥオは逃げる2人を

見逃す他、出来る筈も無かった


イムは逃げ様にチラッと

ドゥオを見ていた

まるで深手を追った大浪...


イムにとってずーっと見て来た

強い人の一人であるマユナが

疲弊し死を覚悟する相手...

それなのにハツミは以前

そのドゥオを圧倒していた

圧倒的な強さを誇るハツミを

敵に回す意味を考えて

イムは小さくぶるっと震わせた


「....大丈夫よ、イム、....

マテ姉もマス姉もハツミもいる

だから少し休むね...


マユナは自身を光に変化させたまま

眠ってしまう

今まで守って来たイムに

弱さを預ける様に寝息を立てていた


「マユ姉...


イムはそんなマユナを背負って

和かに微笑んでいた


「...大丈夫か....?


イムの耳に微かに響く

良く覚えている小さな声


「倶全君...?


「...マユナさん...?


マユナはイムの背中で

小さく寝息を立てていた


「大丈夫だよ!


イムはニコッと微笑み

グッと親指を突き立てる


「.....良かった


「うん!


イムはとても嬉しかった

大切な人を大切な人に気遣ってもらえて


...


....


.....


(私にはやるべき事がある


アカナは神降ろしで

自身に宿した朱雀の力、

その翼で北の大地

海のステルラを目指していた


「触れ...!!!?


時の筋が波打つ


(言葉が拾われる...


アカナはある程度理解出来た

海のステルラのある地への超広範囲に

光の4倍である一定の時が

流れている事を

そして声のみに干渉してくる

流れが在った


(こんな人がいるなんて...


時の魔法の初心者は

とにかくそのコントールが難しく

行使範囲が広い

事実神々ですら時に影響していく為に

変換された魔力を完璧に

支配する事は出来ていなかった


けれど目の前の行使された

時の魔術は違った

時が自由気ままに踊っている...

そして時が望んで

その流れを創っているかの様に

自然と調和していた


だから神の一柱、朱雀を宿す

アカナでも気付くのに遅れたのだ


ステルラにフトゥールムが集う

そう言ったのは妹のアオナだ


ステルラは世界の物で人の物では無い

そのありのままの調和を

維持する為にアカナは飛んだ


「!!!?


神の次元の防護の魔法を纏っているが

乱され一部掻き消された

消失したというよりも

その一部だけ移動させられたのだ


「時空の流れが複雑に

絡み合っている....

直ぐに構築し直さないと...


アカナはこれ程の時の使い手は

一人しか知らなかった

かつて歴史を刻んでいた

神々の世界でも特に有名で

今はトレース・フトゥールムと名乗る

現七賢人を務める

西の大帝国の頂点の一人だ


西の大帝国と共に発展していった

世界、大宇宙を世宙(よぞら)といった


第三次世宙において王と成った少女は

人類の最もたる未来の一つで

3番目の重要な区切りの意を持つ

その時に人類は夢の“時の技法”を極めた

その最もたる象徴がその当時

王であったトレースだ

西の大帝国の歴史にとって

科学の境地とも意味付けられる

魔法の才は女性が最もたると

研究成果が出ていた


魔法文明の一つの収束であった

第三次世宙は栄華を極めた

この時代より魔法の発展は

緩やかになるもののその後も

人類の世界は発展していった


「時代を築いた一人...

神々さえ生み出した王の一人

....アオナは死ぬ気なの...?


朱雀と同化しているアカナには

神々の知識が蓄積されていた

無謀ともいえる今回の戦争

西の大帝国側は

スルグレを確実に獲るつもりだ

その為に和平交渉で時間を稼いだ

そう、マテハは自分も含めて

アオナとフォアローゼズに告げた


「死なない事!

勝機は巡る、死んだら呪うね!!


笑顔のアオナの言葉が蘇る

つい先程の事がもうあんなに遠いと

思える程にアカナは死地に潜っていた


「ようこそ!


ニコッと微笑む少女

けれどそのオーラに

息を呑む緊張感が走った


静寂の中心に咲く桜の木の様に

有無を言わさぬ圧倒的な存在感、

誰もが心地良いと感じ魅了される笑顔

微笑むだけで人々を傅かせたと名高い

上に立つ者としての振る舞い


世宙の覇者である人々の頂点として

人類を治めた一人である

トレース・フトゥールムは

一歩踏み出した


「....!!!


アカナは逆に一歩下がった


「...ステルラに力を借りなければ

いけない程に人々は自身を信じる術を

忘れてしまったのでしょう...


ふいのトレースの言葉に

気が緩むアカナ


「ステルラは世界と

共にあるのが分かります

けれども人も世界の一部です

だから共に歩むのです


「待って!


アカナは理解が追い付かない

現実に声を上げた


そこには海のステルラ

“ネプトゥーヌス”が

トレースに傅く姿が無情にも

アカナの目の前で行われていた


「ねぇ...朱雀のハツミリフィ

力不足と思います


自身を守護する為に不規則に流れる

時を更に乱したトレース


(触れたら...


間一髪で逃れたアカナ


「ふふふ、生きている...

私の仕事は終わったの

それとも私からネプトゥーヌスを

奪うのかしら?


時の技法を使い守護の力を高める

トレースに対して

手立てを失っていたアカナは、

変わり行く世界に痛みを噛み締めながら

これからを模索していた


返答の無いアカナに対して

トレースはその諦めない目で

闘うと判断した

そして


(痛みは無い様にしてあげる....


守護の為にアカナのいる

時空から離れていたトレースは

アカナとの決着を着ける為に

同時空に戻って来ていた

だからこそ、感じた

そして時空を瞬時に逆戻りし始めた


「強化魔法...!!!?


アカナに集まる肉体変化の流れ

時空の流れを操るトレースだからこそ

気付けたと言うべき些細な現象


そして強化され放たれた朱雀の炎から

海のステルラの力の副産物である

水の力で掻き消す様に守った


「炎が軽く...鮮明に透き通る


アカナは自身の未知の力に

自身でも驚いていた


その反面トレースはゾッとしていた

いくつか守護の為に創った

時空を焼かれたからだ

目の前の彼女、アカナに

何の力が集まったのか分からなかった

けれど、最悪の結果への

恐ろしさを同時に感じ取ってしまった

もしかのアオナ・エカルラートが

目の前の少女に対する出来事を

感じ取ってそれに対抗出来る程の

魔法を時空すら関係無く行使出来る...

その手腕を持っているならば

フトゥールム達がステルラを

手に入れる事は必然という事だ

何故ならステルラを手に入れた後が

本当の始まりだという事を

同時に意味していたからだ


トレースは...そのまま

この場を後にした


「ま...待って...!


アカナは悔しさで立ち尽くしていた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ