第131階 冷戦
会議は無事に終わり
彼等3人は帰路に着いた
けれどアオナは反転する様に
2人をある場所に向かわせた
東界の双子天道だ
アオナの見立てが正しければ
ドゥオとクインクゥエは
すぐさまにアオナが指定した
双子天道に向かう
2つのステルラが安置してあるからだ
...ドゥオはウーラヌスに
クインクゥエはユーピテルに
それぞれ導かれていた
「これがかの双子天道...
「....なんとも壮大だわぁ
けれどスルグレ攻略後は事実上
東界も私達の手中よ
「本気で言っているのか?
よもや何も失わずにこの戦争が
終結するとお思いで?
クインクゥエは何とも不気味に笑う
「何を言っているの?...
この私が勝利で終わらすに
決まっているじゃない!
「全く威勢のいい事だ
クインクゥエはそんなドゥオに
頼もしいと感じていた
どこまで上手く事が進むか分からない
けれども想像以上に事は良く進んでいた
その事にクインクゥエは
確信めいた自信を持っていた
けれども..けれども..
「アオナ・エカルラートよ
お前は今、何を考えている...?
そう呟いた言葉の音色は
東界が巻き起こした風の音色と
不気味に調和し
かき消される様に吸い込まれた
...
....
.....
「ハツミが言うには
もう動いているってよ!
2つの影が時空を飛んでいた
「あぁ、私もそう思う
それに会議自体もその為に
行われたものだろう
え?っという表情をするマユナ
「まさか本当に和平の為と
思っていたの?
マテハはニコッと双子の妹である
マユナに微笑む
「0ではないわ...けれど
西の統治する世界下の平和なんて
見飽きたわ
私はハツミが創る世界を
これからも見ていたい
「ハツミが創る...
そうね、私もハツミについて行くよ
だからこそ、何が出来るか考える...
「マユナはマユナのままでいいよ、
そのままでってハツミは言うわ
もちろん私もそう言う
2人は笑い合っていた
...
....
.....
流れる様な白に荘厳な出で立ち...
第七世界の想像上の動物
ペガサスを象る
月のステルラことルーナ
「初めまして....ではないわ
貴女と共に未来を駆ける夢を見たわ
それはとても官能的で刺激的だったわ
「.......汝は世界の秩序を保つ者
我々の秩序も守れるのか?
クスッとセクスは妖しく微笑んだ
「えぇ、その為に足を運んだの
....私の魅せる世界を共に見ないかしら
勿論貴女達も歓迎するわ
そう言ってセクスは振り返り
ニコッと蠱惑的な笑みを
2人の少女に向けた
「南界一危険な場所の一つに
こんなすげー力が眠っているなんてな
「ほんとにそれ...
お持ち帰りなさるの?
マスカリアとイムは構えた
「何を言っているのかしら?
ついて行きたいと言ってるわ
このルーナがね
そう言ってセクスは
ペガサスの口元を軽く撫でる様に
優しく撫でていた
「もう調教済みって訳か...
「物言いが物騒ね、
私の魅力に夢中なの
セクスはニコッと微笑みながら
短剣を両手に握り締めた
その動作たるや
完全にイムが虚を突かれ...
「???...そう貴女なのね?
ステルラを守る歪みを抜けられたのも
けれどセクスは全く動けていなかった
「イムに手は出させん
マスカリアはキッとセクスを睨む
「そう良いわ、貴女も
私のファンにしてあげる
そう言った瞬間ルーナは
セクスの身体に溶け込んでいった
「へ?...融合....?
あまりの出来事に
上手く言葉に出来ないイム
「ステルラは...西の大帝国の
物じゃない!!!
「えぇ...知っているわ、人々の物よ
私達全人類の代表たるフトゥールムの
グッとマスカリアは拳を握り締めた
「でも...私達を助けたのは
ハツミだ!!!
だから私達はハツミを信じ.....
(かなり近付かれた...?
マスカリアは驚いていた
「ふーん、もう少し速度が必要か...
クスッとセクスは唇で短剣の
峰を妖しく舐める
その動作にマスカリアは
ゾクッと寒気が走る
「!!!?
迸る白い雷
「へへへ
ニィっと微笑むイムに
宙を舞う様に飛ぶセクスの左腕...
「お?あれか!!
「命中ー!!
飛んだ左腕と裂けた腕は
ルーナの魔力に守られて
痛みを発しなかった
(この私が反応出来なかった...?
何かするあの後ろの娘の
予備動作も見えた筈なのに
シュルシュルと何処からか糸と
器用に複数の極小の氷の針を作る
セクス
「そういえば...あの子は
来ていないのね、アオナさんは
「あぁ、そうだな
来てねーぜ
マスカリアは警戒心を強めていた
「そ...なら死ぬかもね
貴女達...!
時空から取り出した数種の液を
裂けた傷口につけてルーナの
魔力によって手元に引き寄せた
腕の断裂した神経と筋肉を縫い合わせ
ガチッと骨と骨をつけた
「腕が戻る...?
「究極未来
色が常に変化し続ける2つの短剣
貞観と開元だ
そして右手で時空より取り出した
仮面を自身につけた
「殺すから...覚悟して.....
「ね
マスカリアは後ろにたじろいだ
眼前にセクスが迫っていたからだ
(速い...
白い雷がセクスを掠めた
(ふぅ、あの娘が素人さんで助かった
技を放つ予備動作で丸分かり
けれどあの赤子同然の
ひよっ子ちゃんの動作でも
白い雷が強過ぎるわね
なんなのあの速さ...
セクス自身は光速を超えて動く事も
瞬間移動も可能だ
それこそ限りなく0に近付けられる...
距離によるタイムロスを。
「ぐっ...
マスカリアは普段動かずに技を
放っていた、けれども動かなければ
詰められていくのが自身で痛い程
分かっていた
(魔力を瞬時に纏って
脱皮しているだと...
動作超低速化が間に合わない...かも
「距離を詰めるのに20865枚...
消費が馬鹿にならないわ....
なかなかやるわ...
...
....
.....
「出来れば誰一人殺さない方がいい
スルグレに向かう直前に
セクスにそう告げたクゥインクゥエ
「.......戦争が始まっても?
意味深な言葉に真意を
確かめたくなった
感と言われれば思い当たる節がある
「アオナ・エカルラートを討つ前に
殺すなという意味だ
「慎重ね、貴方かなり肉食で大胆って
良く聞くわ
クスッと微笑むセクス
「......それはそれ、これはこれだ
もし行方不明の土と冥のステルラ以外を
手に入れても届かなかったら?
「不安症ね、愛の言葉を並べる際は
とても自信に満ち溢れているそうね
クスッと微笑むセクス
「......私は女性を放っておけないんだ
だからセクス、君もだ
「そう、優しいのね
...
....
.....
(どうしたら引いてくれるのかしら...
戦争後に遺恨を残さないという
意味では大事だ
けれど目の前の2人は違う
人類の偉大な歴史の頂点に君臨する
一人としての自覚があるセクスは
仕留める事によって自国に齎す利益と
秤にかけていた
確かにこのまま斬り込み続ければ
この2人を斬れる算段まで
実はついていた
けれど消費物資も途方も無いと
導かれていた
可能性としては潰してしまいたい
敗戦後の待遇だ
生きられる選択肢を残しておきたい
敵に従属してもと
セクスは思考していた
どこまでクゥインクゥエが
確かな敵の情報を掴んでいるのかは
分からない...けれど
敵の主人たるアオナ・エカルラートとは
直接対峙した事がある
私が
「偉大な王か...
あの言葉が
あの敬意が本物ならば
まだ余地がある
共に人類の未来を創る可能性が
「...ここのステルラは私が手に入れた
もうこの場にとどまっても
意味が無いわよ....?
(何をしているのだろう...
何を言っているのだろう....
敵の主力は叩くべき
この2人はあの時
アオナ・エカルラートの後方に
似た様な力を感じていた
だから共に過ごしていただろう
ステルラ奪取後に戦争を起こし
スルグレに侵攻する、これは決まった事
けれども...勝利の確率は?
アオナ・エカルラートの強さは?
計り知れない何かから
私は逃げる様に縋る様に
淡い希望を求めた
私達フトゥールムは
その生きた時代で
最高の名君と称えられた
富と名声と権力の全てを手に入れ
地上の楽園の主人となった
人々の羨望と敬愛と賞賛を
その身一心に受け続けた王となった
だからこそ自分達の力を
信じきってもいる
けれど...第八世界に転生して
ウリエル・エルメス・クロードとして
出会ったあの少年と
重なる様で重ならない
アオナ・エカルラート...
もしかしたら...
私達は新しい時代に飲み込まれる...?
「ふぅー
深呼吸をして
覚悟を決めたマスカリアは
一目散にイムと逃げ出した
「...さて私はこの力を
完全な物にするか...
駆けていく2人の少女の背中が小さくなっていき
セクスはホッとした様に艶やかに微笑んだ
...
....
.....
「なんとか逃げられたね?
イムはマスカリアによって身体を
風に変化させて貰っていた
「...急ごう、彼女達は強過ぎる...
悔しさを踏み砕く様に
マスカリアは呟いた