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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
西の大帝国編
128/263

第127階 副産物

「ただいまー


容姿端麗、眉目秀麗

高身長で引き締まった身体

そんな全ての外見的要素を持つ

男からは想像もつかない様な

愛らしくも威厳に満ち品のある

少女らしい声が周囲に響いた


「ハツミー、おかー

って!やばいよ?顔面偏差値!!!


迎えてくれたのはマユナだ

...出かける前とヘアスタイルが違う


「そりゃ、ねぇ?集めたもの


ハツミはその外見的要素を

愛らしい少女の姿に変容させる

彼女がかのミリカンテアの勇者

アオナ・エカルラートだ


「また増えた?


自身の髪の最終仕上げをしつつ

マユナは何かを期待していた


「副産物が...


そう言って複数の手紙やら

先程の女子学生から渡された紙切れを

広げてみせる


「めっちゃ上々じゃん!!


「えぇ...沢山葬った甲斐があったわ


怪しくハツミは笑みを浮かべる


「...本当、外見だけは素晴らしいのね

そいつら


マユナは綺麗なコートを羽織る


「だから、使えるのよ

最近死の感覚が鈍っているみたいで

大変なのよ、平和ボケかしら


クスッと一笑み漏らす


「私も、1日でも離れたら

美のセンスが後退しそうで


マユナはハツミの前で

くるっとターンする


「どう?


「おっしゃれ〜


ハツミは感嘆の声を上げる


「あぁー楽しい!!


御満悦のマユナは

ガッツポーズをしていた



.......ミリカンテアの勇者

アオナ・エカルラートは

魔界の天皇の居城である星闇宮を訪れ

事実上魔界の天皇の後任となった


また自身が滅ぼした神々の世界を

ベースに自らの

都市トーラルカエを建設した

正確には仲間の

三竜王にプレゼントされ

悠々自適で快適な生活を謳歌していた


この都市の完成が内外に

与えた影響は良くも悪くも

著しく大きかった


隣国に人類史最高の国家

西の大帝国が悠然と

その時を刻んでいた...が

彼女にとって眼中に無かった


けれどそんな彼女の思惑を

外れるかの様に

彼女を慕う仲間達は

西への対策に頭を悩ませていた


なにせ西の大帝国を調査し

調べていけばいく程に

人類の英知の結集された

完成された国家を構築していたからだ

過去から未来に及ぶ

人類の無数の英雄達.,,

彼等を軽く凌駕する大英雄達が

一同に集結していた時代...

そんな奇跡を己らで

起こした国家だったからだ


「さて...


ハツミはマユナと別れた後

一人静かに自らの国を見渡していた


トーラルカエの最も高い場所より

更に上空に自身を舞い上がらせた


これは彼女にとって

形式的な儀式の様なもので

己の仲間達を強化する

魔法を行使している

より自然的な進化を促す為だ

そんな成長魔法を与え続けていた


いずれ来るであろう

西の大帝国との激戦に

誰一人溢れ落とさない為に



そしてハツミが闇の住人達を

血で染めていっていたのは

西の大帝国の大英雄達は

人間という理由からだ

人類を自らの手で斬る

感覚を研ぎ澄ませていた


人を斬る事に躊躇したら

まず勝てない

対人戦の心を鍛えていたのだ


互いの影響力は強まり

膨れ上がっていた

それは最早ぶつからずに済む程に

どちらかが圧倒的な強者では無かった

...その筈だった


けれどハツミは感じていた

弱者を無情に斬る事が出来るのか

そう自問していた


それでもハツミは知った

悪なら斬れると...そう確信していた



そしてハツミは跳んだ

時代を過去を未来を


...自身の心への答えを求めて

悪人達を根絶やしにする程に

悪を求めた


この誰もが見付けられず

誰の心にも残らない

歴史の闇の深淵に溶け込んだ

大殺戮の果てにすら

求めた答えは得られなかった


沢山の悪の生を奪い尽くした

実感さえも

ハツミの前での死への近さで

意味付けられる..

命の軽さと共に消え失せていった


弱き者達の死への悲しみも怒りも

圧倒的な力であるハツミの前に

無念を呑み込み恨み辛みと共に

死を迎えていった


「ふふふ..ふふ...ふ....」


ハツミは自らの魔法で創った

氷の靴を履き自身を重い物質に変えて


呻く男に顔に何度も

足で蹴り上げていた


真夜中の話だった


その世界で悪名高い

盗賊団の頭だ


...文字通り頭を潰されていた

完膚無きまでに


人が...寄り付かない

深い深い場所で

一つ二つ三つと

命が失われていった


盗賊団は確かな壊滅へと向かっていた


悪名という恐怖が

歴史の闇にまた一つ蓋を閉めた


時空が切り取られ

囲われた逃げ場の無い

殺戮の為の舞台


氷柱が地獄の針山の様に突き出して

肉を骨を貫いていた



「.....


ハツミは神の奇跡が創ったと

確かに表現出来る男の容姿を纏い

悪人に悪行の限りを尽くした


そしてフッと笑みを漏らした


「...私は西の大帝国の人々に

悪が宿っていれば、斬れば良い

それだけだったのね


それはやるべき事は今までと

変わらないと明確な答えを

見つけた瞬間だった


何故悪を斬るのかと

自身にハツミは問う

その答えはこうだ、

自が生きる為と。

自らの生を確かな物にする為

善は自身を活かす総てだと

結論付けていた

悪はその対比

生きるという本能の中心を

大事にしていた自分に

薄っすらと気付き始めていた


そしてハツミは

気付いている様で

気付いていなかった

自身の力の強大さ故に

自身を止められる者など

どんな次元にも存在しない事を


悪人達への殺戮を

闇に溶け込んだ世界の中で

確かに行っていた

けれど誰もが許した訳では無かった

事実、許したく無かったが

許さざるを得なかった

弱肉強食の本質を体現していた

闇の世界らしい

最もたる存在に成り果てていた

悪行の連鎖はぶつりと鈍く嫌な音を

発し断ち切られていった

確かにハツミによって


ハツミは自身の来たるべき

決戦の舞台への最終調整を行っていた

だけにも関わらずだ


人類が今まで残して来た

苦い文化を踏み躙っていった

けれど実は踏み躙る事を何処かで

望んでいる様にもみえた


今、正に人類史に残る出来事が

起こりうる予兆がこの時

水面下で確かな結果を導き出しつつ

行われていたのであった


悪人達の命と魂を犠牲に

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