第101階 本当の気持ち
人間世界の冬の風物詩
コタツにみかんを再現する
庶民派?魔王グクマッツ
今日の料理は寒い日に
心と身体に染みる鍋の様だった
上機嫌で魔王の従者?の
眼鏡がキラリと光る
金髪碧眼のフラカンさんを
手伝いにいった
「メイドなのですね?」
「......えぇ、正装です」
キラリと眼鏡が光る
これとこれお願いできるかしらと
コップや箸が綺麗に並べられた
「!」
「これでいいかしら?」
「.....転移魔法の無駄遣いね」
大きな鍋を持ちながら
確かにフラカンさんはそう言っていた
「消費する物が無いのだから
使った方が得じゃないかしら?
一日中魔法を使い続けた所で
私は元気だから、
更に研ぎ澄まされるだけよ?」
私はニコッと微笑んだ
「魔力保有限界があって
それを超えると倒れるは
常識じゃ無いかしら?」
「.......魔王を下す次元に辿り着くと
ほぼ無限に魔力があるのよ
そういう次元なの、魔界の天皇って」
「嘘言わないで、貴方からは
魔力が微塵も感じられない!!
............!!!!!!!!」
「こわい....と思わない?
だから、隠しているのに
鍋は持っていってあげるから
少し落ち着いてね、
転生者のフラカンさん?」
「!!!」
フラカンさんは膝を抱えて
怯えた表情で下から私を覗き込んだ
「....フラカンはどうした」
グクさんが腕を組んで立っている
「お疲れの様よ」
「おい....」
グクさんの強い口調が小さく聞こえる
「嫉妬は見苦しいわ
それに貴方が私に負けた事を
根に持っている様ね」
「....グク様、私の不手際です
実力を測り違えました
貴方様が負けたのも
何かの間違いだったと思いたかった...
でも現実は残酷にも突き刺さる」
フラカンさんはグクさんに
笑みを向けた
「....正直、それに関しては
申し訳ないと思っている」
グクさんは悲しげな
表情をしているのが分かった
「...すまない、ゼム達に悪いから
先に食べていてくれ」
「えぇ、お大事に」
「ちょっと具合悪いのか!
あのグク兄の彼女」
はむはむと注ぎ分けられた肉を
頬張るゼムさん
「彼女とかそういうのでは
無いですよ!
"魔王様の剣"と言っていましたね!」
「ねー」
カドゥとケリュがプンスカしている
「....とても愛されているのね
聖獣の国の魔王様は」
容姿も朗らかで声も
凄く聞き取りやすく
好感が持てる
「あぁ!大好き...さ」
「俺...も」
ヨルムとミドが小さく
気恥ずかしそうに手を挙げる
「....ネロの...」
ゼムさんの表情が静止した
そこに現れたのは
エメラルドグリーンの美しい髪が
サラサラと遊ぶ様に舞う大人の
艶やかさを放つ美しい女性が
立っていた
「魔王様と共にティア様の容態を
確認しに行っておりました」
「ティアも仲間だからよろしくな!
それに遅れてすまん!!」
自らの手を勢いよく合わせて
申し訳無さそうな表情をしていた
「ゼム.....ね、ネロは元気かしら?」
周囲を呑み込む様な声だった
食を楽しんでいた、多くの者達が
その声に耳を奪われていた
「おう!ネロがな
グク兄達と国交を結びたいんだって」
「ふむ、ラブアプローチかいな!?
私は出来れば女性が
良いのだけどもな!!!」
冗談を交えてグクさんは
明るく受けながら
フラカンさんとティアさんに
取り皿を差し出していた
「魔獣国としては王妃を
迎え入れる準備をしている
それまでの期間とこれからの話だ」
ネクさんは本の中から
カメレオンの様に舌がのびて
骨付き肉を骨毎
むしゃむしゃバリボリ砕いて
食べてしまった
「ゼムを通じて、今まで通りで
良いではないか?何が心配なんだ?」
フラカンさんの取り皿におたまで
お肉や野菜を注ぎながら
骨付き肉が欲しいとお願いする
シンガちゃんにもにこやかに
骨付き肉を近くの取り皿を差し出し
シンガちゃんに注いであげていた
その際にティアさんにサラッと
了承を得ていたのはグクさんが
愛される魔王の一端を見た気がする
「ネロはティアさんの
安全を配慮してな」
「僕は強い、祝い事までは
魔王グクマッツが責任を持つ」
交渉決裂か、国交が成立しないのは
魔王の我の強さ故かもしれないわね
「それとも、かの魔獣国の魔王が
僕の強さを疑うというなら
挑戦は受けよう、ゼム
これが僕の返答だ
更に言えば基本的に聖と魔は
受け入れられない。
だからティアと、かの魔獣王が
惹かれ合うのは分かる
それが"恋"なんだよ」
注ぎ終わり3人は
いただきますと手を合わせていた
「...書状でゼムに渡してくれないか?
個人としては疑う余地が無いけれど
国として必要だから」
ネクさんは自分のお皿に注いでいた
シンガちゃんが手伝っていたのには
ネクさん本人が"驚愕"のページを
開いて驚いていた
「あぁ、良いよネク、書き方...
分からないから後で教えてくれな!」
ニコッとネクさんに微笑む
「うむ」
バリバリボリボリと骨付き肉の
骨が砕ける音がシンクロしていた
シンガちゃんはニコッと笑っていた
ネクさんはその笑みに気恥ずかしそうに
小さく微笑んで応えた




