第9階 4つの光
(それとエルエルに成ったハツミに
渡しておくモノがある)
スポッと地面から浮遊すると
斗羅はピッと剣の切っ先で空間に
切れ目を入れた
緩やかに落ちてくる
星の様に綺麗な
何か物凄く圧縮された
力の塊の様なモノが
私の手の平にふわっと
吸い込まれていった
(これは...?)
まるで人間世界で貴重な
宝石の様だった
(ダイヤモンドとルビーにサファイア
それにエメラルドと呼んでいる
単純に似ていたし
それにとても綺麗だったから)
キラキラと燦然と輝くそれは
重さは無いがとても深く根深く
空間に根付いていた
(これはまるで命)
そうメイユールの魂に
形は違えど材質と輝きが
とても似ていた
(そう、かつて名を馳せたエルエルの
想いが詰まったモノだ
扱い方にだけは気を使ってくれ
綺麗なだけじゃない)
斗羅の言う通りそれは
何か恐ろしさやおぞましさも
光として感じられたからだった
苦しみ嘆き憂い阿鼻叫喚
痛み恐怖....日常、そして
エンシェントルーラエルフ族の繁栄と幸福を願った祈り.......
(...最強以外に興味が無かった俺には
分からなかった、ただただ
自分と関係の無い種族が人の業によって
絶滅に近い状態になったと......
でも俺の仲間の神に近しき龍がこう言った
語り継ぐべく歴史が非業の歴史が
この世界に刻まれた
この所業は人が人に行う可能性も
十二分にあり得ると
その時にその仲間の龍の願いにそって
いつか生きているエルエルに
託し知って貰おうとそして
...もうこれ以上死んだエルエル達が
人によって辱めを受け蹂躙されぬ様に
手向けさせて欲しいと
俺はその場から離れたかったから
後は任せた
後日その4つの宝石の名を冠する
それを受け取った後に
俺がエルエルの地に出向いたら
...本当にその世界はおろか歴史ごと
くり抜いて宝石にしたみたいだった
まるで今のハツミの涙の様に)
私は押し黙っていた
自分の頰を涙が一筋伝う感触が
明確な重さを持って地に吸い込まれた
いかに私が何の気なしに
同次元転生したかを思い知らされた
けど...
(俺と同じ様に、ただし全てどうするのか
決めるのはハツミ自身だ
俺とエルエルはハツミの人生に
関係無い)
「......ふざけないでよ...
私が決めていい?
あー!そうね!
そうさせて頂くわ!!
私がこの世界を脅かす
史上最低の魔王になっても
文句無しだからね!!!」
私は念話を忘れていた
悲しみとエルエルの辿って来た
歴史の重みの辛さを感じて
(それも含めて許すと言った)
斗羅は笑っていた
ニコニコと
「魔王なんて面白そうですね〜」
マスカリア...?
「三頂の次は魔王の配下
それも面白いわね」
マテハも
「勇者攻略どうするよ?」
マユナも
「私はしもべのドラゴンに乗って
みたいかな...?なんて」
イムも
4人とも笑っていた
何を抱え込んでいたのだろう
私は
「ねぇみんなにお願いがあるの...」
私は
マスカリアにエメラルドを
マテハにサファイア
マユナにルビーを
イムにダイヤモンドを
それぞれエルエルの事を添えて渡した
一緒に背負って...
1人じゃ苦しいし辛いと...
その後
私は
マテハ達に手を引かれ
この城の玉座に招かれた
カゲード・ゲイスダリゲードは
人ならざるモノだった
倶全・ゲイスダリゲードは
人に近しきモノだった
倶全君は私と同様
別世界の声が聞こえる
目覚めを既に完了した人でもあった
「お初にお目にかかります
ゲイスダリゲードの名を持つ者達よ」
私は深々と頭を下げた
玉座に座する
薄い水色に中心に深々とした
漆黒の黒い線が入る
ローブで全身を覆い隠していた
カゲードは声ならぬ声で
頭に言葉を響かせた
(ワタシは創られた存在だ
手足顔を持つ種族とは別種とし
この地に座し
魔皇ミラース・ラーバ・ラーサ様の
命にのみ従う)
「......」
カスッ
「え?」
イムが呆けている
カゲードの眼前の床に
ゲイスダリゲードが突き刺さっていた
斗羅...分かったわ...
私はその剣を私の右手に移動させた
(魔皇様よ...お姿をお見せ下さい
貴方様と過ごした日々に対する
感謝の念を伝えられぬ悲しみを
どうか拭わせて下さい...)
カゲードは泣いていた
涙は流れずとも
命に従いこの地に座してきた身として
それはこの場にいた
全員が理解していた
溢れ落ちるはずも無い涙無き涙を
(カゲード・ゲイスダリゲードよ
僕の望む最強の1人よ...
アカナ・エカルラートの妹である
アオナ・エカルラートに付き従い
僕と想って命に従ってくれ
僕こそ感謝を送る
ありがとう............)
斗羅の声はカゲードのみが認識出来た
(答えは出たぞ...
アカナ・エカルラートの妹の
アオナ・エカルラートよ
主君の命に従い
これより主とする)
「......より............
........................ん」
倶全君が何かを言っていた
私は声が小さくて
聞き取れなかったのだ
「魔皇より許しが
出たんだね、父さん?
と言っているみたい
きっとそうだよ!
倶全!!」
イムがなんだか
嬉しそうに喋っていた
倶全君とカゲードさんは
基本念話なので
なんと返答したかは分からない
「......くよ
...にで......」
恐らく念話の答えだろう
むむむ
ついて行くよ
旅に出る
と言っていると
マテハが耳打ちしてきた
「そしたらカゲードさんは
この地を守護する事!」
(主に従います)
おそらくカゲードさんは
よっぽどの有事が無い限り
この場にいて頂く方が
全てにおいて好都合だと私はふんだ
このカゲードさんは私が出会って
きた中で父を除いて最強の力を
持っていると感じているからで
おいそれと動かす訳にもいかない
念話が使えるというのも大きい
よくもまぁこれだけの
逸材がいたものね
(ハツミリの前身いわば
プロトタイプ
俺が創ったモノ達の全ての死が
この場所に集まり
更に凝縮し圧縮する
それが
カゲードとゲイスダリゲードの
強さの正体の一部だ
それに"神造人間"としても
プロトタイプも兼ねていた
コミュニケーション手段を
念話とはしているけど)
(力に関する素体という事ね)
斗羅がコクっと頷いた様な気がした
私達は次の方針として
ドゲートさんの書簡に記してあった
闇一族の城を目指した