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『世界』と『異世界』  作者: 黒服先輩
第二章 エルフの森
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城塞都市ペリカ


 魔導車に乗る達也たちの前に現れたのは、白を基調とした巨大な円形型の壁。厚さにして二十メートル、高さにして八十メートル程、さらには直径1キロ近くという、まさに鉄壁の城塞。見上げる程ある壁の一箇所に、中へ入る入り口はあった。

 数人の見張りらしき人物たちが立ち塞がる、十メートル程の大きさの入り口。達也たちの乗った魔導車はそこを目指して一直線に進む。


「………ん?ありゃあなんだ?」


 そう口にする達也の目に飛び込んで来たのは、城壁の上に等間隔で設置された一軒家程度の大きさの建物だった。

 見張り台のようにも見えたが、達也はそれがただの見張り台でないことを瞬時に悟る。


「あれは結界塔です」

「結界塔………?」


 初めて見たものに興味を持つ達也に、信良は物知りげに話す。


「城塞都市ペリカは、城壁に設置された十八の結界によって外の魔物からの攻撃や侵入を防いでいて、結界塔はその結界を守る為の物です」

「なるほどぉ………しかし、破壊されることはないのか?」


 信良の説明を聞き、新たな疑問を抱く達也。対し信良は当然のことを話すかのように、その疑問に応える。


「結界は一つ壊されても最悪他ので補えるようですし、第一結界は城壁の内側からでしか破壊出来ません」

「ほお、賢いこったぁ」


 納得する達也。

 車内に響き渡る他愛ない会話からは、彼らが魔物を狩るという何とも物騒な任務を行う者達だという考えを薄れさせる。



  ■□■□■□



 しばらくすると、魔導車は城壁内の入り口へと辿り着く。見張りと思われる者達から身分を確認されると、異界調査団ということで一般の人々よりも楽に入ることが出来た。

 入り口を潜り抜けると、そこはまるで別世界。多くの者が見慣れてしまった高層ビルを初めとする多くの現代建築から、魔導学を取り入れた近未来建築。城壁外から完全と言って良いほど切り離されているこの国は、ここが異世界であることを忘れさせる。

 そんな城塞都市の中で一際目立つ、中心の高台に建てられた建造物。現代建築などが見受けられる中でファンタジーの雰囲気を醸し出すそれは、王城だった。


「この城塞都市の王、ペリカ様の住まわれる城です」

「ほう、これまたご立派ですこと」


 信良の説明に対し、達也は率直な感想を述べる。


「なんでしたら、支部行く前に行ってみるっスか?」


 そう運転席から軽い感じで話しかけてきたのは、相変わらず名前と見た目の似合わない男、武蔵だ。武蔵のその問いに、達也は興味をそそる。


「入れるのか?城だったら手続きとか必要だろ?」


 達也の当然とも思えるようなその質問。武蔵がそーですよねーといった反応を見せる中、信良は顎に手を当て、横に座るジャックとコソコソと話し合う。さらに横で、エリスは聞き耳を立てている。

 少し時間をかけて考えると、信良は運転席の武蔵に話しかける。


「いや、向かうとしよう。恐らく、あの人も城に来てるはずだ」

「……分かりました。了解っス」

「あの人………?」


 信良の提案寄りの命令に、武蔵は了承する。その会話のあの人という言葉に反応する達也。


「達也さんがよく知ってる人ですよ」

「………ん?」


 ジャックの付け加えるような言葉も、達也にあの人というのが誰かを気づかせることは叶わなかった。



  ■□■□■□



 異世界とは思えない建物が立ち並ぶ放射状に広がる車道を少し進むと、中心部の城に辿り着く。城壁程ではないが高く建てられたその城の入り口と思われる門には城壁入り口のように警備員らしき者達が居るが、魔導車から降りた信良が彼等と何かを話すと、警備員達は連絡で話し合う様子を見せる。そして少し話すと城内に入る許可を貰えたらしく、達也たちは城内に入ることが出来た。

 城内の駐車場に魔導車を停車させると、達也たち一行は魔導車から降りる。

 下車した達也は不意に城の最も高いところ、赤い屋根の先端部分を見上げる。見上げるその目に映るのは、白い鳥や雲が飛び交う青空。そして何より目を引いたのが、城壁内に広がる城や街を覆い被さるように描かれた、巨大な魔法陣だった。しかし達也は、それに見覚えがあった。


「結界………それもかなりの強度みたいだな」

「流石達也さん。見ただけで分かりますか」


 独り言のように呟いた達也に、信良は感心するように語りかける。そして、その結界についての説明を始める。


「あの結界は結界塔からの魔力を供給することで強度を増しています。万全の状態でなら、神話級の魔法でもないと破壊できません」

「ほお、正しくこの城塞都市の番人ってところか」


 素直に感心する達也。それも、自分の視界に自分の存在など霞んでしまう程の存在感を放つものがあれば当然と言える。

 さて、達也たちは駐車場から続く城内の広間へと移動する。城の内部構造は白い大理石で作られた柱で支えられた天井と壁、更には埋め尽くす程の彫刻やら、城というものを絵に描いたような構造。

 広間は真ん中に二方向に割れた幅広い踊り場付きの階段があり、その階段は二階へと続いて居る。

 信良たちはその空間で上から吊るされた純金のシャンデリアなどの高級品に目がいく中、達也は二階へと続く幅広い階段の前にこちらを向いて佇む、一人の老人に目がいった。清潔感ある執事服を着た、腰に一本の剣を下げる白髪の老人。しかし達也はその老人から、異様な気を感じた。


(………強いな、あの人)


 自然と心の中でそう呟く達也。それは達也が幾度となく戦い続けてきた中で身に付いた、強者の感というものだった。

 老人は達也たちのことを見つけると、達也たちがその前まで来るのを待ち続ける。そして達也たちが老人の前まで歩ききると、信良が先に口を出す。


「突然の来訪に出向いて頂き、ありがとうございます」

「いえいえ、構いませんよ」


 信良の感謝の声に、老人は快く応える。


「こちらも貴方方に用がありましたので、手間が省けました」

「用………ですか?」


 老人の口から出た意味深にも感じれるその言葉に、信良は自然と声を漏らす。


「はい。特に、そこにいらっしゃる方にですかね」


 老人は達也に僅かな笑顔を浮かべながら、そう口にする。その言葉に達也は頭の上に?を浮かべ、周りの者は流されるように達也に目をやる。

 それに達也が質問しようとすると、老人の言葉がそれを遮る。


「とりあえず、こんな所での立ち話もなんです。応接室に参るとしましょう」


 老人の提案に達也たちは言葉を発さずとも了承すると、老人は付いて来いといった雰囲気で背後を振り向き、階段を登り出す。

 達也たちはその背後をついていくように歩いていくと、老人は突然何かを思い出したかのように踊り場で立ち止まると、再びこちらを振り向く。


「おっと、私としたことが、名乗ることを忘れてしまっていました………。

 私はベルナール、この城での執事長を務めております」


 ベルナールと名乗る老人に、達也はふと違和感を感じながらも、再び階段を登り出した。

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