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『世界』と『異世界』  作者: 黒服先輩
第一章 隊長の帰還
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闇夜の強襲


 0番隊の者達とギルドで食事を摂り別れた後、達也とシアはそこから少し離れた場所にある宿屋の部屋に居た。

 宿屋はレンガや木材などで建てられており、RPGなどに登場しそうな見た目をしている。クリームのような色合いの木材で作られ、床には赤がかったカーペットが敷かれている。


「いい部屋だなぁ」


 二人は部屋に置かれた大人二人分程の大きさのベッドに腰かけくつろいでいた。

 既に時刻は9時をまわり、シアは睡魔に襲われかけていた。そのためだろうが、横に座る達也に自分の身体を任せるように寄りかかっている。


「寝てもいいんだぞ」

「……ん、大丈夫……です」


 達也はシアのその姿を見兼ねそう声をかける。しかしシアは眠気に抗おうと、どうにかして意思を保ち続けている。


「シアはいつも眠くなるの早いんだから、無理しない方がいいよ」

「無理なんて……して……ません……」


 そう言いつつも、シアは身体の力を抜いていく。自分の手で目を擦るその動作から、今にも寝てしまいそうなのが分かる。

 達也はシアをベッドの上まで動かし、枕に頭を乗せ胴体に布団を被せて寝かせようとした。シアはそれには抗おうとはせず身を任せ、達也の望み通り夢の中へと入っていった。


「………にしても、今日はだいぶ寝るの早いなぁ。まあ、ジャックと信良とは久しぶりに会ったし、他の隊員とは初めて会ったしなぁ……疲れてたんだろうなぁ」


 達也は一人そう呟きながらシアの髪を撫でる。

 しばらくすると、部屋のドアをノックする音が響いた。何かと思い達也が近づきドアを開けると、そこにはジャックが立って居た。


「おう、どうした?シアが寝てるから静かにしてくれよ」

「いやぁ、ちょっと話したいことがありましてぇ………」

「話したいこと?………まあ、とりあえず入れよ」


 そう言って達也は、部屋にジャックを招き入れた。達也とジャックは部屋に置いてある机を隔て椅子に座る。

 達也は部屋に置いて会ったワインを取り、ジャックの前にグラスを置いて注ぐ。対して達也は自分の前に置いたグラスに牛乳を注ぐ。


「食事の時も気になりましたけど、達也さんまだアルコール飲めないんですか?」

「弱いんだよ。知ってんだろ?」


 二人はそう言いながら向かい合って座る。シアを起こさないようにと、少し小声で話し合う。


「んで、話したいことって何だ?」

「話したいことっていうか……聞きたいことなんですけどね」


 ジャックはそう言ってからグラスを手に持って口に流し込むと、喉を整えてからまた再び話し出す。


「……達也さんがドラゴンの他に探してる奴ってのは、いったいどんな奴なんですか?」

「………それについてか」

「やっぱり気になっちゃうんですよねぇ」

「………まあいいか。教えてやるよ」


 達也はジャック同様にグラスを手に取り、中に入っていた牛乳を飲み干す。そして真剣な眼差しをジャックに向けて、口を開く。


「……その男は、異端教の六司教の一人だ」

「!?」


 その一言で、ジャックの脳裏に電流が走る。


「お前も知っての通り、異端教は六人の司教にまとめられている。しかしながら、六司教はそれぞれ考え方に違いがあり、異端教というよりは幾つかの組織がくっついたみたいになっている。

 俺が探している奴ってのは、その六司教の中で一番何を考えてるか分からない奴だ。部下は居なく、世界中を歩いて周る存在。正体を見た者は誰一人として居なく、その存在全てが謎に包まれている」


 達也の語りに、ジャックはただ聞き入ることしかできない。ゴクリと唾を飲み、そして再び達也の語りに浸る。


「アイツについて俺が知ってるのは、その服装、持ち物、性別、それぐらいだ。あと、そいつがなんて呼ばれてるかだな。実質名前みたいなもんだろうけど………」

「……その名前ってのは……?」

「ああ、その名前は――」


 やったのことで声を出せたジャックに、達也が名前を口に出そうとする。その時だった。達也が名前を言うこと叶わず、港の方から轟音が上がった。

 轟音は建物の内側まで響くもので、部屋の中に居る達也達の耳にも容易く届いた。


「なっ!なんですか!?」


 その音に驚いたシアがベッドから飛び起き、そして辺りを見渡す。その視界には、既に武器を持った達也とジャックの姿があった。


「へっ……達也さん……と、ジャックさん?」

「シア、いつでも避難できるようにしておけ」


 その言葉と共に、達也とジャックは部屋の窓から飛び起りる。ちなみにここは三階である。

 驚いているシアを置いといて二人が地面に足を付けると、周囲には魔物の姿があった。魔物は緑色の肉体が盗賊のような服から露出して居て、少々小柄であるが、手には剣を持っている。中には杖を持ったのも居た。


「ジャック、ゴブリン8体、シャーマン1体確認。ゴブリンの方を頼む」

「了解!」


 その会話が終わると同時に、二人に気づいたゴブリン達が斬りかかる。しかし達也はそれには見向きもせずに、杖を持ったゴブリン目掛けて突っ走る。


「『バャケエンデエン(爆炎弾)』」


 杖を持ったゴブリンは何かを言うと、杖から炎の玉を作り出して達也目掛けて飛ばす。

 すると達也は鞘から刀を抜き、放たれた炎の玉を真っ二つに切り裂き、そのままゴブリンの首を切り飛ばす。ゴブリンは首から血を吹き、地べたに力無く倒れ込んだ。


「……そっちは?」

「はい。終わりましたよ」


 達也はジャックの方を振り向くと、そこには血みどろになって倒れ込んでいるゴブリンと、服に返り血が付いているジャックの姿がある。

 ジャックの右手には、一見して槍のような形状をしている武器があった。その武器に多量の血が付いていることから、その武器でゴブリン達を倒したのだと思われる。


「ゴブリンが居るってことは、さっきの爆発――」

「コイツらの仲間がやったんだろうな。コイツらも馬鹿じゃないし、恐らくあと百体は軽く超えるだろうな。って、言ってるそばから……」


 達也の目線の先には、建物の陰からぞろぞろと出てくる多量のゴブリンだった。先程の杖を持ったゴブリンも居れば、ハンマーを持ったものも居た。


「………達也さん。ここは俺に任せて、達也さんは爆発の方に行ってください。向こうには信良とかも居ますけど、何か嫌な予感がします」

「いいのか?」

「俺の方は問題ありませんよ。それに、シアちゃんとかに怪我させたら怒るでしょ?」

「五体満足で居られないと思え」


 達也の低いトーンでの声に少しビビりながらも、ジャックはゴブリンに槍の先を向ける。


「まっ、俺弱くはありませんから。達也さんの後輩達のこと、頼みましたよ」

「おっ、そうかアイツらも俺の後輩か………よし分かった、ここはお前に任せるよ。ただ――」


 直後、数台のゴブリンが達也目掛けて飛びかかった。……と思ったその時、飛びかかったゴブリン達の上半身と下半身が真っ二つ切り離され、地べたにズサリと音を立てて転げ落ちた。気づけば、達也は既に刀に付いたゴブリンの血を振り払っていた。


「お前も俺の後輩だ。そして今や隊の副長、ヘマしちゃ許さねえからな」


 達也はそう言い捨てると、ゴブリン達の空いた隙間を走り抜けて行った。振り返ることなく、一直線に進んで行ったのだ。


「分かってますよ、相変わらず心配性なんだから」


 達也が走り去って行ったのを目視したジャックは、自分を睨みつけるゴブリン達を見ながら、槍を足元へと振り払う。


「0番隊副長ジャック・ナインツ、推して参る!!」


 その言葉と共に、ジャックはゴブリン達目掛けて突撃して行った。

 1つの港町にて、ゴブリンと0番隊の戦いが幕を切ったのである。




―魔物紹介―


 ゴブリン 危険度D


 小柄な魔物で、大人でも身長が百五十センチくらいの個体が多いです。緑色の肉体や、トンガっている鼻などが特徴です。

 彼等は知性がまあまあ高いため、学習をしたり、作戦を考えたりも出来るのです。そのため、大群ともなればかなりの危険度となります。

 作中にもあったように、ゴブリンには他とは変わった個体が指揮をとっていることが多いです。


 シャーマン……他よりも知性が高く、魔法などを扱えます。


 スミス……ゴブリン達の武器を作ったりする役目です。大きなハンマーを持っているので、攻撃力は高いです。


 レンジャー……投石をしたりなど、遠距離からの攻撃をしてきます。


 他にも幾つかの個体があり、それぞれの危険度が一二段階上だと言われております。また、ゴブリンの大群を束まるゴブリンキングと呼ばれる個体があるのですが、その危険度はAに分類されます。

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