表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

2016年/短編まとめ

四つの色と光と人に捧ぐ

作者: 文崎 美生

一番まとめ役を買って出てくれるのは青。

一番元気な声を張り上げるのは黄色。

一番ツッコミが切れているのは赤。

一番落ち着いて周りを見るのは緑。


ぼんやりと見つめる先にある四つの色は、ハッキリ言って個性が強い、強過ぎる。

強過ぎる個性は毒になるとも思うけれど、その四つを混ぜ合わせて彼ら等だと思うと、それが毒だと思うことはない。

楽しそうだなぁ、とは思うけれど、悪いことだとは思わずに、騒がしいなぁ、と笑うけれど、煩わしいと眉を寄せることは決してないのだ。


豪快な笑い声を響かせるサングラスの彼は、瞳こそ見えないものの自身の持つ雰囲気に優しさを含ませて、その唇をいつだって笑みに象らせている。

慌てて喋って何が言いたいのか分からなくなっても、その笑い声で誤魔化すから、私の声帯も震えて笑い声に変わった。


サラリとなびく金混じりの茶髪に、中性的な顔立ちは、初めて見た時に性別を間違えてしまったくらいに綺麗だと思う。

無邪気に見せられる笑顔に、ぎこちなくも笑顔を浮かべてしまったことは数え切れない。


少し迫力のある鬼のお面からは、なかなかに鋭い刺と毒が吐き出されるが、博識な面が浮き彫りになるように、小さな豆知識も飛び出てくる。

誰よりも素早く誰かの言葉に、ボケに反応して、刺や毒を含んだ言葉を投げながらも笑うから、凄いなぁ、なんて思ってふはっ、と吐き出す息と共に笑い声が出てしまう。


些か人間とは思えないパーカーで上半身全てを覆ってしまった状態から飛び出る、どうしてと言いたくなるようなガス抜きにも似た言葉は、周りの空気を全て緩やかなものに変えていく。

ぼんやりとしたような、自身の天然っぷりに気付いていないような薄い笑い声に、どうしても眉が下がって情けない笑い顔になってしまう。


どんな形であれ、彼らは私に笑顔をくれる。

四人で一つのように、バラバラの色が微妙な分量で混ざり合うのを、私は何度も何度も見ていた。

チームワークなんて言葉は、彼らにあってないようなものだけれど、何故だろう、楽しそうで羨ましい。


「ははっ、あははっ……ふふっ」


くすくす溢れる笑い声を聞くのは私だけ、私しかいない。

楽しそうな声は耳にこびり付いて離れてはくれないけれど、決して不快ではなくて、幸せだなぁ、と目を閉じてしまう。

いつだって彼らは賑やかな場所をくれて、見せてくれて、明るい何かをバラ撒くのだ。


「……また、また、冬に」


四人の笑い声が重なった。

豪快な大きな笑い声は青、元気過ぎる高い笑い声は黄色、声変わりをしたのか疑問を持つ少年みたいな笑い声は赤、含みを持たせたような丸みのある笑い声は緑、全く違う笑い声が四つ。

それに釣られるように私も笑って、流れ落ちる雫を袖で拭う。


彼らの四つの光が重なったステージは闇に包まれて、走り切った夏が終わる。

また、また、冬に――会いましょう。

四つの色と光に手を振って見れば、笑い声が大きくなった気がした。

またね、そう、聞こえた気がした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ