四つの色と光と人に捧ぐ
一番まとめ役を買って出てくれるのは青。
一番元気な声を張り上げるのは黄色。
一番ツッコミが切れているのは赤。
一番落ち着いて周りを見るのは緑。
ぼんやりと見つめる先にある四つの色は、ハッキリ言って個性が強い、強過ぎる。
強過ぎる個性は毒になるとも思うけれど、その四つを混ぜ合わせて彼ら等だと思うと、それが毒だと思うことはない。
楽しそうだなぁ、とは思うけれど、悪いことだとは思わずに、騒がしいなぁ、と笑うけれど、煩わしいと眉を寄せることは決してないのだ。
豪快な笑い声を響かせるサングラスの彼は、瞳こそ見えないものの自身の持つ雰囲気に優しさを含ませて、その唇をいつだって笑みに象らせている。
慌てて喋って何が言いたいのか分からなくなっても、その笑い声で誤魔化すから、私の声帯も震えて笑い声に変わった。
サラリとなびく金混じりの茶髪に、中性的な顔立ちは、初めて見た時に性別を間違えてしまったくらいに綺麗だと思う。
無邪気に見せられる笑顔に、ぎこちなくも笑顔を浮かべてしまったことは数え切れない。
少し迫力のある鬼のお面からは、なかなかに鋭い刺と毒が吐き出されるが、博識な面が浮き彫りになるように、小さな豆知識も飛び出てくる。
誰よりも素早く誰かの言葉に、ボケに反応して、刺や毒を含んだ言葉を投げながらも笑うから、凄いなぁ、なんて思ってふはっ、と吐き出す息と共に笑い声が出てしまう。
些か人間とは思えないパーカーで上半身全てを覆ってしまった状態から飛び出る、どうしてと言いたくなるようなガス抜きにも似た言葉は、周りの空気を全て緩やかなものに変えていく。
ぼんやりとしたような、自身の天然っぷりに気付いていないような薄い笑い声に、どうしても眉が下がって情けない笑い顔になってしまう。
どんな形であれ、彼らは私に笑顔をくれる。
四人で一つのように、バラバラの色が微妙な分量で混ざり合うのを、私は何度も何度も見ていた。
チームワークなんて言葉は、彼らにあってないようなものだけれど、何故だろう、楽しそうで羨ましい。
「ははっ、あははっ……ふふっ」
くすくす溢れる笑い声を聞くのは私だけ、私しかいない。
楽しそうな声は耳にこびり付いて離れてはくれないけれど、決して不快ではなくて、幸せだなぁ、と目を閉じてしまう。
いつだって彼らは賑やかな場所をくれて、見せてくれて、明るい何かをバラ撒くのだ。
「……また、また、冬に」
四人の笑い声が重なった。
豪快な大きな笑い声は青、元気過ぎる高い笑い声は黄色、声変わりをしたのか疑問を持つ少年みたいな笑い声は赤、含みを持たせたような丸みのある笑い声は緑、全く違う笑い声が四つ。
それに釣られるように私も笑って、流れ落ちる雫を袖で拭う。
彼らの四つの光が重なったステージは闇に包まれて、走り切った夏が終わる。
また、また、冬に――会いましょう。
四つの色と光に手を振って見れば、笑い声が大きくなった気がした。
またね、そう、聞こえた気がした。