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おまいう

「なるほど。アイリシアの言いたいことは分かった。で、それを聞いたうえで一言、言いたいと思う」


「何でしょうか?」


「おまいう」


「……は?」


「ん? あぁ、何だ。お前が言うな、ってことだ」


「…………シオンさんは時々、妙な言葉を使いますね。どこで覚えたんですか」


 異世界です。


「というか、何ですか? 何で私が言うな、という話になるんですか」


「んー……? だってさ、アイリシアが言うにはアスタとアイリシアの両方を好きになる人間なんかいないってんだろ? そんなのちゃんちゃらおかしいだろう。だって、言ってる当人がそうなんだから」


 そうなのだ。


 アイリシア・ココレット。先程の語り口から分かるように、彼女は自らの才能や価値観を悲観などしていないし、ある種誇りを持っている。


 しかし、同時にアスタのような人間も認めている。


「……」


 アイリシアは驚いたような顔をして、先程から口を開こうとして、そのまま言葉に出来ていない。


 何だ? まさか気づいてなかったのか?


「いえ、待ってください……ええ。ですけどそれは兄妹のそれであって」


「あーったく。面倒だ。じゃあここにも一人いる。アイリシアのこともアスタのこともどっちも好きだって思うやつがな」


 ぐっと俺は自分のことを指差す。


「なっ!? い、いい加減なこと言わないでください」


「いい加減なもんか。大体だな。人が集まりゃそりゃ反りが合わん奴の一人や二人はいるもんさ。けどな。それでも上手いやり方ってやつを見つけて力を合わせてかなくちゃならねえ。この学園で学ぶのはそこだ。まあ? 師匠にゃあ分からんことだろうけれども?」


 笑いをこらえるように口元を抑える。


「……シオンさんには分からないだけです」


 アイリシアはぷいっと顔を背ける。


「悪いな。出来の悪い弟子なもんでさ。だから、教えてほしい。アイリシアと、アスタと。一緒にいてそれの何が悪いのかってさ」


 アイリシアの手を取る。そして、その蒼い瞳をじっと見つめる。


「……シオン、さん?」


「……っと、何だ?」


 いかん。ちょっと考え事をしてしまっていた。何たる失態だ。大事な時だと言うに。


 そうしてアイリシアはさらにじぃっとその深い蒼の瞳でこちらを見つめ、やがて一つ溜息を吐いた。


「仕方ありませんね。不出来な弟子の顔を立てるとしましょう」

 


シオンはアイリシアの語った想いの丈を無視しているわけではありません

ただ、シオン自身も信じたいんです。何をかは多分次回で

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