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吹雪く華ブリジット・B・B・バリアリス

久々の設定追加です

よかったら覗いてください

 一応、現状はお互いに把握したようだ。不幸なすれ違いなど起こらなかったようで何よ……いや、問題はあったか。


「アレムだったか? こいつどうやってここに来たんだ?」


 隠密行動とか出来る程器用とも思えないし、この迷宮都市を通らずに来たとしか思えないんだよな。となると、中から? どうやって?


『実はこの学園の創設に関して世話を焼いたことがあっての。その時に、助言の為に逐一出向くのが面倒ということで、迷宮の中に転移点を設定したのじゃ』


「私は知りませんが?」


 いかに旧き支配者同士であっても迷宮内にそんな簡単に移動できる手段があってはまずい。防衛的な問題で。


『であろうな。まあさすがに迷宮のコアまで行けば分かるようには設定してあったのじゃがな。それが裏目に出た』


 前もって消しておかなかったことから鑑みて、バスティア・バートランスにとっても予想の外だったのだろう。


『改めて礼を。アレムを助けてもらって感謝する』


 映像に映し出されている吹雪く華は、確かに頭を下げた。


 これにはさすがに、クロードですらも面食らう程だった。


「謝らなくてもいいさ。悪役令嬢バスティア・バートランスの件はこっちの不手際だしな。寧ろこっちの方が謝らなきゃならないくらいだ」


『……なるほど。それは結構。そういうことであればこちらの頼みも申し出やすいというもの』


「頼み?」


『まあ薄々勘付いておるじゃろうが、アレムの帰還が困難なのじゃよ。歩いて帰るわけにもいかぬしな』


 アレムが転移した地点は幻影の迷宮の奥にあるらしく、警戒を強めているであろう迷宮の中、さらにアレム自身もバスティアに力を削り取られ十全な力を発揮できない状態らしくしばらくは拠点を構える必要があるらしい。


「なるほど。その住居を用意してほしいということですね」


『いやいやそこまでは言わんよ? 幻影の君と同居で構わぬ』


 今まで沈黙を守っていたアレムにガタッと動揺が走る。


「ハハハ何を言っているのですかねこの方は」


『わらわは、同居で構わぬと。そういったのだぞ』


 あ、命令ですねこれ。


「まあ待ってくれ。一応、女の子なんだしあるだろ色々」


「アレムさん、女の子だったのですか!?」


 マリア、今その事実を知ったらしい。


『その点については問題はない。アレムの創造主はわらわであるが故に、その感じるところは伝わるのじゃよ。それで、じゃ。今までのアレムとは比較にならないほどに感情の揺らぎを観測しておる。大変興味深い現象じゃ。わらわはそれに期待している』


「……期待?」


 思い出したのはアレムの心象風景。



 

――造られた生命。その構造は極めて効率的だ。余計なことを考えず速やかに命令を実行し、決して裏切りもしない。




 そして俺は胸に何かを抱えていた。


 もしも――この目の前の旧き支配者が、彼女のことを道具として扱っているのであればそれは許せないと。


 わざと感情というものを作らなかったり。はたまた、興味深いからといって、創造主の無茶ぶりに無理矢理付き合わせるだとか。そんなことはあってはならないだろう。


 そもそも、何故、一体でこの場に送り出したのか。バスティアなどの幻影の迷宮を取り巻く状況を知らなかったとしても、冒険者もいるし、何者かと敵対するような事態は容易に想像できるはず。にもかかわらず……


「いえ。だからこそアレムさん一体だったのでしょう。これでもアレムさんは氷華の迷宮の守りの要、ひととは起源からして異なる吹雪く華ブリザードフラワーの力を通し、再現することが出来る数少ない存在です。アレムさんを信頼されているからこそ、今回のような任務に就いたのです……それにお忘れですか? 彼女は、アレムさんの為に頭まで下げたのですよ。それは、公私ともに大切に思っていなければできませんとも」


 クロードの言葉にはっと我に返り、吹雪く華の方を見る。


『……精神、魂……ましてや人工のものともなればその成形は難しい。そもそも専門外じゃしな。運よく、健やかに育てばいいとこれまで何とかしてはみたもののなかなか上手く行かなんだ……』


 しみじみと、誰に聞かせているものではないかもしれない独白が聞こえる。


 そうか。吹雪く華、ブリジットは……まあ、油断するわけにもいかないが色々考えて、遠回りではあるがそれでも、その氷に覆われた様な心内の中には確かに温かいものがあるのだろう。


 アレムはきょとん、としている。分からないのだろう。こういう右往左往が。ああ、もどかしい。そして、このもどかしさを、ブリジットはきっと……


「わかった。引き受けるよ……それにあたって話を通しておきたい人間が何人かいるんだが構わないよな?」


『構わぬが……』


 何だ? ちょっと口ごもったぞ。



『………………アイリシアには秘密にしておいてくれぬかのう』



「はい? 何で?」


『いや、じゃからその……』


「ん~……? どうかしたんですかねぇ」


『さてはお主分かって尋ねておるじゃろう!』


 さあねぇ。ヤダもう何でしょうねこのツンデレロリババアは。


 やっぱり何だかんだで心配だったんじゃんか。アイリシアのこと。それでひっそりと様子うかがうつもりだったんだろう? バレないように。


 普段、蒼眼の魔女とこの吹雪く華がどう接しているかは分からんが、まあ何か無駄に尊大で、偉ぶってそれで多少後悔してたりとかするんだろう。例えば今みたいに。みっともないところ見せたくないとかさ。


 ま、この点についてはどうせ黙ってるつもりだったからいいんだけどな。どうせこの部屋の外を歩き回らせることは出来ん。学園にも秘密だ。ただ……幻影の君の仲間くらいには言っておかなくてはね、とそれだけの話だ。


『それじゃあのアレム……達者でな』


 立体映像でアレムの身体を一撫でするようにしてから、やがて映像は途切れた。





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