歌姫の帰還
マクシミリアン将軍の視点
短いですね
フィオレティシア様が消えた。
そう内々に報告を受け、私は幻影の迷宮へと向かった。
嫌な予感が止まらない。フィオレティシア様に、真実の一部を告げたことは過ちであったのだろうか。しかし、それでも……ファントムロードがいるのがいるのであれば大丈夫のはずだ、とそう考えていた。
しかし、この幻影の迷宮を調べていくうちに違和感を覚えていた。最初は時代の変化かとも思っていたが次第にその違和感は大きくなっていった。
(何が起こっている……?)
幻影の迷宮の秩序が乱れている……これも少し違う。無秩序を秩序とし、人には理解できないような価値観で以て再統制されていくような。そう、まるで首をすげかえた国家を見ているようなそんな心地だ。
「!」
一瞬、耳に入ったものの危機を察知してすぐさま耳を塞いだ。
危機察知。指揮官のスキルの一つで、自らに不利な攻撃や罠を自動で察知して回避行動をとる。
気を抜いていたつもりはない。が、正体を見極めてからでは遅い現象というのも存在するため、欠かすことは出来ない。
(音……いや、これは歌声?)
事実、正解だったようだ。一瞬だけ耳に入ったものの、頭を揺らされているように響いてたまらない。
(引きずり込まれる……!)
自らの意思を放棄してしまいそうになる。虚無の彼方へと誘われるように、心の中が暗く暗く冷たくなっていくような……
私は…………自らの顔面に拳を叩きこんだ。
「ふぅ」
よし。耳栓を取りだして、気合を入れる。
「長居は出来ないな」
視界の隅に入ったのは、この迷宮に入り込んでいた学園の生徒たち。皆、目に光を失い、奥へ奥へと向かっていた。
やはり、この歌声は迷宮の奥から? それに、こんなことが出来るのは……しかし、そんなことを誰が許している?
「何をやっているのだ…………ファントムロード」
私は誰にも聞かれていないことを確認しながら悪態を吐いた。
シオンがへたれていたせいで想定以上の最悪の事態に
次回、とうとう歌姫の呪いの真実が明らかに




