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ファントムロードはこの中にいる!

伏線を回収してそして整理&推理

まあ真相は多分何じゃそらですがね爆発能力って何をしてるのか分かってしまうとその正体が芋づる式に分かっていってしまう罠

アルトレイア視点です

「それで、アルトレイアさん。一体何の御用ですか」


 解散した後、気になることがあった私は、クロード殿に打ち明けることにした。


 シオンはと言うと……まあスレイがパーティに溶け込むために必要なことなのだろう。そういうことにしておこう。うむ。


「……何かあったのですか? そういえば妙に帰りが早かったようですが」


「ファントムロードに会ったよ」


 紅茶を淹れる手がピクリ、と止まった。


「なるほど」


 クロード殿はすぐさま手を動かし、紅茶を淹れ、自らも席に着いた。


「続きを」


 私はその時の状況をつぶさに説明することにした。


「あの女、フィオレティシア様の呪いがスレイに転移されていることにようやっと気付いたようだったが」


「それはそうでしょうとも。考えてみてください。何故わざわざ呪いを『解く』のではなく『移す』という手法を取ったのか」


「……そうか。言われてみればそうだ」


 そうすれば犠牲スレイを出さずとも済んだし、フィオレティシア様が心を痛めることも無かっただろう。


「呪いと言うのは、かけた人間にとってみればその呪いが解かれたかどうかというのはそれとなく分かるようになっているのです。しかし、呪いを対象に移し替えたとしてもそれを察することは難しい。

 調べてみたのですが、あれは用心深いのと同時に中々に執念深い女のようでして、もし、王女にかけられた呪いが解かれるようなことがあれば、再び、と……それを阻止するための方策であったのでしょう」


「……そういうことか」


 理屈は分かった……分かったが、何とも後味の悪い話だ。まあ、全ては終わったことだ。


「……そうですね。終わった話です」


 クロード殿は、そう言って区切る。その態度にどこか含むところがあったような気がしたが、本題はそこでもなく、深く突っ込むのは止めた。


「そしてファントムロードが現れた、と」


 この時、私はすぐさま出入り口を確認した。


「賢明な判断です」


 やはりそう・・なのか、クロード殿は肯定する。しかし、結果はというと、確認できなかったのだ。ファントムロードが現れた時、幻影魔法によってその戦場の景色は塗り替えられていたのだから。


「……そう悲観することもありませんよ。それはつまり、ファントムロードの作為があったことの何よりの証左と言えるでしょう」


「なるほど。そういう見方もあるか」


 ファントムロードが如何な手段を用いて呪いの空間を中和せしめたか分からない。恐らくあの鐘の音が関係していると思うのか、それは何かしらのアイテムによる作用なのか、魔法によってかそれすらも分からない。それを隠す目的もあったのだろう。


 しかし、それだけではわざわざ部屋全体を幻影魔法で覆う説明にはならない。


 では、何が理由に成り得るか。そう。私は、部屋から新たに誰かが入って来たのか、その痕跡を見ようとした。しかし……それを邪魔された。これはどういう意味を持つのかと言うと


突然現れ出た・・・・・・ファントムロードなどいない」


 分かっているのでしょう? とクロード殿は問い詰める。


 そうだ、これは可能性に過ぎない。しかし、その可能性が出て来た以上、見逃すわけにはいかない。何せ、


「もう一人のファントムロードは、私達の中にいる」


 最初から、ファントムロードは紛れ込んでいた。


 そう考えると、途中からリオンやアスタ達が姿を消されていたのにも説明がつく。恐らく、あそこで姿を現せば自分の正体が露見することが分かっていた。だから、せめてその矛先を逸らすための偽装工作の一端。


 まさかリオンが……? いやそんなわけはあるまい。いや、そう考えが誘導されているのではないか……いかんな。どうにも疑心暗鬼になってくる。


「まああのファントムロードの目的も分からない以上、いたずらに敵意を振りまく必要もありません……ですが」


「分かっている」


 私はここまで至ったことをこの胸に仕舞おうと思う。何もかもがわからない以上、それを打ち明けてはパーティにどうしようもない亀裂が入ってしまう可能性がある。


 とはいえ、私はいつか剥かれるかもしれないその牙をじっと見張っている。それが、私の責任だ。


「しかし、イリューシオン様の力が通用しない、というのは考えものですね」


「そうだな」


 ファントムロードとなれればまた話は違うと思うが、バスティア・バートランスの用いた補助で、シオンの使っていた魔法はほぼ完封されていた。


 いや、あれはあれで目から鱗と言うか、詠唱をほぼ全く使わないため、次の行動にすぐさま移りやすい、遊撃手として中々理に適った使い方だとは思う。


「バスティアの力ですが……恐らく魔法を自らの吸収しやすい魔力に変換し吸収する彼女の得意とする闇魔法です。複雑な術式を施せば処理に時間がかかり、吸収することは出来なくなるはずです」


 なるほど。そういうことであればほぼ魔力の塊を投げているようなものであるシオンにとっては鬼門だったのは分かる。


 しかし……あのファントムロードの攻撃は何故あれで止まらなかったのだろう? 見たところただの爆発の様であったし、それほど複雑な術式が施されているようにも見受けられなかった。何かしらの魔法は必ず使われている、でなければ有り得ない現象の筈だがどうやって……


「まあないものねだりをしても仕方がありませんね。それに、自らに馴染んだ戦闘スタイルでなければどのみち付け焼刃にしかなりません……イリューシオン様の場合、もう少し魔法についての理解が進めば、それだけで大分違うとは思うのですが」


 やはりきちんとした師に見てもらった方がいい、か……


「クロード殿はどうだろう」


「……難しいですね。イリューシオン様はどうにもよく分からない感覚の場所でつまずいているようでそれを指摘するのは困難です」


「やはりそうか」


 分かってはいた。どうにもシオンの力はどこか歪のままに成長させ、どこから矯正すれば今の力を損なわず、さらに力を得ることが出来るのか。


 しばらく話し込み、クロード殿と別れた。

シオンは才能が無かったりはしませんただちょっと特殊なだけです

この辺りのお話は次の章で、今回はその前振りです

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