ジェネラルとペンドラゴンとファントムロード
さて、結果として招待側の不手際となった今回の事態、解決に導くのは巡り巡って俺の役目となる。
若干、理不尽を感じなくもない。
知る人間は少ない方がいいし、とりあえず幻影魔法を使ってマクシミリアン将軍の執務室までペンドラゴンを連れて行くことにした。
ちなみに時間帯としても夕方に差し掛かり、大人数だと誤魔化すのも面倒になってくるのでパーティは解散してある。
「えー、というわけでこちら、円卓の竜騎士王ペンドラゴン氏ですはい」
マクシミリアン将軍は頭を抱えている。やだなーもー。問題解決したんだからもっと喜んでくれなきゃー(棒)。
「まあ、そうだな。お前も色々と大変、なのだろうな」
むしろ同情の目で見られただと!?
「あー。ペンドラゴン。生憎と騎士の流儀など知らぬ身ですがどうかご容赦のほどを」
「いや、それはお互い様と言えよう。国が違えば守るべきルール、慣習が異なるは道理。目に見える振る舞いも確かに重要だが、肝心なのは礼を尽くそうとしているかどうか。その点で言えば、貴殿は弁えていると見た」
二人は握手を交わす。お互い在り様は違えど、こうして武力を背景とした話し合いとでも言えばいいのか、そういう経験はあるのだろう。伊達にGでもないしPでもないらしい。
「こうして直接見えたことで気配も大体覚えました。あなたの動向はこの王都にいる間は把握していると思っていてください。もし不穏な動きを見せればその時は私が全身全霊を持って対処すること、お忘れなきよう」
「そう言われると……貴殿の力を計りたくなってくるな」
「……」
マクシミリアン将軍が無言で陰のある笑いを浮かべる。怖い。
「冗談だ。まあ、興味は尽きないが。こうして言葉を交わしてみて分かるが、貴殿は穏やかな世の中を愛で、慈しみ、そして守ることが出来る男とみた。そのような者に戯れに喧嘩をふっかけるのは……な」
「迷惑ならとうにかけられているのですが……と」
マクシミリアン将軍も愚痴の一つでも言いたくなったのだろう、つい口を吐いて出た様子で、失態に口を押えるが、ペンドラゴンはそれを見て手で制した。
「そうだ、考えてみれば貴殿にも迷惑をかけていたか。この滞在中、何か私に出来ることがあればよいのだが」
「は……そうですね」
マクシミリアン将軍は顎に手を添えて考え込む
ここで断るのも失礼と考えたのか。はたまた、ペンドラゴンの助力という滅多にない手札を得た、将軍としての勘どころか。
「実は今、前途有望な狂戦士の若者を招いているのですよ。出来れば国軍に招きたいと思っているのですよ。まあ、望み薄なのですがね」
「狂戦士……ほう、それは珍しいな」
あー、ペンドラゴン。そいつ実はもう知り合いです。思いっきりやらかしてる相手です。
「とはいえ、私達にも意地はある。若者の選択の如何に関わらず、得難い経験を得てもらいたいと考えていました。とはいえ、最近の騒ぎで、ついつい後回しにしてしまったのですが」
「それは悪いことをしたな」
「いえ。ですから、どうか御助力願えませんかペンドラゴン。あなたの高名な剣の煌きはこの遠く離れた幻影の君の膝元へも届いています」
「……それは、私に貴殿たちの鍛錬に加われ、ということか」
「そういうことです」
あっさり返したマクシミリアン将軍に、ペンドラゴンは呆気にとられたようだった。
「心配なさらずとも、我が軍は生半可な鍛え方をしていないと自負しております。ええ。ペンドラゴンに失望はさせません」
「なるほど。それは楽しみだ」
何か、とんでもないことになりそうな予感。
「それで、ペンドラゴン。宿はどちらに」
「宿は取っていないが」
「……あの、今までどうしていたのでしょうか」
「うん? 固い煉瓦の上に寝そべり、大空を眺めながら風に吹かれ眠るのは中々に心地がいいものだぞ」
野宿! いや野宿ですらない!
「……知ってしまったからにはそのままにはしておけません。円卓の竜騎士に滅ぼされたくはないので」
「ぬ、それもそうだな」
ペンドラゴンさん、否定しないんですかね。
「シオン、ペンドラゴンを王城へと案内してくれないか」
「俺がか」
俺だって旧き支配者の一人なわけで……扱いが雑じゃない? いや、気にしないけどな。気にしないけどな!
「……これから事後承諾で王城への宿泊許可を取らねばならないし、何よりペンドラゴンの存在を秘匿したままで今、展開している捜索を切り上げねばならないわけだが」
「それは何というか……ご愁傷様です」
「なに、心配はいらない。せいぜいクビを切る時の口実が新しく出来る程度のことだ」
それは大丈夫なのか。




