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蒼眼の魔女と幻影の君

 夜も更けてさあ寝ようかとなった時に問題となったのは部屋わけだった。


 アイリシアとアスタの部屋はアイリシアがこの家を出てからアスタの一人部屋となっていて、アイリシアとアレムは客間で寝泊まりしていたらしい。


 で、俺もやってきたわけであるがさすがに三人は手狭というわけで、アレムはアスタと一緒に寝てもらうことになり、俺はアイリシアと客間で寝ることになった。


「妙な気遣いはしなくていいんですけどね……」


 アスタと俺、アイリシアとアレムで分けるのが普通だと思うが……まあ、うん。


「寝ましょうか」


 アイリシアが灯りを消して、二人、ベッドに入る。距離は少し遠い。


「……何だか、落ち着かないです。兄さんと一緒に寝ていた時は、落ち着いていたのに」


 アイリシアがもぞもぞとこっちに近づいて、胸を掴んで、呟いた。けれど、離れようとはしない。


 アイリシアとアスタが一緒に寝ていたのはまだ幼い時分だったろうし……と言いたいところだが今でも大して変わらない気もする。


 少しだけ悔しい。が、


「うん。最初からそうそう上手く行かんでもいいさ。それはそれでまた趣がある」


「……相変わらずですね。幻影の君というのは」


 アイリシアは呆れたように少し笑う。


「そういえば聞きそびれていたんですが、アレムさんにはどうするつもりなんですか?」


「どうするつもりも何も……手を出したりするつもりは今のところないぞ?」


「今のところ……参考までに何故かお聞きしても?」


「……アレムはさ。まだ色々分かっちゃあいないと思うんだ。好きだとか嫌いだとか。それだけじゃどうにもならないようなこととか。それを無理矢理抱き込むっていうのも主義に反する。アレムに芽生えている兆しがあるなら、それを求める姿を見守りたい」


「なるほど」


「そうですか。安心しました」


 それはどういう意味で? と聞くのは色々野暮だろう。


「その……シオンさん。言いたくはないですけど、私は女の子として生きるには色々至りません」


 らしくないことを言うな……と、出かかったが何とか押し留めた。そんなことは本院だって分かっているだろうし、何より俺が言うことじゃない。


「不束者ですが、よろしくお願いします」


 俯いた顔を掴んで、暗闇の中でもわかる蒼い瞳と赤い頬をこちらに向かせた。


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