明日はアスタの風が吹く
セレスさんとも別れ、旅路を続ける。
しばらく何もないのどかな田園風景が続き、柔らかな風が吹いて、んーっと伸びをする。
「ここのはずなんだが」
そうして辿り着いた村。ここがアスタとアイリシアの故郷の筈なんだが……人影が少ないな。
かといって寂れてるというのとは違う。昼寝でもしているようなのどかさだ。
「あれ? シオン?」
当てもなく歩いていると聞き覚えのある声がかかった。しかし、それに答える間もなく
「ゴーレム!」
新たな掛け声とともに飛び込んでくる人影を抱き締める。
その身体はひんやりと冷たく、歩き通しで熱を持った身体には心地よかった。
「……シオンさん、随分と遅かったですね」
そしてその後ろから麦わら帽子を被ったワンピース姿の健康的な美少女が。
「すまないがどちら様でしょうか」
「……いい度胸です。しばらく会わない内に師に対する口のきき方を忘れてしまったようですね」
「ハハハ、いや、冗談だよアイリシア。いつもと違う装いで雰囲気まで柔らかいから、見違えたってだけさ」
「…………そうですか」
アイリシアは麦わら帽子を深くかぶって瞳を隠した。
※※※
「ふーん、村総出で畑仕事ねぇ」
だから人気が無かったのか。
「まあね。せっかくの男手として頑張らないとって」
アスタは腕をまくってぐっと力こぶ……は……うん。アスタはそのままでいてくれ。
「私は……お母さんに言われて、お昼ごはんを作っていました」
何と。
「……何ですかその顔は誰のせいだと思ってるんですか」
「俺のせいなのか?」
「当然です。その……お母さんが、お嫁さん修行だって」
アイリシアが顔を赤らめて呟いた。
そうか。それは俺のせいだな。と甘んじるくらいには爆発力がスゴイ。
「それにしてもシオン、結構遅かったね。もうちょっと早く来るかと思った」
「ハハハ……いや、何だ。ちょっと天空に行って来たりしてな」
「ハハハ。何それ」
冗談ではないんだが。
「まあシオンさんが帰って来たならちょうどいいです。両親との挨拶の前に少々、お手伝い願いたいことがあるのですが」
「手伝い?」
「……詳しくはアレムさんから……正確に言うならブリジットに直接聞いてください」
何だ……?




