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あるいは未来のための話

性懲りもない

「さしあたってあなたの意見も聞きたいのですが、エドヴァルド・W・サイファー。イリューシオン様の今後の成長に必要な要素とは何かについて意見をお持ちではありませんか」


 クロードがおっちゃんと話をしたい。俺も一緒に。というから何かと思えば三者面談だこれ。


 おっちゃんも教員として。あるいは墓荒らしのエドヴァルドとして。数ある冒険者の面倒を見てきた確かな実績があると判断したのだろう。


「魔法に関しちゃあアイちゃん以上の師匠なんていやしないだろうわさ。問題なのは、そうさね。白兵戦、剣術について少しは勉強した方がいいってえもんだわさ」


「やはりそうなりますか……」


 クロードも同じ意見だったのか。


 そうだな。今まではファントムロードのステータス任せで騙し騙しやってきてはいたが……今後・・のことを考えると不安が残る。


「一応、言っておくとおっちゃんは力になれねえわよ。剣術だけで言えばおっちゃんもどっこいどっこいだからね」


 換装武芸師のおっちゃんは広く浅く様々な武器の扱いに精通しているが、逆に言えば一種類の武器を極めるということが無い。運用も独特過ぎてほぼ参考にならない。


「てかあれよ。確かクロードってば円卓の竜騎士とお知り合いなはずでしょう? 剣術に関しちゃその辺り尋ねりゃいいじゃないのさ」


 円卓の竜騎士?


「おや言っていませんでしたか。円卓の竜騎士王ペンドラゴン。彼が私の前世でご迷惑をおかけした旧き支配者の御方です」


 ペンドラゴンとはまた凄い名前が出て来たな……。


「……まさかとは思いますがどこかでお会いしたことが?」


 クロードが怪訝な顔で尋ねてくる。いや、そういうわけでは無いんだが。


「参考までに聞くけどそのペンドラゴンって実は女性だったりしない?」


「は? 何を言っているんですか」


 クロードは呆気にとられたような声色で尋ねた。ですよねー。


円卓の竜騎士王ペンドラゴン。竜族特有の優れた身体能力と、誇り高き魂を併せ持った旧き支配者です。彼の御方自身はまだ話が通じるのですが、彼に傍仕える十二の竜騎士はその忠義故に警戒心が強く、付き合うには骨が折れるでしょうね。それに、付き合いがあると言ってもこの十数年、ごたごたが続いていましたし……そうですね。いい機会です。試しに招待状を出しておきましょう」


「大丈夫かねぇ相手はドラゴンだよ町中に現れたら阿鼻叫喚間違いなしじゃないの」


「いやいや誇り高き竜騎士王さんなんだろう? そんな場くらい弁えるだろう。弁えてもらいたい」


「……さて。円卓の竜騎士は竜族としての誇りプライドが強いからこそ、人の身に扮して人の輪に混じろうとするなど噴飯ものでしょう。招待された身でそのような屈辱に塗れよというのであればそれこそ……まあその辺りは、ね」


 ちらっとこちらを見るクロード。


 そんな期待を込めた目で見られても!


「さて、そいじゃそろそろおっちゃんも行くかね」


 おっちゃんは伸びをして立ち上がる。


「どこ行くんだ?」


「娘が結婚するんだ。おっちゃんだって挨拶ってもんがあるわさ」


「……帰って来るよな?」


 口を突いて出て、しまった、と思った。死亡フラグじみてる。ただ、それでも少し不安になってしまったのだ。


「大丈夫だよ。ちゃんと間に合わせるさ……場所は、王都でいいのよね」


「ええ」


 王女フィオレティシア英雄の娘アルトレイア蒼眼の魔女アイリシアまでいるし、仕立て屋や式場なんてのも一番整ってる。今さら旧き支配者の地位を振りかざそうとも思わんが、幻影の君は健在であるとこの国の真実を知る一握りの権力者たちに示す目的もある。


「おっちゃん」


「ん? 何?」


「いってらっしゃい」


 おっちゃんは一瞬、呆気にとられてやがて破顔した。


※※※


「いやいや、中々に面白い顛末だったよ。幻影の君。君に着いてきてよかった」


 話も終わって一人部屋でまどろんでいると、姿も見せずに声が響いた。


「プレイヤ・デス。もうお前を愉しませるもんもないと思うぞ。これからはただのイチャイチャタイムだ」


「んーそっか。まあいいや、ここらが潮時だろうしね。一応、挨拶に来ただけだよ」


「そっか。寂しく……はならないな」


「アハハハハ。正直だねぇ……ねえ、もしさ。今、君を殺したらちょっと面白いと思わない。」


 冗談のように濃い殺気が満ちる。


「おいおいいいのか?」


 しかし、それを平然と返し、「どういうこと?」と王冠の道化ともあろうものが間抜けに問い返す。


「心配せんでも、そのうち、お前を愉しませられると思うぞ? その機会を潰すってのは、悪手ってもんだろう。待ってな」


「……へぇ。それは楽しみだ」


 少しだけ緊張が走ったかと思えば、そのままその気配は忽然と消えて行った。



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