君が望んだ結末を
全ての旧き支配者を束ねる存在。
とはいっても、そこには隙があった。本来アイテムユーザーであるリリエットにはその力を使いこなせていない。こなれていないと言うべきか、純粋な魔法使いタイプである吹雪く華の力を使っている間、アイテムユーザー本来の武器である空間魔法を使わない。いや、恐らく使えない。そして氷魔法の使い方も力尽く、有体に言えば、雑だ。
一番、噛み合っているのはファントムロードと見たが、しかしさっきから細かくクラスチェンジを繰り返している。それは目まぐるしく変わるその様は、まるで演出のようにも見受けられるが、恐らくそれだけではない。
孤軍奮闘のリリエットではファントムロードの状態を維持できない。不敵に笑い、踊るリリエットとてまた苦しい。同じファントムロードであるからこそ、分かる。
それでも……違和感はどんどん大きくなる。
リリエット、お前はやっぱり……
「余所見はいけない」
パチン、と爆風が肌を掠め、思考は途切れる。
「どっちが!」
衝撃で仮面が落ちた。
ちょうどいい。もう偽りはしない。こっちも曝け出す。
「『当たれ』」
無数のナイフを取り出し、こちらに投げてくる。
その軌道は狙いを外す、いや狙おうとしているとすら思えない、ただ放り投げただけ。失投ではない。わざとだ。
「『当たれ』」
天運の主その加護を受けた攻撃。それらは帳尻を合わせるために、軌道を変え、法則を越えた挙動でこちらを狙う。
「今度こそ、守ってみせる」
しかし、それらは全ておっちゃんに叩き落された。
換装武芸師。リリエットの師。その狙いを見抜き、そして、
「行ってきなさいな」
最後の一本を薙ぎ払い、おっちゃんは微笑んで、背中を押す。
俺はそれに黙ってうなずき、リリエットに接近する。
急いで幻影の君にクラスチェンジするリリエットだが、元々、接近戦は不得手。アイテムを取り出す時間も、その選択肢が豊富すぎるため一手遅れる。
その隙を見逃さず、俺はリリエットの手を掴み、道具を使う手を封じたまま押し倒し、剣を突き刺した。




