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こんなところで手間取っていられない

 今さら俺達が攻略に手間取るはずもなく、攻略は順調に進んでいた。


「シオン止まれ。そこに罠がある」


 アルトレイアの掛け声で俺は踏み出しかけた足を止めた。


 よく見るとその足元の地面にうっすらと出っ張りがあった。


「……過剰に気を張り詰める必要もないがいささか不用心が過ぎるぞ」


 そこまで自分のことを不用心な性格とは思っていなかったが……そうだな。少々気が急いて雑になってた部分はあるかもしれない。


 この辺りはリリエットも含めて何度も通った道である。だから不安はない。が、それ故に油断も生まれやすい。こんなところでの無駄な消費は出来れば押さえておきたいというのが本音だ。


「ま、レイアもあんまり根詰め過ぎちゃダメよ? 先は長いんだしさ」


 リリエットがアイテムボックスから青い果物を取り出して、リリエットに渡した。


「それでも食べながらさ。甘いもの食べてちゃんと頭に栄養渡してってやってかなきゃ倒れちゃうわ」


 集中力というのは持続するモノじゃない。だからここぞという場面で各々の力を発揮できるようパーティを組むのだ。索敵、戦闘、回復、補助その他。今は休んでいる者も他の場面で活躍できるように力を蓄えておかなければならない。それが長期戦におけるパーティの鉄則である。


 そうこうしている内に敵の気配を感じた。


「敵は八体、スレイは前方の敵を押し留めろ。シオンは一歩下がって遊撃だ。私も攻撃に参加するので以降は各々の判断に任せる」


 フォーメーションもある程度は打ち合わせている。


 スレイは前衛で壁となる役割。これは基本的に代わりはない。


 俺もスレイと同様に前衛役を買って出る場合もあるが、今回の様に敵がすばしっこく数もそこそこ多い場合だと翻弄されないようこちらも自由に立ち回る必要がある。そのための遊撃である。


 リオンとフィオレティシア、それにアスタやリリエットの場合は補助になるが、階層が浅く敵が弱いので魔力の無駄になりやすい。なので別途に指示が無い場合は待機、ないしたとえばリオンの場合は弓を使っての応戦となる。


 アイリシアの場合は常に後衛に陣取り魔力を節約しながらぶっ放せばいい。その辺りの判断は専門的な領分が大きくなり、アルトレイアが指示を出すよりも完全に任せた方がいいだろうとのこと。


 さて、そろそろ終わりだな。


「プギィ!」


 指音と共に魔物が断末魔を上げて燃える。


「これで最後か」


 気をゆるみかけたその時、アルトレイアが叫ぶ。


「待て! 感じた気配は八つ……一つ足らない!」


 視線を巡らせた時、そこに在った光景は、リリエットを狙おうとする魔物の影だった。


「リリエット!」


 叫ぶ。恐らくリーダー格であったのだろう。身体が一回り大きく、視ている分にもその身のこなしが素早いのが分かった。


 アイテムユーザー。パーティの要を潰しに来たのか。それほどの狡猾さを蓄えている。

爪が、リリエットの首筋に伸びる。その時である。リリエットが実にいい笑顔で何かをアイテムボックスから取り出しそしてそのまま……大きく振りかぶって、投げたァー!


「ぐ、げ!!」


 しかしそれにより怒りを買ったのかより果敢に向かって来る魔物。リリエットはしかし予定調和というように、気付けば魔物を囲むように、アイテムボックスの口が開いている。


 その虚空から何かが放出し、魔物の身体を何十も打ちのめす。


 カンカンカン!


 そしてその何かは空中でぶつかり合い、ビリヤードの要領で再び魔物の身体を打ちのめし、やがて四肢は吹き飛んだ。


 そしてそのまま魔物の胸を貫通し、リリエットは、武器として用いたそれを拾い上げ、拭う。


「ふ、どんなもんよ」


 リリエットが持っていたのは鉄球だった。丸いのはぶつかり合うのを阻害しないためか。いずれにせよ豪快な使い方をする。それに、俺達が守る必要なんてないほどに強い。


 まあ何だ。乙女ゲーのヒロインであり俺の義姉でありおっちゃんの弟子であるリリエットは……何というかその、凄かった。


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