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終わりは近づいて

 クロードとの話し合いと説明も終えて、寮へと帰ってきた俺達は女子寮に邪魔してリリエットの帰りを待った。


「……卒業試験に挑戦したい?」


 リリエットはジト目で何バカ言ってんだこいつは、とでも言いたげに俺を見る。


 いや、実際いきなり言い出すことでもないしその感情は至極真っ当といえるだろう。


「まだまだ二年くらいはのんびり力蓄えてたっていい時期だってのに。レイア、こいつがバカ言い出したら遠慮なく止めたっていいんだからね?」


「いや、リリエット。これは私が言い出したことなんだ」


 アルトレイアに話を振ったリリエットは開いた口がふさがらない、といった様子で頭を抱える。


「アイリシアも加入した。それに伴ったシオンの成長も目覚ましい。私とて決して引けは取らぬほど修練を積んできたつもりだ。そしてその上で戦力的には申し分ないと私は判断した」


 色々と他には言えないことはある。先の騒乱によるフィオレティシアの覚醒。スレイのクロードの手による秘密特訓などだ。


 それらも鑑みての判断ではあるが、俺達の最終目標は迷宮全体の攻略なのだから卒業試験程度でつまずくようであればこの先が思いやられる。その試金石、というのがこの提案の目的の一つでもある。


「……まあ、レイアがそう言うんならそうなんだろうけどさ」


 リリエットだってアルトレイアの人格と能力は信じている。けれど、それでも納得はしていない。


 それはそうだ。今の時期に何でこんなことを言い出したのか。その肝心要のことを誤魔化しているのだから。それこそがリリエットの欲していることなのだろうからだ。


 この提案の最大の目的、それは俺達が学生の身分から自由に動きまわれるようにするため。いや、これも少し違う。実際のところは、リリエットを俺達から引き離すためだ。この学園を卒業さえすれば、リリエットがここに留まる理由はなくなる。それが、きっといい。


「……はぁ。たく、レイア、こいつのバカさ加減がちょっと移ったんじゃないの? 程ほどにしとかないとダメだからね」


 びしっと俺に対して指差して、諦めたように溜息を吐いた。


「分かったわよ。じゃあ私も明日から色々準備するからさ。買い物、手伝ってよね。特にシオン」


 立ち上がったリリエットの横顔はどこか寂しそうで、俺が、俺達が何かを隠していることには気づいているんだということは察しがついた。


「それじゃ明日から忙しくなるでしょうし、今日はもう休むわ……ついてこないでよ」


 冗談めかして言い放ったその背中に、手を伸ばしかけていることに気付いた。


 しかし、それ以上は何もすることは出来ず、間抜けに伸ばした手を引っ込めた。


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