エピローグ:揺り籠から墓場……は全力で阻止します
初めて会った時のあの方はそれはそれはもう小さくて可愛かったと思います。私の羽根ですっぽりと覆ってしまえるほどに小さくて。
クロード様のご指導はもうそれはそれはキツくて……いやークロード様はしごきに関しては秀逸が過ぎるんですよねぇ……。人が壊れるギリギリのラインをよく見極めているというか無茶が聞く相手に対してはとことん追い詰めて、その内に自分でもその手応えが返ってくるのを愉しんでいる節があるというか。サディストとかそういうわけでは無いんですが。
それで、こう。へとへとでもイリューシオン様の顔を見るとほっこりして頑張ろうとか思えたり。
それからちょっと大きくなって、それでもやっぱり小さくって。それでも必死に立ち上がろうとする姿をお支えできればと思いました。
ただいつからですかねーもう生意気、というか。私の羽根に収まらない感じになってしまいました。私の背丈を追い越してからですかね。あるいは……最初から? いやいやまさかですよねそれは。考えすぎですよええ。赤ん坊のころのイリューシオン様にとって私は年上の初恋のお姉さん的なポジションだったりしたはず。きっと。多分?
本当に人間というのは……いえ。旧き支配者とのハーフですけど。とにかく。成長が早くて困ります。
けれど、背中から見るイリューシオン様というのも、それはそれでドキドキしたり、ですね。悪くないなとかそんな風に考えてしまっているあたり、私はもう囚われているのでしょうね。
「……イリューシオン様がまだ寝てる、ですか」
朝。確か今日は朝一の講義を取っていたはずで、イリューシオン様は珍しく寝坊しているようで、仕方ありませんねってイリューシオン様の部屋に向かいます。
その途中で、ふふっと笑みを浮かべているのは誰にも内緒で。
「イリューシオン様、朝ですよ」
ゆさゆさとその身体を揺すって。その内にんーって不満そうに瞼を擦り始めている間に。私はやれやれと呆れ顔を作ります。
「……あー、おはよ、マリア」
「おはようございます。イリューシオン様」
朝日に照らされたイリューシオン様を、私はじっと眺めて、日常を始めました。
短いですがマリア&クロード編はこの辺りで終わらせていただきます




