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マリア絶不調

 修行も終わってクロードもといクロクロも女子寮の部屋に置いて来て、帰ってきたところで違和感を覚えた。


 マリアがお帰りって迎えてくれない。拗ねているわけではないが、何かあったのかと少し心配になる。


「あ、シオン。お帰り~」


 すこしリビングで座って休んでいたところで、先に帰って来ていたアスタが部屋から下りて来た。


「……マリアに客人?」


「え? そんなにおかしなことかな? 二人とも本当に仲よさそうにしてたんだけど」


 いや。マリアは俺に長い間、俺に寄り添って生きてきた。その間で俺の知らない知り合いが出来たとは考えにくい。


 考えられるとするならば、まさかとは思うが、マリアの故郷の……天使。


「マリア? マリア」


 マリアの部屋を訪れ、ノックする。返事が無いので扉に手を掛けると、そこに鍵はかかっていなかった。


「ぁ……イリュー、シオンさま」


 マリアの元を訪れた友人と言うのは既にその場にはいなかった。マリアは部屋の中央に座って、冷めたお茶を前にしてただ座っていた。


「あ、もうこんな時間なんですね。申し訳ありません。すぐにじゅん……ぁ」


 立ったところでもたついたマリアを寸でのところで受けとめた。


「大丈夫か? マリア」


「だ……大丈夫です! 大丈夫ですから、その……放してください」


「放すかバカ」


 震えてるくせに。力は言ってないくせに。そんなの放っておけるわけがないだろ。そのまま膝に手を回してお姫様抱っこしてやる。


「ちょ! 止めてください。クロード様が大変なんですから! 私まで、イリューシオン様に甘えるわけには」


「うるさい落ちるから止めろクロードに言いつけんぞ」


 ぽかぽかと胸を叩いてくる手を無視してベッドまで運んでやる。


「今日はもう休め。ダイジョブだって。一日くらいなら俺達で何とかするから」


「な……何ですかそれ! 私は……わたしは!」


 しかし、マリアは激昂した。その感情が一体どこから生じたモノなのか分からない。ひょっとしたら俺はとんでもない間違いをしてるのかもしれない。


「あんまこういうこと言いたかないけど、これ命令な」


 マリアは押し黙る。ズルい言い方だと思う。けれど、見て見ぬふりなんて出来なかった。


 それから、おっちゃんとリオンも帰ってきたことで作戦会議を開き、とりあえず今日の夕食をどうするかという話に移った。


「パララパッパパ~ン! 簡 単 中 華 鍋」


 曰く、どんな料理下手でも料理上手でもそこそこな出来に料理が仕上がる神秘の中華鍋らしい。ホントに何でも持ってんなおっちゃんは。


「あー……何つうか男の味がする」


 そして出来上がったのは色々な食材が混じった炒め飯である。チャーハンとかそういう上等なものではなく炒め飯である。


 雑多で味が濃すぎて腹が膨れる前に飽きる感じだった。


「やっぱマリアがいないとダメだね」


 リオンが溜息を吐いた。


「そうだな」


 苦笑する。早くマリアに元気になってほしい。一体何について悩んでいるのか話を聞かせてくれるだろうか。一緒に解決させてくれるだろうか。


 マリアの主として、俺に出来ることは何だろうか。



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