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スレイヴ&サーヴァント

「はぁ…………ずぁ……ぅぁあ…………」


 スレイは何度も何度も叩きのめされ、地面に突っ伏したまま荒く呼吸を繰り返していた。


「さてイリューシオン様、お茶にしましょうか」


「鬼か!」


「悪魔です」


 クロードはクロクロに戻っていて、いそいそとティーカップに紅茶を注いでいる。


 そしてその紅茶を? スレイの口元にゆっくりと入れる。


「しかしクロード。ちょいとスパルタすぎやしませんかね」


「敬語は不要ですが……失礼な。私が誰にでもこのような仕打ちをするとでも思っているのですか」


 何そのツンデレ。


「……まあ彼のやる気を引き出すために多少、想定よりは厳しくはしましたがね」


「やる気?」


 スレイのやる気スイッチどこだよ。


「ねえ? スレイさん」


 今度はクロクロの挑発的な視線がスレイに向く。見下ろしている。見下している。


「……そうだな、舐められっぱなしってのはどうにも落ち着かん。俺はまだいける。だから、てめえも下らねえ手加減なんざしてんな」


「ほう……ほざきますね。ですが、鍛えれば鍛えるだけ返ってくるというのはこちらも心地がいい。ふふ、いいでしょう。こちらとしても興が乗ってきました」


 何ということでしょう。スレイとクロードの間に不思議な友情的な何かが芽生えたかもしれない。


「というわけでクロード。今度は俺の番で頼む」


 俺も負けてはいられない。と、意気込んでみたが


「残念ですがそれは無理ですね」


 ずこーっと転けた。ベタなリアクションしてしまった。


「何で!?」


「お忘れですか? 私は主人に対して攻撃をしないように自らに制約を課しているのです。訓練とはいえ主を害すような行動はとれないようになっているのです」


 試してみましょうか? とクロードは飛び上がって拳を繰り出す。


 反応に遅れた、と俺が認識しながらも……胸元に当たったそれは勢いが失われ、ぽすん、と全く痛くない。


「ぜぇ……ぜぇ……」


 そして当のクロードは息が上がっている。


「じゃあ何でコイツを呼んだんだよ?」


 スレイが質問してくる。


「スレイ、あなたは生まれながらにして誰かに従い、屈することを強いられた身分です。ですが、それでも私はあなたとは違う。その違いは分かりますか?」


「……違い? そりゃ違うだろう。俺はあんたみたいに器用な芸当は出来ん」


「そんなものは生きていればそのうち身に着きますとも。それよりも大事なことは忠義です。誰かに付き従うという自分自身での意思。イリューシオン様に対して、力になりたいと。その志こそが、あなた自身の苦難を打ち破る道標ともなり得る」


 スレイは困惑した表情を浮かべ、それが分かっていたかのようにクロードは苦笑する。


「まあ、こればかりは相性もあることですから、無理にとは言えないのですが。それと、イリューシオン様の度量、というのもありますがね」


 クロードはこちらにウィンクを送る。


「……ま、そうだな。どの道、借りは返さなきゃならねえんだ」


「今はそれでいいでしょう。いずれ、の話は止めておきましょう。私の代わりに、イリューシオン様をお願いいたします」


 クロードは腰を曲げ、頭を下げた。スレイもこれにはさすがに面食らって、気まずそうに頭を掻いた。


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